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天使の恋と悪魔の故意  作者: わん8
1天使よ××することなかれ
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9

 肩より少し下の長さの髪をくるくる回しながら、ぼんやりとしていたらぱぱぱーん! 弾ける音がした。

 

「んが! 何!?」

「さくら見ろ、ポップコーンだ」

 

 どこか真面目に黒曜が告げてくる。

 さくらが黒曜の手元を見ると、何の変哲もない箱からポップコーンが飛び出ていた。箱の外に飛び散るそれは、地面に落ちていく。ポップコーンとは食べ物なのでは? これでは食べられないのでは? そもそもその箱から何故ポップコーンが飛び出るのか?

 どうでも良い謎は尽きない。

 

「なにそれ?」

「ポップコーンだ」

「ごめんね、それはわかる」

 言い方が悪かったのだろうか。ポップコーンが何故箱から出るのか聞いたつもりだった。人間が食べているし、甘いポップコーンもあるから知識としてはある。映画館なるもので食べるらしい。だから知識はあるが本当に何故箱から飛び散る?

 

「その箱なに」

「魔法の箱だ」

「まほうのはこ」

 オウム返しに返した。

 ちょっと何を言っているのかわからない。

 

「俺は錬金術が好きなんだ。色々な組み合わせで色々な物ができる。可能性は無限大。良くするのも、悪くするのも己次第」

 じっと黒曜のきらめく瞳がさくらを見つめる。

 ドキリ。

 鼓動が跳ね上がる。なんだろうか、これは。いままではここで何か違和感が起きていた気がするのに、なんだか今は確信しそうになる。この感情が何であるのか。

「これなら、さくらを笑顔にだってできるだろう?」

「私を……?」

「ああ、大事な……妹だからな、笑った顔が見たい」

 妹と呼ばれ、ズキリと胸が痛む。大事だと言われて嬉しいはずなのに。

 

 わずかにノイズが走る。

 ジージー、めまいを感じる。


 妹としてじゃなくて、女の子である自分を見て欲しい。

 ドクン、ドクン。鼓動が嫌に大きく聞こえる。

 冷や汗が流れてきて、ハッと我に返る。何を考えていたのだろうか。

 

 汗を拭い、へへ、と誤魔化すように笑う。

 変な感じがしたのは、気の所為だ。

「黒曜と一緒なら、いつだって笑っていられるわ」

 ビクリと黒曜の体が揺れ、驚愕したようにさくらを見る。ああ、誤解させただろうか。

「もちろん、黒曜の錬金術だって好きよ」

 微笑んで言う。

「それは、人を楽しくさせたり、助けになったりする技術だわ」

 するりと黒曜の胸元に頭をこすりつける。

 黒曜の身体が強張っているように感じるのは、気の所為だろうか。

 まるで、何かに気付いたかのような、気付かないでいてほしかったものが表に出たかのような、そんな表情をしている気がした。


「黒曜?」

 体を大きく震わせ、黒曜はさくらを抱きしめた。

「えっ!?」

「さくら、さくら、俺は、どうすればいい?」

 泣きそうな声だ。

「俺は、ただ、さくらを守りたかった。このままずっと一緒にいたかった。それだけなのに……この予感は消えない……」

 何を言っているのだろうか、黒曜は。

 さあさあと雨が降る。恵みの雨が。この楽園に。

 雨で視界が悪くなり、さくらを抱き込む黒曜の表情は伺えない。


 ああ、黒曜が見えない。それなのに、心が熱くなるのだ。まるでふたりともが――☓を抱いてる。

  

 悪魔の手が触れた場所が熱を持っている――そう錯覚してしまうほどに。

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