②恐らく死んでない。
「え......?」
ただ忘れっぽい夢を見たような暇
俺の視界に、何かが映る。
「は?」
吸い込まれる。
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『おぎゃあ......おぎゃあ......おぎゃあ......!!』
「産まれましたよ~。」
「先生!!」
「えぇ、きっと賢い子に。貴方の村を代表する...英雄に、なるでしょう。」
『おぎゃあ......おぎゃあ......おぎゃあ......おぎゃあ.....おぎゃあ......おぎゃあ......!!』
―――――――――――
――チッチッ......シュボッ!......
「フゥーッ。」
目まぐるしくまわる視界。
『オッ......オェええェええ・・・!!』
ぶちまけた吐しゃ物の下には、何やらRPGの世界で見る様な魔法陣。
「ん?」
その音に気付き、
白衣を着た眼鏡の女が、
煙草をくゆらせながらこちらを振り向く。
髪型はボサッとしてガサツな後ろ一つ結び。
目の下にはクマを付けていた。
「おや。.......しまった。」
ガラス製の、高さ3メートルはあろうかというポッドに囲まれ、
薄暗い部屋に怪しげなネオンが光る。
俺の目の前にいる女はポケットに手を突っ込み、
冷静に「しまった。」と、そう呟いた。
「スーッ...フーゥ.....」
灰皿にたばこをトントン当て、
怪しげな女は頭を掻く。
「こりゃあ珍しい。私の仮説が正しく”無け”れば、侵入者だ。」
女は机の上に置かれたメスを拾い切っ先を光らせる。
「ちょっちょっと待ってくれ!!俺は侵入者じゃない!!」
「では、どうして顔が血塗れなのだろう。」
俺は頬にべっとりと付いた血を触り、それを服の裾で拭く。
「と、とにかく俺は侵入者じゃない。」
俺は手を突き出して無抵抗をアピールする。
焦ってはいたが、内心では高揚が抑えきれなかった。
まったく知らない世界のはずなのに、
何故か見たことあるような培養ポッド。
中にいるこの世のモノとは思えない、
得体のしれない生物。
その女は指揮者のように杖を振り、
足元に散らばった俺のゲロは、
みるみるうちに蒸発していく。
この状況を俺は知っている。
ネットで今流行っているアレ。
迫りくるトラック.....知らなくて暗い場所.....
これはきっと.....
「俺は、異世界転生者だ......!!」
「それは違うな。」
返す刀で即答される。
「あえ?」
女は2本目の煙草にシュボっと火をつけ煙を吐き出した。
1本目がなにか気に喰わなかったのだろうか。
「転生はさきほど失敗した。それはお前の身体だろう。」
「○○(博士。)」
ガシャと闇の中から鎧兜を纏った大男が現れる。
「○○。✕×✕✕✕✕✕✕✕✕。○○○○○○〇。△△△△△。......✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕。(あぁ。まぁそのままにしておけ。経過報告もいらん。私のミスだ。......破棄しておきたまえ。)」
「✕✕(はい。)」
「それで。スーッ......ハァーッ。ひみふぁ。.....君は、転移魔術式の誤った接続により、何故だかここに辿り付いてしまった訳であるが。異界間転移はそう簡単ではない。私の仮説が正しければ、私達など足元にも及ばぬ高位の誰かが、直接異界との通路を開いた疑いがある。」
――異界との通路.....?