⑦最強後衛の異世界ハーレム無双 ‐冥王転移の凡夫な俺じゃあダメですか?‐
「ったく~。」
俺は人懐っこいマルタを引き剝がす。
むくれるアンデルシアたんが今日も可愛い。
「はい、ルーゼンさん。でも良いんです。僕はアンデルシアたんの活躍が見たいから。彼女はきっともっと強くなる娘です。だから僕なんかが足を引っ張れないんです。」
「もうリンタローってば。......私が自信を持って戦えるのは、その、......リンタローがいてくれるからなんだからね?」
「え、いまなんて言ったのアンデルシアたん!?」
「ふふ。恥ずかしがってしまって。」
「もう!スミーナも茶化さないでよ!!」
ダンジョンへの旅はいつも過酷だ。それでも俺たちは5年の歳月を経て、ここまで登り詰めた。次に挑むのはモンスターのリスクもお宝や魔晶石のリターンの、今までより数段高い最難関ダンジョンだ。でもきっと俺達なら行ける。
「わ......わかりました。では一応、こちらの署名欄にサインをお願い致します。当ギルドが責任を取れないというサインです。」
「構いませんよ。いつだって、ダンジョンとはそういうものですから!!」
道なき道を今日も進む。
美しい白色の大理石が広がる神迷塔のダンジョンは、奇しくも俺がこの世界に来たときと同じ原理を持つ転移型ダンジョンだ。各ダンジョンへの入り口からリレーポイントと呼ばれるセーフゾーンへ転移装置を使って飛ぶ。これは裏話だが、この転移装置一つ一つに開拓に貢献したクランの名前が付けられ、それがお酒としてギルドのバーで売られている。そしてまだ使われていない転移装置、俺たちはその装置にフレイムダンスの名を刻む日まで、進み続けるのだ。
「行きましょう。リンタローさま。」
「行こう、リンタロー!!」
「行くニャ、リンタロ~!!」
俺は転移門の前で、
3人の手を取り今日も進む。
そう。
これは何をしても冴えないアイザワ・リンタローと、
強くて逞しい仲間達との物語。
そしてその記録である。
タイトルは...... そうだな、
【最強後衛の異世界ハーレム無双 ‐冥王転移の凡夫な俺じゃあダメですか?‐】
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『ダメだろ。』
その端的な言葉に、
俺は何処か清々しく、
穏やかな気持ちで笑って返す。
「ダメかー。」
そいつは俺の手記を土の地面に落して音読を止めた。
俺は高難易度ダンジョンとは思えない穏やかな沃地で、
青々と生い茂る木の葉の間に広がる青空を仰ぎ見ながら、
先刻捥がれた自分の四肢が、
刻々とラーシャに喰われていく音を
ただ呆然と、成す術も無く聞いていた。