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喫茶 ほのか

林佳南と話した後、教室に一旦戻り、体調が悪いと早退した。



「今日は、早いな。文哉」

「体調悪かったから、早退した」

「だったら、今日はバイトしなくていいぞ。帰って、寝た方がいいんじゃないか?」

「オーナー。俺は、金が必要だから働くよ」

「そうか、わかった。だったら、先に買い物行ってきてくれるか?」

「わかった。着替えてくる」



ブレザーを脱ぐ。

ポケットに入れた殺害リストを書いた手帳を見つめて、ズボンのポケットにしまう。

ネクタイを外して、エプロンをつけて戻る。



「便利だよな!カッターシャツだから」

「まあな」

「牛乳と豆乳がないんだわ。お願い出来るか?」

「わかった。行ってくる」



檸檬高校は、高校一年生の夏休みからバイトが出来る。

それを調べて転入してきた。

殺害する為には、金がいる。

とにかく、金を貯めて道具を揃えるしかない。

全員を殺すまで、捕まるわけにはいかないから……。


近くのスーパーで、牛乳と豆乳を購入してから店に戻る。


「買ってきたよ。オーナー」

「堅苦しいから、佐伯さんでいいって!ありがとな、文哉」


俺は、頷いてから冷蔵庫に牛乳と豆乳をしまう。



「なあ、文哉」

「何?」

「殺害リストって何だこれ?」



オーナーである佐伯哲夫さえきてつおは、俺がポケットにしまったはずの殺害リストの書いた手帳を持っていた。



「な、何で持ってんだよ」

「何でって、そこに落ちてたから」

「マジか……」



買い物に行く準備をしている時に、どうやらポケットから落ちてしまったようだった。



「殺害リストは、全部で35人分作る予定だ。25人の女子生徒と10人の男子生徒。25人は、遠藤櫻子を追い詰めた女子達……。って、35人も殺したら文哉は死刑確定だぞ」

「だから、何だよ。死ぬのなんか怖くない。引き留めたって、俺はやるからな」



佐伯さんは、俺の言葉に右側の広角だけを上げてニヤリと笑う。




「引き留めたりなんかしねーーよ。ただ、遠藤櫻子は文哉が35人を殺して喜ぶのか?」

「櫻子が最後に思ってた事なんか知るわけないだろ。会った時には、死んでたんだから」

「だったら、聞きに行けばいい」

「はあ?どうやって。出来るわけないだろ」

「俺には、出来る」



佐伯さんは、俺の手を掴む。



「遠藤櫻子の写真は、あるか?」

「あるよ。スマホに……」

「すぐに出せ!俺が、話を聞いてやる」



スマホを取り出して、櫻子の写真を見せる。



「異世界って信じるか?」

「はあ?」

「檸檬高校には、異世界に通じる扉があるんだ。そこから、異世界に行くと……。飛んでもない能力を身につけて帰ってこれる」

「飛んでもない能力?」

「ああ、そうだ。俺は、一つもらってきた。それは、死者と話せる能力だ。文哉、お前にも見せてやる」



佐伯さんは、スマホの櫻子の写真を触り……。

俺の手を強く握りしめる。



「な、何だこれ……」



目の前に映画のスクリーンのようなものが映し出される。



「遠藤櫻子さんか?」

『はい。遠藤櫻子です』

「あんたは、今、どこにいる?」

『檸檬高校の屋上から飛び降りた時に肉体は死に魂だけがこちらに来ました』

「こちらってどちらだよ」

ぶんちゃん。元気だった?私は、信じてもらえないだろうけど。異世界にいる』

「異世界?霊界の間違いだろ?」

『霊界ではない。ここは、異世界。もう一つの檸檬高校』

「その世界で、あんたは誰になってる?」

『私は、もう遠藤櫻子ではない。檸檬高校教師、真壁里美まかべさとみ

「教師?教師ってどういう事だよ」




櫻子は、自分のいる場所の檸檬高校を見せてくれる。

一面を檸檬の木が生えているグラウンド。

いじめや嫌がらせなどはなく幸せだと言う。

もしも、いじめや嫌がらせをしたら氷漬けにされたり、火炙りにされたり、張り付けにされたりするという。



「櫻子。もう、こっちに戻りたくないのか?」

『肉体がないそっちには戻れない。戻るとすれば、誰かの名を借りなければならないし……。今の年齢では戻りたくない』

「それは、またいじめられるからか?」



櫻子は、ゆっくりと頷く。

俺は、櫻子を守れなかった。

だから、櫻子はこっちに戻りたくないんだ。

涙が溢れてくる。

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