⑤始まった日常?
『ディスプルーフ。』
【質量保存則の反駁】
系統:契約魔法系・固有魔法
等級:X級
詳細:???
女は右手をかざしてそう唱え、
何も無い場所からローブを取り出しては素早く羽織る。
そして被ったフードは紋様が走る様に紫色に光り、
目元は陰りに消えた。
刹那に変る世界の空気。
重力。
目の前の人間が放つ、並々ならぬ圧力。
真正面に相対し、中てられたこの心臓の動機。
「こいつは.....やばい.....」
すかさず今度は、
振りかざす左手の杖の先端が俺に向く。
『デモリッシャー。』
【破滅した鎧騎士】
系統:契約魔法系・固有魔法
等級:X級
詳細:終遺物・???
杖に引っ張られるように、
ニーシャと呼ばれた男がピッピッピと3回音を鳴らした後、
縦に半分で割れた。
それはまるで怪物の口のように、
鋭利な牙とグロテスクな内側を覗かせて。
爆風にでも煽られたかのような勢いと速度で。
俺を嚙み砕こうと飛び掛かる。
――ガファツ!!
「うっ」
右頬に酸が掛かったような痛みと、
身体全体を圧迫する重量で、
俺はその時、意識を失った。
――――――――――――――
{5年後}
それからというもの俺はとある料理屋の店主に保護され、
そこに住み込みで働いていた。
店のモットーは『誰でも歓迎!!』
そこではウェイトレスにうさ耳の獣人ミミとリザードマンのケン、
そして厨房ではドワーフのダンジーと
俺を拾ってくれた店主バルゼンの親方が働いていて、
俺も厨房を任された。
どうやら親方の父親は転生者だったらしい。
料理は苦手な部類だったと思うが、
どうやら俺は筋が良かったらしく、
チャーハンやカレーライスなんかの料理は
よくバルゼンさんに褒められた。
働きながらも俺は、
バルゼンさんのお店の近くにある{王立ウッドレン図書館}に赴き、
この世界のことについて沢山勉強した。
どうやら俺が今いる場所はアイギス領と呼ばれる場所らしい。
少々寒い日が続くのは、
ここが北領と呼ばれる寒冷地帯に
近い場所であるからだそうだ。
どうやら公にはなっていないらしいが、
俺を闇医者から救ってくれたのは、
フェノンズと呼ばれるアイギス最強の自警団らしい。
そしてこれは俺と俺のパーティに入ってくれた仲間達しか知らないことだが。
あの日、あの場所で出会い俺を殺そうとした闇医者は、
アルプ・ネビュラという名の冒険者。
細かく言えば”シーカー?”とよばれる類の
伝説的にヤバい奴だったらしい。
ネビュラが戦争を企ててること、
そして俺があの『冥王ネビュラ』に召喚されたこと。
あの日、ネビュラが転生者を産み出すという禁忌に触れていたことは、
今度あのマッドサイエンティストにあった時の
交渉材料にでもとっておこうかな~。
そうそう。
仲間っていうのは、
俺がこの街で出会い創設したクランの
愉快なメンバーのことだ。