04.フレア-咲き誇れ-
百合及びレズが苦手であれば飛ばしてください。
在野にも行使者がいるという話です。
1.孤高
組織に属さない行使者は当然いる。
しかし組織の情報網を潜り抜けるほど上位の者はまずいない。
位の高さが故にすり抜けることができるとも言えるが。
大抵は見つかり、軽い監視下に置かれる。
「千本木 翠」は植物をこよなく愛する少女。
ヒトに興味ない。世俗に興味ない。必要がない。
ミッションスクールに通っており、女子校である。
ここは教師や出入りの業者等も女性のみと徹底されている、お嬢様学校。
父親以外の精通済みの男性を汚物のように嫌悪する。
同性のことはというと、友だちを必要としていないので、ひとりである。
自立した個の頂、少女はそこにいる。
そんな彼女を偶像のごとく崇める者たちがいる一方で。
嫌う者たちも同じくらいいる。
前者は翠のことを魔女様と呼称する。
蔑称は魔女。
抱く念は、一字で大違い。
そんな自分に関することにも興味がない彼女。
趣味はどこかの森林で寝泊まりすること、それと読書。
毎日、下校しては近くの森へ。
休みの日も少し遠くの森へ。
長期休暇は海外の森へ。
植物に囲まれているだけで幸せ。
その中で読書をするのがもっと幸せ。
それについて家族はどう思っているのか?
両親は諦め、好きにさせている。可愛い一人娘が早くも自立したのは寂しくもある。
自費でアパートを借りており、一人暮らしを取り繕うための最低限のものしかない。実質、物置。
彼女は植物学者である母の影響で植物にのめり込んだ。
両親の目を盗んで森林に入り、新種の植物を見つけては、分布を割り出し、その生態について淡々と一方的にネットで発信していた結果、その筋の人(母)に発見されてしまう。
母は足の怪我の後遺症により、フィールドワークが難しくなっていた。
そこで、娘が代わりに行うという関係ができあがる。
今では広告収入や本の出版による印税などが手伝って、お金を得ることができている。
翠には効率良くマネタイズを行うことはできないし、植物の本をおしゃれに、可愛く、大衆に手に取ってもらうように着飾らせることも、学会で上手く発表することもできない。
よって、WIN-WINなのだ。
行使者の能力の強さは執着の度合いによる。
そして好きなことのために、好きなもののためなら、扱う力を惜しまない。
それが千本木 翠という……森の女王である。
2.孤独
学年の途中から入り、通うことになった学校。
根っから明るいはずの彼女。その表情には陰りが見える。
転入数日で、ぼっちになってしまった……
「虹橋 藍」は海外の学校から、お嬢様校に転入してきた。
環境の変化はヒトに多大な影響を与える。
転入初日、初めての顔見せのとき。
緊張しすぎてクラスの皆の前でもどしてしまった。
それが鮮烈な自己紹介となってしまう。
貞淑な女子の園……言葉遣いからまず違う。ニホンゴムズカシイ。
優しく話しかけてくれる子もいるのだが、なかなか打ち解けることができない。
この学年は諦めて来年度頑張ろう。そのために皆を観察していた。
そう切り替えられるところは、ポジティブなのかもしれない。
アニメ、マンガ、ラノベで観た世界は、本当にあるんだ。
お嬢様の研究過程で、感激したものは。
女性同士の恋愛……「百合」である。
一方で知らないほうが良かった世界も現実となった。
ノーマルでありながら、異性を意識しない環境にある。ということは、身なりやにおい、整理整頓などに気を遣わない者もいる。ということだ。
結局、どう馴染むべきなのかわからない……悩んでいた。
ある日、通りがかりのセンパイたちに挨拶とともに黄色い声を浴びせる少女たちを見た。
この学校では、先輩を見かけたらお辞儀するという通例がある。
近ごろ、行き過ぎた上下関係が問題となり、学校としては推奨していないが、教師やOGたち個人からは、その挨拶は暗黙の規則として強いられている現状にある。
その複雑さを同級生に説明されたとき。
「なんじゃそりゃ!」
そう藍は口に出して突っ込んでしまった。
それも友達がいない理由の一つかもしれない……
それはさておき、千本木 翠というものを知った。
熱狂的に挨拶をする信者に、頑なに挨拶をしないアンチ。
そして当人は全く何も感じていないということが、藍にはわかる。
極端な三つを見れば、気にせずにはいられない。
そして藍は、そんな自立した彼女を見て。
「なんか、好きかも……」
知らなかったもの。わからないものに、胸を熱く強く打たれた。
それから藍は、誰も近づこうとはしない魔女様に付きまとった。
登校の時間帯を把握して、挨拶。
昼食を、ガーデン……植物に囲まれた学食のための庭園……で行っていれば、相席して、一方的に話しかける。
下校どきになれば、一緒に帰りたい旨をとうとう告白する。結果、ばっさりと断られたのだが、めげず。
後ろについて帰るだけならいいか尋ねると、渋々だが、了承を得ることができた。
彼女の信者からもアンチからも忌み嫌われながら、ただひたすらに翠を慕う。
実際にいじめに遭ったのだが、大したことはなかった。
陰湿な言葉が耳朶を打つくらいで。
いじめの作法を知らない乙女たちの園で良かった。そう思うだけだ。
なぜ魔女と呼ばれるのかにはいくつかの理由があるのだが、ひとつはことごとく人付き合いを拒絶してきたことにあった。
挫けることなく、熱心に魔女のもとへ通い続ける藍に。
やがて……周囲は心を打たれて、応援し始める。
翠もまた、抗うことを諦めた。
この藍という娘がいると、押しつけているはずの緊張が、緩められる感じがする。
ただ傍にいるくらいなら許し。
でも言葉は返さない。
自分の聖域には踏み込ませない。
初めはそう徹底していたのだが。
少しずつ。
ある日、質問してしまう。
「あなたは、拒絶され続けても嫌にならないの?」
「私は、少なくとも好意を持った相手が嫌がることは繰り返さない。しようと思わない」
口を聞いてくれたことに、藍は嬉しくて、翠が呆れ果てるまで好意のほどを語った。
それは傍から見れば愛の告白に他ならないのだが、本人は全くの無意識で、気づかない。
「友だちというものから始めましょう」
翠は根負けして、初めてのことに少し頬を赤く染めながら……そう応えた。
03.個と個
翠は初めての悩みを持つことになった。
初めての友だち、感覚がわからない。
本では知っていても、わからない。
難しいのは、藍の距離の詰め方である。
彼女はそれが友だち以上の情念であることに気づいていない。
しかし、それをきっぱりと、無理に断絶する気にはなれないのだ。
自らの規定に沿わないことはできない。
自己欺瞞が最も許されないこと。
それは累人や行使者が最重要におくものだ。
翠が自らのことを話す。
家族のこと、趣味のこと、読書の内容、植物の知識、山ごもりの経験。
藍は全てを肯定してくる。
彼女の苛烈なところは、翌日には翠が言ったことを総て調べて理解して来ること。
尽くされれば、悪い気はしない……
藍が誘う。
「センパイ、森に行きましょう」
翠は、勝負どころだと感じた。
藍がピクニックやキャンプ気分で訪れ、音を上げるようならそれで終わりにしてもいい。
そして……藍ならついて来ることができるかもしれない。それなら……とも思っていた。
結局その日が、翠が他人に対して「初めて」を捧げる日になる。
山ごもりは休前日の夜から登校日の朝までである。
翠は藍のためにこの習慣を変えるつもりは全くない。
自然の驚異に塗れた森林の中を、翠は自らの興味のまま、泳ぐように縦横無尽に進む。
翠は自然に愛されている。
ゆえに危ういことは全くありえないのだが、藍は別である。
植物による皮膚のかぶれ、虫、爬虫類、草食獣から肉食獣まで。
あらゆることに藍は遭遇することになる。
しかし、楽しげにすいすいとついてくる。
感嘆の声は上げつつも、自ら携えてきた知識で対処する。
他人と同じ水準で物事を話せることはなかったので、話は弾む。
そして、口を滑らせてしまう。
自分の能力について。
藍の持つ雰囲気によって喋らされたようにも思う。
まず、植物と対話ができること。
冗談や比喩として処理されて信じるとも思っていなかったのだが…
「やっぱりセンパイはすごいですねぇ~」
軽い。
だんだんと調子に乗って喋っていく端から藍は軽やかに信じて処理していってしまう。
森林の中において、翠は無敵であるから……気が大きくなってしまっていた。
自分の思想信条から何から始まって、気づいてみれば。
なぜだろう。
藍に、私のことが好きであると。そう意識的に言わせたくなった。
性愛の対象として。はっきりと。
「好きです。センパイのことが。初めて見たときから……たぶん」
早い。
そして……
そういうことになった。
04.行為、行使
藍が眼前に迫ってくる。
私は恥が遅れてやってきたのか、少しずつ退がろうとするのだけれど、気づけば仰向けに寝かされていた。
テントも張っていなければシートも敷いていない土の上で。
生涯で初めてのキスをした。
異性となんて考えることもなかったが、同性と。
「良いってことですよね?」
藍に言わせられるのは癪だ。
「答えてくれるまで、キスだけを続けますから」
そして、ちう……ちゅ……と、ぎこちなくて慣れない接触を続ける。
結局音を上げたのは、私。
行動で示した。
強引に舌をねじ込もうと思ったのだが、藍はわかっていたかのようにそれを唇ではむ。
「んんっー」
私の舌を彼女の舌が舐ってきて。何度もしごかれる。
彼女の舌が私の口内を巡って、歯周まで舐め尽くされる。
涎を吸い取られて、彼女の口内で混ぜ合わされたものを、流し込まれて。
藍の小さな手のひらが頭を撫で頬に移動する。くすぐったいけれど、また初めての快感。
悶えている間にはだけさせられて、露出したそばから触られ舐められる。
先端に差し掛かった時、全身が震える……息が苦しい。
藍の手が止まり、ひっくと嗚咽を上げる。
「センパイ、あたしも変な力、あるんです」
「空気。空気を読めないとかの、空気感のことです。それを操作することができて」
「センパイが心を許してくれたのもそれのせいかもしれなくって」
「センパイを侵略していることになるのかもって」
藍は我慢できずに、泣きじゃくる。
私は藍にされたように頭を撫でて、頬を撫でて、口吸いを求める。
藍は口を閉じることで拒む。
……言葉を引き出させられる。
「それも藍の一部なら、しかたないわ」
「藍を好きになってしまった。私の負けよ」
行動で示すため、私から藍に攻め入る。
藍のマウンテンジャケットの前を開けて。
藍らしい、可愛いトップスを上にずらすと、開放される熱と花の匂い。
活動的なスポーツブラを触ると体温を感じる。
欲しくなった。
水玉を舌先ですくい取る。
小さく喘ぐ藍が愛おしくて。
小ぶりな胸を掴む。わざと、強く。
「センパイ、やさしく……」
「良いってことね?」
今度は優しく、ゆっくりと撫で回しながらキスをする。
さきっぽをつまんだり引っ張ったり、舐めたりしてなぶる。
「センパイのちからでまもってください……」
藍の下を脱がせることで応える。
接地しているが、土は付着しない。最高のベッドとなる。
「なんか下、やわかくてぬくい…」
どちらのことだろう?確かに土は柔らかくしてある。
おなかから股まで、脂肪体をふにふに触る。
声を無視して、徐々に下へ。
触れば、反応がある。なくてもわかるほど。
溢れた液体を指ですくって、塗り拡げる。
口を求め、凸部を吸いながら、人差し指と中指で弄る。
「やぁ……です……でした……」
藍が限界を突破して、下腹を震わせるが構わずに続ける。
刺激の予感に全身を粟立てる。
ぬるりと人さし指を受け容れる。痛みもない様子。
二本目には、少し抵抗があった。
包皮から剥き出しになったこりこりの突起をぴんと弾いて、遊ぶ。
声と身体で応える藍が面白い。
次は口でと思ったが、止められた。
「センパイが、そんな汚いとこ、ダメです」
無視。
下品に、啜る。音を立てて。
混ざった液体を口に運んで飲ませる。
繰り返し。
藍が格闘技の達人のように……見たことはないけれど。
翻ってくるりと位置が変わって、馬乗りにされる。
身体強化能力は藍の方が上らしい。
次は藍が責め立てる番になった。
「センパイの弱いところは、もう私の力でわかってるんですから」
自分が気持ち良いと思うところを、藍にも投射していたから。
一気に熱を持ち、顔が赤くなるのがわかった。
藍の力によって、心の底から。そしてそれを更に見透かされたことがわかる。
折り重なる感情に、もう我慢できなくなった。
藍を求めれば、彼女の柔らかい二本の指でかき回された。
寄せては返す波。その度に。彼女の名前を叫んでいた。
お互いに満足するまで。
でも少し落ち着いたら、また始まる。
ご飯を食べて、日が暮れても。
代わる代わる。
お互いに。
指で、口で、あらゆるところで感じ合った。
就寝前のお喋り。女子会と言えるだろうか……
藍の能力について自身によれば、ある程度、人がどう思っているかがわかるということ。
でも、密に接触した私にはそんな軽い力だけではないことがわかる。
藍の能力。それは心の読解と投影。
藍は他人の心を見通す。それは確か。
恐ろしいところは、天然なのだろう。それをもとに最適な行動を行う。
自分が他人にこうなって欲しいという願いを投げかけて、押しつける。
物理的に、精神的に。
よって私は、もう藍のものになってしまった。
藍がもし悪い心を持っている人間だったら、どうなっていただろう?
藍の心象が悪ければ、他人はその通りに生きることになる。
藍が他人を悪人だと決めつける性格なら、その他人は実際に悪い行動を起こすだろう。
自覚のないままに……
思考によって、一息の間が空く。
「そういえば」
「私のことを名前で呼んでくれてもいいわ」
口調で照れを誤魔化したのも、藍には全て理解されているだろう。