29話〔少しずつ縮まる距離〕
=森の中=
友希斗「……」
聖羽「……」
しばらく沈黙が流れた。
友希斗「あ……」
聖羽「あ……」
友希斗「ど、どうぞお先に」
聖羽「いや、そっちが先に」
友希斗「…………ぷっ……」
聖羽「…………ふっ……」
友希斗「あはは」
聖羽「ふふふ」
二人の笑い声が響いた。
聖羽「可笑しいな」
友希斗「はい」
聖羽「何故か懐かしい気持ちになるのは何でだろうな」
友希斗「俺もです」
聖羽「君と居ると不思議な気分だな」
友希斗「……」
聖羽「どうしたんだ?」
友希斗「い、いえ……」
聖羽「何か変な事を言ってしまったか?」
友希斗「そんな事ないですよ」
聖羽「そうか?」
友希斗「はい」
聖羽「そういえば、初めに会った時に私達が会うのは初めてじゃないと言っていたな」
友希斗「それは……」
聖羽「こう見えて一度見たものや人は忘れたりしないんだが」
友希斗「……」
聖羽「すまない」
友希斗「何で謝るんですか……」
聖羽「そんな顔をさせてしまって……」
友希斗「……」
聖羽「……」
再び二人の間に沈黙が流れた。
____「もう一回聖羽と仲良くなるっすよ」____
友希斗「……」
____「きっと何か事情があるんっすよ」____
友希斗「……」
____「一緒に居たらもしかしたら思い出すかもっすよ」____
友希斗「うしっ」
パチンと自分の頬を叩いた。
聖羽「!?」
友希斗「俺の名前は友希斗です」
聖羽「ああ知ってるぞ」
友希斗「好きな食べ物はシチューです」
聖羽「ああ」
友希斗「好きなタイプは大人のお姉さんです」
聖羽「そうなのか」
友希斗「夢は大切な人の隣に立つ事です」
聖羽「大切な人?」
友希斗「はい、俺が冒険者になりたかった理由をくれた人です」
聖羽「そうなんだな、それはさぞ素晴らしい人なんだろうな」
友希斗「はい、優しくて綺麗でとっても素敵で素晴らしい人です!」
聖羽「そこまで言われると何だか複雑な気持ちになってしまうな」
友希斗「?」
聖羽「そこまで想われているとその人は幸せ者だな」
友希斗「そう思ってもらえてると良いんですが……」
聖羽「きっと想ってると思うぞ」
友希斗「聖羽さんに言われるとそんな気がしてきました」
聖羽「そうか良かったな」
そう言って友希斗の頭を優しく撫でた。
聖羽「!? すまない……何でかやってしまうんだ」
友希斗「俺は嬉しいです……だからもっと撫でて欲しいです……なんて……」
友希斗は少し恥ずかしそうに茶化しながら言った。
聖羽「……そうか」
そう言って優しく頭を撫でた。
友希斗「聖羽さん……」
聖羽「何だ?」
友希斗「呼んだだけです」
聖羽「そうか」
友希斗「そろそろ戻りましょうか」
聖羽「そうだな」
=仮宿泊所=
冴珀「何だ一緒だったのか」
友希斗「はい」
冴珀「ずいぶんと嬉しそうな顔だな」
友希斗「そんな顔してます?」
冴珀「ああ、してるぞ」
友希斗「別にしてないですよ」
冴珀「ほう」
友希斗「な、何ですか」
冴珀「いや」
冴珀は少しニヤリとして言った。
友希斗「うっ……」
聖羽「あまり虐めては駄目だぞ」
友希斗「聖羽さん聞いてくださいよ冴珀さんが虐めるんですよぉ~」
冴珀「ふ、ずいぶんと距離が縮まったんだな」
聖羽「そうだな」
冴珀「……」
聖羽「何だ?」
冴珀「いや、お前のその顔久しぶりだな」
聖羽「……」
友希斗「冴珀さん? 聖羽さん?」
沙耶香「それは友希斗くんのおかげですわね」
聖羽「……そう……かもな」
天彦「聖羽っ!!」
友希斗「!?」
突然の大声に友希斗の肩がビクッと跳ね上がった。
沙耶香「そんなに声を荒らげてどうかしたんですの?」
天彦「どこに行ってたんだ!」
聖羽「薪を拾いに行ってましたよ?」
天彦「そいつとか!!」
聖羽「そうですけど何か問題でもありますか?」
天彦「問題大ありだな」
聖羽「?」
天彦「お前とそいつの身分は違うんだぞ」
聖羽「そんな違いがあるとは……」
天彦「そもそもそいつが勘違いをしてしまったらどうするんだ?」
聖羽「勘違い?」
沙耶香「まさか身分が違う相手を好きになるのは駄目だとか言うわけじゃないですわよね?」
天彦「当たり前だ! 少しでも可能性があると期待をさせたら可哀想じゃないか」
友希斗「……」
沙耶香「聖羽がそう思ってなかったらどうするんですの?」
天彦「聖羽は賢いからな」
冴珀「ふっ……」
天彦「何だ!?」
冴珀「いや」
天彦「言いたい事があるなら言ってみたらどうなんだ」
冴珀「だったら何をそんなに焦ってるんだ?」
天彦「何だと」
天彦は冴珀に食ってかかった。
聖羽「あま……」
八雲「天彦様そこまでですよ」
天彦「ちっ」
冴珀「そいつの言う事は聞くんだな」
天彦「行くぞ聖羽」
天彦は聖羽の手を取り去って行った。
八雲「すみません、気を悪くさせましたね……」
友希斗「えっいえいえ全然大丈夫です」
冴珀「しっかり手網を握ってたらどうだ?」
友希斗「冴珀さん」
冴珀「ちっ、悪かったな」
八雲「いいえ、非があるのはこちら側ですから」
友希斗「八雲さんは悪くないです」
八雲「そう言っていただけると助かります」
友希斗「だから、そんな顔しないでください」
八雲「お優しいんですね」
友希斗「そんな事無いですよ」
八雲「では私も戻りますね」
友希斗「はい」
そう言って八雲はその場から離れた。
冴珀「ずいぶんと奴に気を許してるな」
友希斗「えっそうですか?」
冴珀「無自覚でやってるのか」
友希斗「?」
冴珀「まあいい戻るぞ」
友希斗「はーい」
=仮設テント=
冴玖「おかえり」
友希斗「おお良い匂い~」
冴「さくとつくった」
友希斗「へぇー凄いね」
冴玖「美味しいかは分からない」
友希斗「すっごく美味しそうだよ」
冴玖「そう」
冴玖は少し嬉しそうにしながら言った。
友希斗「いただきます…………んっ!!」
冴玖「ど、どう?」
友希斗「うまいっ!!」
冴玖「良かった」
冴珀「ふっ」
冴「おいしい」
みんなで楽しくご飯を食べた。
友希斗「そういえばもうそろそろ着きます?」
冴珀「ああ」
友希斗「そうなんですね」
冴珀「楽しみか?」
友希斗「はい」
冴珀「そうか」




