異変
安部が学校に来なかった。私はどうしたのだろうかと思った。HRが終わったあと、私はスマホを開いた。特に連絡は来ておらず、私はなぜ来なかったのかを聞くメッセージを送信してスマホを閉じた。ついでだと思い、私は彼の家へ向かうことに決めた。
彼の家は学校から近く、
歩いて四、五分のところに住んでいる。私は彼の家のチャイムを鳴らした。彼の母親の声が聞こえる。私であることを伝えると、彼女は少し黙った後玄関に来た。彼がいないのかと聞くと、もういないと言う。彼は死んだのだ。
私はその事実が衝撃だった。受け入れられないと言う次元でなく、嘘どころか彼の存在すら否定したいくらいに身体がそのことを拒絶する感覚に見舞われた。彼は能天気でのほほんとした、愛らしいキャラの人間で誰からも好かれているような人だった。そんな彼は良くも悪くも悩みなんてないような振る舞いをしており、とても自殺するような人だと思わなかった。ならば、事故か?殺人か?そう思ったのも束の間、彼の母親が一言、「自ら命を絶った」と言った。その意味がよくわからなかった。私は親友を失った衝撃で、自然と胸を押さえた。
彼女に家へあげてもらい、彼の部屋へと向かった。彼の部屋はそのままだ。とても死んでいるとは思えない、とても普通の部屋だ。彼の母親にリビングへと通された。そこには彼の壊れた眼鏡が置いてあった。それには何とも言えない汚れが付着し、とてもかけていたとは思えないものだ。そして、一言「ごめんなさい」と書かれた走り書きのメモが置いてあった。間違いなく、安部の筆跡だ。
じわじわと彼の死の実感が襲ってくる。そうだ、彼は死んだのだ。何者かによって追い詰められ、死んだのだ。
その時、インターホンが鳴った。警察だ。なぜだろう、何もしていなくても警察という響きでいつも少しドキドキしてしまう。警察官が2人、リビングにやってきた。2人は安部の母親と話している。私の方を向いて警察官同士で何か話している。私の方へ向き直り、私に話しかけてきた。
「あなたはどちらの方ですか?安部直哉さんのご友人ですか?」
「はい、そうです。安部の親友です。」
私は妙に落ち着いて答えた。
「俺は安部の親友で、小学校の頃からの付き合いです。彼が学校を休んでいたので、心配して家に来たらこうなってました。」
さっきの落ち着きとは裏腹に、話出したとたん、嗚咽が止まらない。
「そうでしたか。」
警察は静かに答えた。私は涙を抑えることができず、警察官に背中を撫でられながら近くにあった椅子に腰を下ろした。
そこで私のその日の記憶は終わっている。