日常
ー私は今から死ぬ。そう覚悟を決めて屋上の扉の鍵を握り立ち上がった。ー
世界は計算尽くしで物理で全て証明できると思っていた。ボールを投げる力や向きによって届く距離や速さが決まるように、人間の感情も分かるものだと思っていた。
ある日、私は目を覚ました。その日は何ということもなく、平凡で変わり映えのない当たり前の日常だ。眠い目を擦りながら涎の垂れた枕を眺め、1日の始まりを感じる。枕のシーツを剥ぎ取り、一階へと降りる。洗面台で顔を洗い、食卓へ向かう。仕事へ向かった母親の用意した朝食を1人で食べ、シンクに食器を置く。仕事から帰ってきた母親に洗い物をさせるのは申し訳ないと思いつつ、私の面倒臭さを優先した。着替えて、荷物を取り、学校へ向かう。当たり前の日常だ。
私はこの年にしては珍しく、あまりスマートフォンを見ない。この日も見ることなく学校に着いた。校門をくぐり昇降口を抜け、教室の席についた。そこで私はスマホを確認した。連絡が三件。友人の安部からだ。彼とは小学生からの付き合いで、高校まで一緒だ。そんなこともあり私の一番の親友である。そんな彼から三件。「今空いてる?」「ごめんな」「さよなら」。少し疑問を覚えつつ、特に何も考えずにメッセージアプリを閉じる。時間を確認し始業までまだ時間があることを理解した。彼はまだ来ていない。
そして彼はその日、学校に現れなかった。