第19話 ハデルは魔王城に到着する
有翼獣人や飛行型魔族に混ざり空を飛んで首都まで来た俺とサラシャ。
スタッと定められた着地点に足をつけて門を潜った。
「ここが魔国の首都か」
「名前は『アスモデウス』。首都アスモデウスだよ」
「なるほど。なら魔王のファミリーネームは……」
「ご想像の通り、アスモデウス」
ニカっと笑って腕を後ろで組む。そしてくるっと回り俺を先導するサラシャ。
認識阻害の必要性が無くなったのか今彼女はローブを着ていない。
先がハート型に尖った尻尾に短いスカートをゆさゆさはためかせて俺の前を歩く彼女の姿は——非常にエロい!
ミニスカとニーハイが作る絶対領域。
まさに不可侵!!!
うん。眼福だ。
しかし魔王のファミリーネームがアスモデウス。
確かアスモデウスは色欲の悪魔だったか? かなりうろ覚えだが。
転生してダンジョン攻略に出て時折感じたがこの世界、時々地球とリンクしている概念がある。
一概に、そして完全に一緒と言う訳ではないのだが参考にはなる。
それを踏まえて考えると、国王の種族は色欲の悪魔系統だということになるな。
『なに邪な目線を向けているのかしら』
俺がリズミカルに揺れるスカートに目を奪われていると脳内にベルデの声が響いた。
念話……じゃなくダンジョンコアとしての力を使った通信か。これならば盗聴はされないだろうが、いきなり頭に響くからやめてほしい。いやいきなり頭に声を響かせるダンジョンコアなんてここにいる三体しかいないがな。
『邪な目線なんて向けていない。前言撤回を要求する! 』
『視えているわよ。貴方の目線』
『うぐっ! 』
そう言われ呻く。
俺の声を聞いたのかサラシャが反転し「どうしたの? 」と聞いて来たが「何でもない」と答えた。
すると「そっか」とだけ言いサラシャはまた前を歩き出した。
またもや悩ましい尻尾が、領域が、俺を揺さぶる。
『因みにだけど、彼女主様の目線に気付いていると思うわよ? 』
『え? マジか?! 』
俺がベルデに叫ぶとまた尻尾が右に揺れる。
俺が、この俺が誘導されているだと!?
『……自覚がないのね』
『これだからマスターにはおれっち達がいねぇとダメなんだ』
『そ、そうです。悪い道を行かないように見張っておかないとっ! ふぁぁぁぁ……ここが魔界の国の首都かぁぁぁ』
いつの間にか三リス達が通信に入り、俺を注意する。
今彼女らは俺の周りにいる精霊達を通して外の様子を見ているのだろう。
マザーダンジョンコアとはいえ精霊獣に変身できる彼女達だ。精霊獣フォームとなって精霊魔法を使い、丸く一対の羽根を生やした精霊を通じて——外を覗き見ているのが容易に想像ができる。
しかし漏れ聞こえるブルの感嘆の声を聞くとブルは人の事は言えない気がするんだが。
『それにしても少しおかしい気がするわ』
『何がだ? 』
『周りの目線よ』
目線? と聞き気付かれないように周りに気配感知を広げる。
特に俺達を害するような変わった雰囲気はないが……。
『違うのよ。彼女に対する目線というか』
『それは淫夢魔だからじゃないか? 』
『でも他にも淫夢魔は周りにいるじゃない? 』
そう言われると確かに同じような服装を来た淫夢魔達がいる。
彼女達の目線を追うとその先にサラシャがあり、そして俺へと向かった。
俺が気付いたことに向こうが気付いたのだろう。周りの人達はすぐに目線を外すが……確かにこれは変だ。
しかし弱い隠蔽魔法がかかっているローブを着ているとはいえ、今の俺はエルフに見えるはず。
この国ではエルフが珍しいのだろうか?
『警戒しなさいってことよ。彼女が何か隠している段階では』
『……了解』
「さ、着いたよ! ここが魔国の魔王城! 」
俺がベルデ達と通信を切った時、サラシャは俺の方を向き満面の笑みで目の前に広がる黒く巨大な建物——魔王城を紹介した。
俺は少し引き締め魔王城へ足を向けた。
★
それは魔王城に入ろうとする時、起こった。
「姫様! お帰りなさいませ! 」
「! 」
「わぁっ! な、なんて事言うの?! ボ、ボクは姫様じゃないよ! 」
「何をおっしゃいますか姫様! 」
サラシャが門番に近付くといきなりサラシャの事を「姫様」と呼びだした。
そしてそれを慌てて取り消してもらおうとしるサラシャ。
「ち、違うんだよ、ハデル! 」
「……無理があり過ぎるだろ」
「違うってば! 」
「サラシャ姫ではございませんか。人界はどうでしたかな? 」
サラシャが俺に慌てて説明しようとすると奥から少し老いた、しかし現役バリバリの覇気を纏った執事服の男性が現れた。
彼の声を聞いてサラシャは「もう! 台無し! 」とキレているが、他の三人は首を傾げている。
そしてしゅんとしたサラシャが俺の所まで近寄って、見上げて言った。
「あ、あのね……。ハデル。今まで黙っててごめん」
「あー、うん。一応の説明は……」
「はは。後でドッキリを仕掛けるつもりだったんだ」
「……なるほどね」
何というか……。杜撰!!!
いや。バレるでしょう?! 一国の王女様が帰ってきたら普通門番にバレるでしょう?!
むしろどうしてバレないと思った?
もしこれを実行するなら「一回どこかで別れて魔王城でドッキリ」とかじゃないのか?!
『なるほどね。それでアスモデウスの人達の目線がサラシャに向いていたのね』
『自国の王女が町を歩いているとなりゃぁ仕方ねぇな! 』
『……サラシャさんはポンコツなのでしょうか? 』
その可能性は否めないが、ブルが毒舌!
ん? 待てよ。
「ならサラシャが俺の補佐に回るというのも冗談か? 」
「いや、それは本当」
むしろ冗談であって欲しかったっ!
王女様が補佐に回るって、かなりのプレッシャー!
むしろどこかでお茶をしておいてほしい。
『……界王様の息子である主様が言いますか? 』
『人の事は言えねぇな』
『あ、あまり責めないでも……、い、いんじゃないかな』
ブルが優しい!
「さてサラシャ姫。そちらの御方が例の方とお見受けしますが」
ブルへの好感度が上下に大きく揺れる中、額に三つの角を持った三角魔族の男性が一歩前に出てそう言った。
するとサラシャが彼を見上げて大きく頷く。
更に前に出て来て体をずらした。
「ではここからはワタクシ『シュラーゲン』がご案内しましょう」
こうして彼に先導されるまま俺達は一先ず休憩室へ通された。
ここまで如何だったでしょうか?
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