①イカレぽんち
本作は全9話構成です。
宜しければ読了後、
評価ボタンをクリックしてください。
超自然的な力。
俺たちはそれを日頃から耳にするが、
実際に目にしたことのあるやつは、
皆無と言って差し支えないだろう。
幽霊、神様、パワースポット、パワーストーン、妖怪、魔法、サンタクロース。
昔は本当に存在していたけれど、
科学がそれを淘汰したのか。
あるいは天動説が覆されたように、
嘘のメッキが剝がれだしたのか。
しかしながら、
現代においてもそんな超自然を
信じずにはいられない人たちがいる。
例えば、現人神だとか預言者なんて自称する人に縋ったり、
あるいは人形だとか大木や人骨なんていうような物に縋ったり。
{埼玉県・某所}
「りんちゃん......手を合わせた?...はい。それじゃあいってらっしゃい。」
我が家の場合、それは安っぽい”壺”だった。
時に五芒星、六芒星、丸印。二重丸。
訳の分からない呪術的な印がいくつも施された壺。
1つ200万はくだらないその壺をコレクトする為に、
家は狭くなり、食事は貧しくなっていった。
「こんなものが無ければ?あぁこんなものが無ければ。こんなものが無ければこんなものが無ければこんなものが無ければこんなものが無ければこんなものが無ければこんなものが無ければ......」
大容量のキャンプバックに詰めれるだけ壺を詰め。
真夏の夜、家を飛び出した。
「アイツのかーちゃん宗教ハマってんだって......」
「えっ、キッモー。」
「どんなのどんなの......?」
「だってお前、三軍じゃんw」
「おめー、頭悪いし足遅いし。あと臭いし。」
「り、りんたろう君。この前貸した500円なんだけどさ......確かにボクはデブだけど......」
『うるさいッ・・・!!』
――はッ?!
気が付くと町内会の見知ったオジサンが俺の目の前に立っていた。
そういえば、俺が手を合わせていたのは仏壇だった。
「りんたろう君。明美さんは、そういうご家庭を支援するボランティア活動をされている方なんだよ。......君が学校に行けてないのは、その、君の中に原因があるんじゃないかな?」
――なんだこいつは。
「うるさい......」
「りんたろう君?」
「うるさいッ、うるさいうるさいうるさいッうるさいッ!!」
この壺を持った俺にはきっと、
超自然的な力が宿っていた。
何か腕力がすごく上がるような。
俺はそのオッサンの胸ぐらを掴み道路へ押し出した。
「ダ、ダメだよ、りんたろう君」
大の大人を押し出せる力があった。
これなら、俺の真の力を知らない中学の奴らもタコ殴りにできる。
そもそも、この壺は一つ20kgはくだらないはずだ。
俺はオッサンを押し倒し、力いっぱい顔面を殴る。殴る。殴る。
「や、やめなさい!!りんたろう君!!やっ、やめ......」
その時、夜闇に紛れて現れた影が背中を強く押し出した。
バリバリとバックの中の壺が割れ、俺の身体は宙を舞った。
「りんた......」
――バッシュ......!!
目の前で、潰れたトマトが姿を消した。