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第6話 ハデルは勧誘される

「面会に(おう)じてくれてありがとう」


 目の前の全身ローブの女性がそう言った。


「あ、あぁ……」


 俺は戸惑いながらも彼女を見る。


「おっと、このままだと失礼だね」


 そう言いながら彼女はローブを脱いだ。

 そこから出てきたのは黒いニーハイに極端(きょくたん)なミニスカを()いたへそ出しルックな女性。


「認識阻害をかけていたようだがいいのか? 」

「別にかまわないよ。交渉に来たんだから。むしろ着ていた方がこちらが不利になりそうだからね」


 交渉、という言葉を聞いて「なんの? 」と思ったが、腰に手をやる露出(ろしゅつ)狂にまずは座るように伝える。

 彼女は歩き、胸を(たゆ)ませ、机に近付く。

 机の上にいるベルデにブルの所へ行くように指示を出して机を空けると彼女が椅子を引く。

 その時短いピンクの髪が少し()れ、後ろから前に向けて頭を巻くようにある二本の角が良く見えた。


 魔族、か。

 角の形状からすると悪魔族だな。


 少し緊張し、警戒心を上げる。

 生憎(あいにく)ロッソを使わないと全力を出せないが、それでも無詠唱で魔法が使える。


 彼女が座る瞬間に一先ず各種耐性を上げる。


 魔法隠蔽(ハイドマジック)精神攻撃耐性上昇マインドエフェクト・プロテクション物理攻撃耐性上昇マテリアル・プロテクション魔法攻撃耐性上昇マジック・プロテクション……。


「ありゃ。警戒させちゃったかな」


 座った彼女が金色の瞳をこちらに向けて苦笑いしていた。

 彼女の瞳に合わせずに「まぁね」とだけ伝える。


「警戒しなくても大丈夫だよ……と言っても信じてくれないんだろうけれど」

「こればかりはな。俺も人の事は言えないがいつの間にか契約書が出来上がっていました、という状況だけは避けたいし」

「悲しきかな。悪魔族に生まれてしまった(さが)というものだからね」

「無詠唱で発動させた魔法を感知されただけでも警戒するにあたるよ」

「あちゃぁー。自分で首を()めたか」


 少しお(ちゃ)らけた感じで自分の額を手で叩く。

 ハートの形になっている尻尾の先をこちらに向けて痴女(ちじょ)は言う。


「じゃ、一先ず自己紹介から! ボクは『サラシャ』。悪魔族淫夢魔(サキュバス)のサラシャ。ハデル・エル。君を魔界のダンジョンに勧誘(かんゆう)しに来た! 」


 彼女はそう言い両腕を広げた。


 ★


 お互いに自己紹介を終えた後話を進めた。


「ハデルの話は魔界の魔国にまで(とどろ)いているよ」


 それを聞き少し嫌な予感が走る。

 精霊族のこと、じゃないよな?


(ちな)みにどんな噂が? 」

凄腕(すごうで)のダンジョン経営者という噂」


 そっちか。よかったぁ。

 安堵(あんど)していると中性的な顔立ちの彼女が少し微笑んでいた。


「でダンジョンに勧誘って? 」

「そのままの意味だよ。魔界にある国、『魔国』にあるダンジョンの一つをその手腕を持って立て直してほしいんだ」

「? 魔界のダンジョンは質・量共に良いはずだが」

「それがそうでもないんだよね」


 と彼女は溜息をついた。

 そして少し遠い目をして事情を話す。


「確かに質のいいものは出るかもしれない。だけど、何故か収益が上がらなくてね。そのダンジョン」

「収益が上がらない? 」

「そう。物自体は良い物が出ているはずなんだけどこのままいくと潰しかねなくて」

「そんなにまずいのか。しかし何で……」

「さぁ。ボクには何が何やら」


 サラシャと呼ばれた淫夢魔(サキュバス)は手を横に振って「わからない」という。


 魔界産の物は人界によく売れるはずだ。

 売れないはずは、収益が上がらないはずはないんだが。

 ううむ。余程経営者が悪いのか、かなり非効率なやり方をしているのか……。

 行ってみないとわからないな、こればかりは。


「ま、ということで魔王陛下ご指名の元ハデル、君をスカウトに来たんだ」


 なるほどな。売れているのに収益があがらない。そこでスカウトに来たということか。


「……スカウトに来たところ悪いんだが今俺は職がなくてな」

「え? うそ! なにが起こったの?! 」


 バン! と机を叩いて身を乗り出す。

 近付いたことで甘い香りを向けてくる彼女に今日あったことを説明する。

 すると椅子に座り直して目を開いた。


「これは何というか……。それはご愁傷(しゅうしょう)様」

「あれは一体何を考えているのやら」

「だけどこれっていいチャンスだよね! 魔国に来ない?! 」


 サラシャは少し興奮した様子で提案した。

 ん~、と悩んでいると更に言葉を(かさ)ねる。


「お給料(はず)むよ! 」

「収益が悪いのに給料弾んでどうするんだ? 」

「今入るとダンジョン管理局の職員だから国から給料が入るんだよ」

「なるほど」

「それにハデルが失敗するとは思えないし……。そう! これは未来に向けた投資なんだよ! 」

「嬉しいが……やけに買ってくれてるな」

「そりゃ調べたからさ」


 胸を張りそう言うサラシャ。

 なにをどう調べたのかかなり気になる!


「ま、失職してどこに行こうか考えていたところだしな。行くか、魔国」

「ありがとう!!! 」


 喜び席を立つサラシャ。

 しかし魔界か。

 行ってみたいとは思っていたがこうも早く行くことになるとは。


 大袈裟(おおげさ)に喜ぶ彼女を見て少し不安になりながらもまだ見ない土地に心躍らせた。


 ★


「にしてもその服装恥ずかしくないのか? 」

「ん~そう思ったことはないかな。それにこれは淫夢魔(サキュバス)にとって制服みたいなものだし」

「明らかに男性を誘惑しているように見えるんだが……。その、大丈夫なのか? 」

「心配してくれるんだ。優しいね」


 交渉成立と言ったところで雑談をしている。

 サラシャはベルモットではなく違う宿に泊まるらしい。何でも「こんな高い宿に泊まれない」とのこと。

 全くもってその通りで。俺も特別会員証が無ければ泊まっていない。

 そんな高級宿だ。彼女も「せめてギリギリまで堪能(たんのう)を」と意気込み少しこうして居座っていたりする。


 話していると席を立ち腰に手をやり少し挑発的な顔をして俺の方を見てきた。


「なら触ってみる? 」

「え? 良いの? 」

「触れるものなら、ね」


 ほほぉ……。これはあれですか。セクハラをしても許されるあれですか。

 良いだろう。その挑発、乗った!!!


「では」


 いざ(まい)らん!!!


「秘技! スカート(めく)り!!! 」


 パサァ……と音を立てて赤と黒のミニスカは上を向いた。

 そこから見える白い布(エデン)

 ほぉ、意外にも白か。赤か黒、もしくは紫辺りだと思ったんだが。

 捲れたミニスカは上から降りて、俺の頭に(かぶ)さった。


「きぃぃぃやぁぁぁぁ!!! 」

「げふっ!!! 」


 漆黒の闇に一条(いちじょう)の光が差し込む中、俺は(ひざ)蹴りを食らい、吹き飛んだ。

ここまで如何だったでしょうか?


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