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黄昏の国の何でも屋 ー古代遺産に刻まれた夢ー  作者: かみやまあおい
第一章

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第24話:捕まった四人

シエルが走り去った後、アッシュは目の前の二人の兵士に剣を向けた。


「こんなところで無駄に戦闘している暇はないんだけどな...」


アッシュはどうにかこの二人を殺さずに状況から抜け出す方法がないか考えた。


しかし、目の前の二人はどう見ても普通とは違っていた。彼らの目は血走り、まるで獲物を前にした獣のように興奮している。

ただアッシュを捕らえようとするだけでなく、あわよくば命を奪おうとしているのが見て取れた。


「くそっ、こうなったら手加減なしでいくしかないか...!」


アッシュは、無闇な殺生はしたくなかったが、目の前の相手はもはや同じ人間とは思えなかった。

一瞬の油断が命取りになると判断し、剣を構えた。


二人の兵士は、奇妙な雄叫びを上げながら同時にアッシュに襲いかかる。

その動きは、狂気に満ちた力と速さを伴っていた。

アッシュは素早く一歩踏み出し、一人の槍を剣で受け止め、もう一人の兵士の攻撃を身をかがめてかわす。


「ハァッ!」


アッシュは、受け止めた槍を押し返し、兵士の体勢を崩すと、そのままもう一人の兵士に向かって素早く剣を振るう。

金属が擦れる鈍い音を立てて、兵士の鎧が切り裂かれた。

しかし、兵士は怯むことなく、傷口から黒い液体をにじませながら、再び狂ったようにアッシュに襲いかかってくる。


「なんだこいつ! 痛みも何も感じないのか!?」


アッシュは、体勢を立て直した兵士の追撃をかわしながら、彼らの動きの不自然さに気づいた。

彼らは単に力が強いだけでなく、痛覚がないようだった。

どれだけ攻撃しても、まるで何も感じていないかのように、ただただ襲いかかってくる。

まるで、何かの魔術によって動かされている人形のようだった。

その恐ろしさに、アッシュは背筋が凍るのを感じていた。


「くそ...このままじゃキリがないぞ!」


兵士の槍をかわしながら手に持つ剣で相手を斬る。

しかし兵士は斬られても倒れず、またアッシュに向かってくる。

その時、二人の兵士の後ろにさらに数人の兵士が姿を現した。

その誰もが同じように血走った目をしてこちらを睨んでいる。


兵士達は一斉にアッシュに襲いかかってきた。

次々と繰り出される槍の攻撃をなんとかかわしながらアッシュは兵士を斬っていく。

しかし、何度切っても兵士は倒れずに再びアッシュに向かってくる。


「どうする…このままだとやられちまう...」


アッシュは必死に頭を使って考えたが、出た答えは一つだった。

その場に剣を投げ捨て手を上げるアッシュ。その動きを見て兵士達の動きが止まる。


「降参だ。これ以上やっても勝ち目はない。」


アッシュの降参の言葉を聞くと、兵士達は獰猛な笑顔を浮かべた。

その顔には、勝利の喜びだけでなく、獲物を捕らえた満足感が浮かんでいた。

兵士達はアッシュが諦めたのを見ると縄でその両手を縛る。

そしてアッシュを後ろから槍で突き歩かせ始めた。


アッシュが兵士達に連れてこられたのは、奇しくもアッシュ達が目指していた泉の前だった。

そこでアッシュは同じように縄で縛られているシエルの姿を見つける。


「シエル、お前も捕まったのか。」

「あら、アッシュ。あなただって人の事を言えないじゃない。」


軽口を叩いてるところを槍でまた突かれ歩くアッシュ。

そしてシエルと二人で並ばされた。


「俺達これからどうなるのかな。」

「さあね、ひょっとしたら何かの実験台にされるのかも。」

「実験台? ひょっとしてお前ここで何がされてたのか分かったのか?」

「ええ。分かったところで捕まったんだけどね。」


二人が話をしていると兵士に「黙れ!」と一括された。

仕方なく口を閉ざす二人。

その二人の前に隊長と思われる男が立った。

そして横にいた兵士に「他の者は?」と尋ねる。

兵士は捕えたのはこの二人だけだと報告する。


「地下水路の方はどうだ?」


その隊長の言葉にアッシュ達は目を広げた。

地下水路に向かったルーシェ達の行動は既に見切られていたと言う事に気づいたのだった。


「まずいぞ...ルーシェ達も捕まったのか...?」

「分からないわ...見つかってなければいいけど...」


やがて二人の嫌な予感は確信へと変わった。

合流してきた兵士達の中に縄で縛られたルーシェとクロエの姿があった。

二人は泉の前まで連行されるとアッシュ達の隣に並ばされる。

隊長は兵士の一人に「アーサー様に報告を」と言って走らせた。そしてルーシェの前に立つ。


「久しぶりだな、ルーシェ。ようやくお前を捕まえる事ができたぞ。」

「テリオ...あなたはやっぱりアーサーの下から離れなかったのね...」


テリオと呼ばれた隊長はルーシェの言葉に鼻で笑う。


「当たり前だろう。これからこの国はアーサー様の物となる。それなのになぜ離れなければならない。私はアーサー様の元で新しい国作りのお手伝いをしたいのだ。」

「そのやり方が間違っているとお前も分かっていただろうに!」


ルーシェの怒りのこもった言葉をテリオは軽く受け流す。


「やり方などどうでもいいのだよ。私はアーサー様の作る新しい国が見たい。あの方の理想とする国を支えたいのだ。」

「お前みたいなのがいるからアーサーは間違った道を進んでしまったのだろうに...!」


ルーシェは今にもテリオに噛みつきそうな勢いで叫ぶ。

その勢いに、テリオは不快そうな表情を浮かべた。


「貴様はいつまで経っても変わらんな。正義だの理想だの、お前がそのくだらない考えに固執している間に、世の中はとっくに変わってしまったのだよ」


テリオの言葉に、ルーシェはぐっと言葉を詰まらせる。

彼女の正論は、もはやこの男には届かない。

彼女の知る、かつてアーサーの副官として理想を語っていたテリオは、もうどこにもいなかった。


そこに、一台の馬車が近づいてくる。

そして一人の磨き上げられた黒鉄の鎧を身につけた男が降りてきた。

この男こそ領主であるアーサーであった。

馬車から降りたアーサーは、アッシュたち四人を見て、満足そうに頷く。


「よくやった、テリオ。」


アーサーの労いの言葉に、テリオは誇らしげに胸を張る。


「はい。ルーシェ・ヒグス以下反乱者4名、捕えました。」


アーサーは一人ずつ顔を見ていき、ルーシェの前で立ち止まる。


「ルーシェ。君にはガッカリだ。君には私の理想を理解し、私を支えてくれると信じていたのだが...」

「あなたの理想は、多くの人々の犠牲の上に成り立つものよ! そんなものが、真の理想だと言えるの?」


ルーシェの叫びに、アーサーは悲しげに目を伏せる。


「君はいつも、そうやって私のことを否定する。だが、私がやっていることは、この国を救うためなのだ。そして、そのために犠牲は必要なのだよ。」


アーサーはそう言って、再び冷たい表情に戻る。


「こいつらは全員牢獄に入れておけ。明日処刑する。」


その言葉にシエルが突然アーサーに声をかける。


「領主様。そこで使われている装置だけど、それは私が昔研究していた物なのよね。」

「ほう?」


その言葉にアーサーの目が光る。

アッシュにはシエルの狙いが分からなかった。

この交渉が一体何に繋がるのか、アッシュは見届ける事にした。


「それは以前に私がとある筋から入手したものなのだが、お前はその装置の事を知っていると言うのか?」

「形や機能は少し変わってるみたいだけど元は私が研究していたものよ。私ならそれが故障しても治せるわ。」

「なるほど。つまりお前は自分は生かしておくメリットがあると言いたいのだな?」


そのアーサーの言葉にシエルは大きく頷く。


「そうよ。私は生かしておいても役に立つと思うわよ。」


表情を変えずに会話を続けるシエルを見てアーサーは大きく笑う。


「気に入ったぞ。私を前にして臆さないその態度もお前の持つ知識もな。お前だけついてこい。」


アーサーが言うと兵士はシエルの縄だけを解いた。


「おい、シエル…!」


アッシュが慌ててシエルに声をかけると、シエルは一瞬だけアッシュに目をやった。


(ここは私に任せて)


シエルの目はそう言っていた。

そしてアーサーとシエルが馬車に乗り込むと、馬車は走り去っていった。

テリオの号令で、アッシュたちは連行されていく。

彼らが向かう先は、闇に包まれた牢獄だった。


アッシュは連行されながらも、時折後ろを振り返る。

しかしそこにあるのは、馬車の轍が残るだけの寂しい泉の光景だけだった。

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