プロローグ
【注】この話は、作者があったいじめの事実を元にアレンジしたフィクションになります。 読んでいて苦しくなる方は、読まないようにしていただけたらと思います。
その言葉は、心臓を貫き息の根を止めるまで深く刺さり続ける。
高校一年の夏。
幼馴染みで大好きな遠藤櫻子が死んだ。
死因は、自殺。
檸檬高校の屋上から飛び降りた。
俺は、櫻子の死の真相を確かめるために一年の冬に檸檬高校に転入してきた。
櫻子が、俺に最後に行った言葉の本当の意味が知りたかったから……。
「ねぇ、文ちゃん。私をいじめた人がどうなるか知ってる?大人になってね。私は、苦しんで悩んで前に進めていないのに……。彼女達は、普通に結婚して子供を産んで幸せそうに笑ってるの。あの時の謝罪なんてないんだよ」
「そんなわけないだろ?少しは、反省しているだろ?」
「未来を見てきたからわかるの」
未来を見てきた?
櫻子の話しがよく理解出来なかった。
「まあ、実際私も小学生の頃に人にたいしていじめしてた側だから。その報いを受けたって考えたらいいのかもね。あの頃、親が毎日喧嘩しててやり場のない怒りや悲しみが幸せそうなあの子に向いたんだよね。今は、申し訳ない気持ちでいっぱいだよ。たくさん反省したし、たくさんごめんって思った。本人には伝えられなかったけどね。だから、未来を見てきたの。もしかしたら、私をいじめた彼女達もそうなのかもって思ったから……。でも、違った。彼女達は、反省なんかしてなかった。むしろ私の事なんか気にせずに生きていた。それが、何か無性に悲しくなったんだ」
櫻子の話す言葉は、俺の胸を締め付ける。
「俺がずっと一緒にいるから」その言葉を言う事は出来なかった。
櫻子を守ってやれた。
檸檬高校に俺も入学しておけばよかったと後悔していた。
櫻子の葬儀の日、参列者の中に檸檬高校の生徒が数人混じっているのが見える。
俯いてはいるけれど、涙を浮かべてはいない。
殺してやる!
俺が、櫻子を殺した全員を殺してやる。
そう決意した俺は、檸檬高校に転入した。
櫻子についての話を聞く中で、【中目優樹菜】に話を聞く事が出来た。
昼休み。
俺は、中目の所属するブラスバンド部に会いに行く事にした。
「初めまして、旭川文哉です」
「どうも。夕方の練習の用意しながらでもいい?話すの」
「もちろん大丈夫です」
「それじゃあ、何でも聞いて」
中目は、楽器を開いては中身を確認して閉じている。
「遠藤櫻子について知りたい事があるんだけど……」
「遠藤さん?何?」
「遠藤がいじめられてたって話を聞いたんだけど」
「ああ。知ってるよ」
中目は、楽器を開く手を止めて俺を見つめる。
「優樹菜が遠藤さんに忠告したの」
「忠告?」
誇らしげなその顔は、歪んだ正義感の塊そのものだった。