27話〔出発〕
=街の外=
冴珀「遅かったな」
友希斗「ごめんなさい」
冴「ゆきとおそい」
友希斗「ごめんごめん」
冴珀「何だ見送りか?」
千夜「そうっすよ」
夏乃「気をつけてね」
友希斗「はい」
千夜「気をつけるんっすよ」
友希斗「うん」
千夜「本当に素直じゃないんっすから」
友希斗「何が?」
千夜「何でもないっすよ」
千夜がチラッと見た先の柱の陰にある人物が立っていた。
千夜「出てこないつもりっすかね」
友希斗「ん?」
千夜「……」
千夜はこっそり柱の方を指さした。
友希斗「? あっ!?」
友希斗はその人物の方にかけていった。
友希斗「睦月さん」
睦月「お、おう」
友希斗「睦月さんも来てくれたんですね」
睦月「ま、まあな」
友希斗「えへへ」
睦月「何だよそんなに嬉しいのか」
友希斗「はい」
睦月「たくお前は……」
友希斗「ん?」
睦月「いや、気をつけて行ってこいよ」
友希斗「はい睦月さんも無茶したりしないでくださいね」
睦月「分かってる」
友希斗「陽和さんにあまり心配かけちゃ駄目ですからね」
睦月「お前は少し自分の心配をしろ」
友希斗「俺は大丈夫ですよ」
睦月「たくよその自信はどっからきてんだよ」
友希斗「俺にはみんなが居ますから」
睦月「それもそうだな」
友希斗「はい」
千夜「友希斗~早くするっすよ」
友希斗「うん」
友希斗は元気よく走って睦月の元を離れた。
友希斗「じゃあみんな、いってきます」
千夜「いってらっしゃいっす」
夏乃「いってらっしゃい」
友希斗は馬車に乗り込む前に睦月に手を振りそれから乗り込んだ。
睦月「ふっ」
睦月は少し微笑んでその場を立ち去った。
御者「はっはっ」
【パシッパシッ】【ヒヒーン】
【ガラガラ】
千夜「行っちゃったっすね」
夏乃「寂しいの?」
千夜「別にっす」
夏乃「本当、素直じゃないね」
千夜「うるさいっすよ! さあ、仕事っす仕事っす」
千夜はそう言って足早に戻って行った。
夏乃「はいはい」
=馬車の中=
友希斗「……」
友希斗は目を輝かせながら外を見ていた。
冴珀「馬車ごときでそうなれるなんて羨ましいな」
友希斗「えへへ」
冴珀「褒めてないぞ」
友希斗「えっ……」
冴珀「たくお前は顔がうるさいな」
友希斗「……」
冴珀「笑ってるかと思ったら今度はしょげてるのか」
友希斗「別にしょげてないですよ」
冴珀「何だ今度は怒ってるのか」
友希斗「うっ……」
冴珀「本当に騒がしい奴だな」
冴「ゆきとよしよし」
友希斗「ありがとう冴」
冴玖「よしよし……」
冴玖も友希斗の頭を撫でた。
友希斗「冴玖もありがとう」
冴珀「お前らがそうやって甘やかすから」
冴「!!」
【ヒヒーンッ】
友希斗「おわっと!?」
馬車が急に止まった。
友希斗「びっくりした……ん? 柔らかい?」
冴珀「いつまでそこに居るんだ?」
友希斗「わわわっ!! ごめんなさいっ!!!」
友希斗の顔は冴珀の豊満なクッショに守られた。
冴玖「すけべ」
冴「ゆきとすけべ」
友希斗「何でそうなるんだよ」
冴玖「鼻の下伸びてるから」
友希斗「伸びてないよ!?」
冴「そと」
冴玖「分かってる」
友希斗「ん?」
冴珀「まったく」
そう言って外に出た。
友希斗「えっ冴珀さんどうしちゃったの?」
冴玖「友希斗はここに居て」
友希斗「えっうん」
冴玖「冴、友希斗の事お願い」
冴「わかった」
そう言って冴玖も馬車を出た。
=馬車の外=
盗賊一「金目の物を置いていきやがれ」
盗賊ニ「ひひっ女も置いてけ」
盗賊三「おっいい女」
盗賊四「そっちの無口そうな子は俺のな」
冴玖「……」
盗賊三「うっひょー上玉」
冴珀「はぁー」
盗賊ニ「こっちも上玉じゃねーか」
天彦「貴様ら誰の馬車を襲ったと思ってるんだ」
盗賊一「誰だお前」
天彦「なっ」
盗賊一「男にはようがねぇーんだよ」
冴珀「何で出てきたんだ」
聖羽「天彦様」
盗賊三「おお、また上玉が出てきたぞ」
天彦「貴様らっ!! 僕を無視するとはいい度胸だなっ!!」
「ぷっ」「あはははは」
一同笑い始めた。
盗賊一「お前はどこぞのお坊ちゃまか」
天彦「何だと」
盗賊一「ボクちゃんは引っ込んでな」
聖羽「おやめ下さい」
天彦が剣を抜こうとしたが聖羽がそれを止めた。
天彦「ちっ僕は中で待ってるから早く片付けろ」
盗賊一「ぷっ結局女まかせかよ」
天彦「何だと……」
馬車に入ろうとしたが止まる。
盗賊一「あれあれ怒っちゃったのかな?」
「ぷっ」「あはははは」
天彦「っ……」
天彦はプルプルと肩を震わせていた。
聖羽「挑発にのっては駄目ですよ」
天彦「八雲やれ」
盗賊一「ぷっまたおん……」
そう言ってる間に首と体が離れた。
聖羽「なっ!?」
天彦「貴様が僕を馬鹿にするからだぞ」
聖羽「何故殺したんだ」
八雲「主の命令だからですよ」
聖羽「だからって」
八雲「相変わらず甘い事をそれでは何も守れませんよ」
聖羽「それは……」
盗賊ニ「かかれー」
「おおぉぉ!」
冴珀「確かに甘いかもしれんな」
聖羽「冴珀まで……」
冴珀「しかし、だっ! それがこいつらしいからなっ!」
冴珀は盗賊を殴りながら言った。
冴玖「僕もそう思う」
冴玖も次々と盗賊を無力化していった。
八雲「貴女方も大概ですね」
冴珀「ふっ」
八雲「そんなやり方ではいずれ足元をすくわれますよ」
冴珀「そうかもな」
数分後・・・・
冴珀「こんなとこだな」
聖羽「ああ、これで全員だな」
冴珀「で、こいつらどうするんだ?」
聖羽「そうだなここに置いていく訳にもいかないしな」
友希斗「八雲さんこれどうぞ」
八雲「私にですか?」
友希斗「はい血で汚れちゃってますから」
八雲「あれを見ても私が怖くないんですか?」
友希斗「?」
八雲「そうですかあなたは変わってますね」
友希斗「そうですか?」
八雲「なるほどこれが人たらしの技なのですね」
友希斗「えっ……八雲さんまで」
八雲「冗談ですよ」
八雲は微笑んだ。
友希斗「…………千聖さん……」
八雲「ん? それは誰ですか?」
友希斗「あっ、ごめんなさい」
八雲「さては初恋の人の名前ですね」
友希斗「ち、違いますよ……ははは……そ、それより俺たちが乗っている馬車でこの人達を街に連れて行けば良いんじゃないんですか」
八雲「誤魔化しましたね」
聖羽「そうだな私達の馬車に乗ればいいだろう」
八雲「そうですね」
友希斗「けど、誰かがついて行かないと駄目じゃないですか?」
聖羽「心配しなくても大丈夫だぞ」
友希斗「そうなんですか?」
聖羽「この御者は強いからな」
友希斗「そりゃそうですよね」
聖羽「ああ、だから平気だぞ」
友希斗「良かった……」
聖羽「何でだ?」
友希斗「いや……別に……」
聖羽「ん?」
冴珀「どうせ聖羽が付き添いで行ってしまうって思ったんだろ」
友希斗「ち、違いますよ」
聖羽「そうなのか?」
友希斗「……」
友希斗は少し恥ずかしそうに俯いた。
聖羽「困ったな」
友希斗「?」
聖羽「嬉しいと思ってしまうな」
友希斗「聖羽さん」




