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第8話 三リスはモフられる

「おはよう」

「早いね」

「そう言うサラシャこそ」


 そう言うと茶色いローブを着た彼女が少し(うつむ)いた。

 しかし暗闇のせいかサラシャの顔があまり見えない。

 どうしたものかと思いつつも肩や頭に乗る三リス達が口を開く。


乙女(おとめ)に対してあんまりですわ。主様」

「そうだぜ。流石のおれっちでもここまでじゃねぇな」

「お、お疲れさまです」

「こ、声?! 」


 ベルデ、ロッソ、ブルの言葉を聞いて顔を上げる。

 驚き周りをみているが三リスを見つけられないようだ。

 そっか。そう言えば昨日、会わせていなかったな。

 納得し声をかけた。


「俺の肩と頭にリスがいるだろ? 」

「え? ……本当だ! 」

「こいつらが喋って——「可愛い!!! 」「「「むぎゃ!!! 」」」……」


 俺が説明しようとするといきなり近寄り三体を一瞬で手に取ってしまった。

 (ほほ)ずりしながら毛並みを堪能(たんのう)しているサラシャ。

 確かに良い毛並みなんだが、この三リスがマザーダンジョンであることを知っている俺からすれば少し冷や汗が流れる。

 まぁドラゴンのブレスでも傷一つつかない奴らだから大丈夫だとは思うが。


「や、止めなさい」

「頬ずりしないでぇ」

「モ、モテるのは嬉しいがやめてくれぇ。毛が、毛がぁ~」


 いつも強気(つよき)なベルデとロッソが(なさ)けない声を上げている。


「見ていないで助けなさい! (あるじ)様」

「助けてぇ」

「お助けぇ」


 う~む。リス達と(たわむ)れる少女 (年齢不詳(ふしょう))の図というのも中々に絵になるのだが……。

 仕方ない。助けてやるか。


「サラシャ。そろそろ彼女達を放してくれないか? 」

「も、もうちょっと……」

「ひぃ! 」

「ほらブルも怖がっているから、な? 」

「分かったよ」


 そう言うと、本当に渋々と言った感じで三リスを離す。

 そしてすぐさま俺のリュックサックに入ろうとする。

 それを(つか)み、引き()めた。


「何するのよ?! 」


 ベルデが「わけがわからない」と言った顔で俺を見上げる。

 俺のリュックサックに逃げようとしたのだろうがそうはいかない。


「ほら三体とも挨拶しろ。これからお世話になるんだから」

「確かに必要だけど」

「ぼ、僕はブル、です」

「マ、マスターが紹介したらそれで万事解決じゃないか? 」

「ほらブルも挨拶したんだから挨拶しろ」


 溜息をつきながら三リスを手に乗せサラシャに向ける。

 このままでは(らち)()かないと思ったのか、いきなりガバっと顔を上げ彼女の方を向いた。

 そして——。


「誰が呼ぶ? 俺が呼ぶ! 赤の精霊獣『ロッソ』」

「獲物を採ること風のごとし。緑の精霊獣『ベルデ』」

「未知を求めて三千メル! 青の精霊獣『ブル』」

「「「三体合わせて——主様 (マスター) (ご主人様)護衛三リス隊!!! 」」」

「バラバラじゃねぇか!!! 」


 手の(ひら)で決めポーズを決める三体に思いっきりツッコんだ。


「ちょっと合わせなさいよ」

「ベルデ。お前がおれっちに合わせろよ」

「嫌よ。そもそもロッソに合わせるのが嫌よ」

「……ぼ、僕リュックサックに帰っていいですか? 」

「口喧嘩する割にはお前達ノリノリだったな」


 と溜息をつく。

 そもそもいつの間に名乗りの練習してたんだ? この三体。謎過ぎる。


 少しジト目で手の平を見る。騒がしくしていると思ったら、腕を駆けあがりそのまま俺のカバンに入っていった。

 サラシャに顔を戻すとポカーンとしている。

 そりゃそうだ。(しゃべ)るリスなんて受け入れ(がた)いだろう。


「あ~。あいつらは精霊獣なんだ」

「精霊獣?! 」


 サラシャが更に驚き前に()()る。

 ごめんなさい。嘘です。精霊獣ではなく特殊なダンジョンコアです。

 しかし彼女はそれで納得したようだ。頷きながら見上げてきた。

 

「なるほど。だから喋っていたんだね」

「? 」

「希少な精霊獣が三体も。すごいね」

「そうか? 」


 精霊界では(わり)といたから特別感がないが……。確かに人界に来てからはあまり見かけないな。

 この言い方だと魔界にもあまりいないようだ。


「そりゃそうだよ。身近に三体もいるからわからないかもしれないけど稀少も希少。ボクも初めて見た」


 (かん)(きわ)まったような顔をするサラシャ。


「しかし何で精霊獣だと喋っててもおかしくないんだ? 」


 そう言うと「あぁそれはね」と言い付け加えた。


「精霊獣はその生態がわかってないんだよね。だから喋る精霊獣がいてもおかしくないかなって」

「そうか」


 軽く頷き同意だけする。

 精霊界の精霊獣。結構喋ってた気がするが……、情報を開示していないのだろうか。

 まぁ精霊界自体封鎖的なところがあるからな。人界や魔界ほどオープンではない。開示していないと言われても納得だ。


「ま、そう言うことだから……後でモフらせて」

「何でそうなる! 」

「いやだってさ。珍しい精霊獣だよ? 他の人には言わないから、さ」

「あれだけ(おび)えてたんだぞ? 」

「大丈夫だって。すぐにボクのテクニックで快楽(かいらく)()ちるさ」

「サキュバス! そんなところだけサキュバス! 」


 俺がそう言うと、サラシャがくすっと笑った。


「冗談だって。本当に嫌がっていることはしないって」

「……ならいいんだが」

「さ。まずは魔国へ向かおうか」


 こうして俺は朝からハイテンションで上機嫌なサラシャと共に町を出た。


 ★


 町を出、これから隣国へ行こうとしている時。俺はサラシャに聞いた。


「どうやって行く? 」

「個人的には馬車でゆっくり揺られながらもいいんだけど、今回は早ければ早いほどいいからね。どこかの転移屋に行くか、走るかだね」


 俺が聞くとサラシャがとんでもない事を言う。

 転移屋なんて雇ったら俺の(たくわ)えがごっそりやられる。

 幾ら元国家公務員とはいえ(した)()

 気軽に転移屋に行ける程の蓄えはない。


「流石に転移屋は高い。走って行こう」

「良いよ。でもボクは速いよ? 」

「その言葉、返しておこう」

「なら競争する? 目的地のガルドア王国までどちらが速いか」

「受けて立つ! 」


 いたずらっ子のような表情を浮かべて俺を見上げるサラシャに返事をする。

 ガルドア王国がる方向を見て軽く体を動かした。


 隣を見るとサラシャはローブを脱いでいる。

 どうやら本気らしい。

 彼女は茶色いローブを腰にしているアイテムバックに詰め込んで俺を見た。


「その緑のローブは良いの? 」

「このくらいハンデだ」

「良いのかな。そんなに威勢(いせい)の良い事言って」


 挑発的な事を言うが正直負ける気がしない。


「じゃぁ行くよ」

「おう」

「よーい。どん!!! 」


 俺達二人は音速を超えた。

ここまで如何だったでしょうか?


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