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第20話 ハデルはおちょくりメイドに出会う

 執事服を着た三角魔族ことシュラーゲンに連れられ、俺とサラシャは応接室に座っていた。

 道中城内で様々な種族の使用人達が頭を下げていた。サラシャは彼らに手を振りつつここまで来たのだが、様子を見ると彼女はかなり人気があるようで。


「ではワタクシはサラシャ姫帰還(きかん)のご報告をして(まい)ります」

「それならボクも行くよ。成果(せいか)報告もしないといけないし」

「……サラシャ姫がご立派にっ! 人界へ一人旅させたことが、姫様をここまで成長させるとは! このシュラーゲン。感服ですぞ! 」

「ちょっ! なに言ってるのさ! シュラーゲン。それだとボクがポンコツみたいじゃないか! 」


 シュラーゲンと言い合うサラシャ。


 ポンコツ、か。

 何故かな。最初会った時はそれこそ優秀(ゆうしゅう)そうなスカウトウーマンと感じていたのに、今となってはその言葉がしっくりくる。


 こうして言い合っている姿を見るとより少女っぽさが(にじ)み出ている。


 ふむ、と観察しているとサラシャが俺の方を向いて口を開く。


「それじゃボクは報告に行ってくるからちょっと待ってて」


 彼女の言葉に片手を上げて「了解」と答える。


「あ、そうだ。何かあったらそこのベルを鳴らして」


 そう言い残しサラシャは俺に背を向ける。背にある小さな羽根を少しパタパタさせて、扉を閉めた。

 残された俺は一先ず机の上のベルを見る。


「押すなと言われたら押したくなるのが心情だよな」

「ええ。私もそう思います」

「だろ? それにここは魔王城。ベルと見せかけて(トラップ)のボタン。押すと罠が発動! なんてことがあったら……」

「あったら? 」


「ゾクゾクするじゃないか」


「変態さんですね」

「分からないかな、この何が出るかわからないこの高揚感(こうようかん)。押してはダメなベルは押すためにあるようなものだ。ま、仮にもここは王城。変なものは出てこないとわかってだがな」

「出たら陛下の顔に(どろ)()るようなものですからね」

「そうそう……って誰?! 」

「ナイスツッコミ! 」


 声の方を見る。

 扉の前には親指をぐっと立ててこちらを見てくるメイド服の女性がいた。

パッと見派手だ。紫の、しかし前髪に金のメッシュを入れた金色の瞳のその人で。

 こちらに向かって一歩前に出る彼女の身長はサラシャよりも高く、見える肌は白い。

 が……。


「そんなに見つめてどうしたのですか? まさか初対面の相手に欲情?! 」

「そんなことあるかい!!! 」

「では如何(いかが)なさいましたか? 」

「聞きたいことは山ほどあるが……。まずそのメイド服は一体……」

「メイド服の事でしたか。これは失礼。初見の方は皆様これを見て驚かれます」

「だろうな。所々金属らしきものが見えるし」

「このメイド服はサラシャ様のメイドこと私『パシィ・ブラウン』が手掛(てが)けた物。魔改造に魔改造を重ねて対物理・魔法・精神性を(そな)えた(すぐ)れもの! 」

「メイドって侍女(じじょ)の事だったよな? 」

「その認識で間違いございません」

「何で戦闘に特化しているのっ! 」

「それは簡単。いつ私……いえサラシャ様に危害か及ぶか分かりませんので。(そな)えあれば(うれ)いなしというものでございます」

「今自分の身を優先しただろ?! 」

「そのようなことは……ふっ」


 と微笑を浮かべて顔を背けた。

 なにこの非常識メイド! というか本当にメイド?

 かなり戦闘に特化しているようだが……、と少し目に力を()める。


「おや。それは魔眼でしょうか」

「……よくわかったな。サラシャは気付かなかったのに」

「サラシャ様は抜けている所があるので」


 そう言いながら俺の目を彼女が覗き込む。


「金色の右目に緑の左目。オッドアイですか。珍しいですね」

「魔眼と分かりつつ俺の目を見るなんて……怖いもの知らずだな」


 (あきれ)て笑う。


「今の時点で私に危害が及んでいない所から推察(すいさつ)するに、コントロールされている力と判断しました。それにもしコントロールできていないとしても私自身に変化がないことから、少なくとも相手に危害を加える(たぐい)の魔眼ではないと判断しました」

「体張り過ぎだろっ!? 」

「付け加えるのならばサラシャ様が無事御帰還されたことからも同様の推察が可能でございます」

「その物騒なメイド服が無自覚に弾いている可能性は? 」

「無きにしも(あら)ずですが、それならば私自身なにかしら感じ取れると考えます」


 とキリッとした表情でそう言った。


 はぁ。完全に見透(みす)かされた。

 見透かされても特に問題はないのだが、少し(くや)しい。

 軽く溜息をつきながら「降参だ」と言い両手を上げる。そして説明を始めた。


「その通りだ。金の右目は魔力眼、緑の左目は精霊眼だ」


 それを聞くとパシィと名乗った物騒なメイドは目を開いて驚いた。


「双方ともに魔眼でしたか。流石にこれは予想外。認識を(あらた)めなければなりませんね」

「別に大したものじゃないから構わないと思うが」

「して魔力を視る魔力眼は分かるのですが、精霊眼とは一体? 」


 とまた一歩前にでて俺に聞いて来る。


「その名の通りだよ。精霊が視える」

「精霊、ですか? 」

「あぁ。小さな一対の羽根を生やした球状の……生物? 」

「私に聞かれましても……」


 少し口角(こうかく)を上げ首を傾げる彼女に俺は肩を(すく)めた。

 こればっかりは「こう視える」としか言いようがない。

 普通の人には視えない何か。

 地球で言う所の霊体や幽体(ゆうたい)に当たるのだろうけれど、丁度(ちょうど)いい言葉がこちらに無い。

 よって勝手に「幽体」と呼んでいるが、こちらの人にはピンとこないようで。呼んでいるのは俺だけだったりもする。


「後はそうだな。魔力と同じく精霊魔法の力の根源(こんげん)が視えるくらいだ」

「それは「くらい」には収まらないのでは? 」

「ド派手な「爆裂の魔眼」や「氷結の魔眼」じゃないんだ。精霊眼は確かに珍しいが便利とは言い(がた)い」


 実際に精霊眼がなくとも精霊族ならば精霊は視える。

 これが妖精族を始めとした他種族ならばさぞありがたられるのだろうけれど、生憎(あいにく)俺は生まれた時から精霊が視える精霊族。

 宝の持ち(くさ)れとはまさにこの事だろう。


「ま、そんなことはどうでもいいんだ。パシィ、と言ったか? 」

「はい。私の事は是非とも『おちょくりメイド』パシィとお呼びください」


 呼びたくないが、まさにパシィを体現(たいげん)している二つ名だ。

 呼ばないが。


「で聞きたいんだが」


 俺がそう言うと彼女は少し真面目な顔をした。


「どうやってこの部屋に入った? 」

ここまで如何だったでしょうか?


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