第七話 月光草
第二門の解放から二年が経ち俺は五歳になった。
妹のネイルは三歳になり、よく歩くようになっていた。
あれから魔法を習得しようと母であるレイネシアに教えを請おうとした。
しかし、この世界は十歳にならないと魔法を使ってはいけないらしく、その前に使うと身体の成長を阻害すると言われているそうだ。
もう既に魔力を増やしている俺はどうなんだと思ったが、今のところ順調に成長している。
もしかしたら小さい子に魔法を教えるのは危険だから、そんな方便を使っているのかもしれない。
せっかく自分の知っているゲームの世界にきたのだ、自重などしていられない。
なので、自分流に色々やってみた。
まず、魔力門の解放を頑張ってみたが第三門である右腕の点に変化は見られない。
第一、第二門の時は無理やりにでも解放しようと思えばできたが、第三門は非常に強固で、解ける気がしなかった。
ならばと魔法陣に手を加えてみる。
最初から使えた魔法陣は凄くシンプルで、これに何かを加えていけばいいのかなと予測を立ててみる。
ちなみに魔法に陣は腕の中にあるので、他の人のを見るということは基本的にはできない。
だが、俺には体内に流れている魔力や魔力線が見える。
他の人も見えている可能性はあるが、であればレジェイネや両親の魔力門が閉まったままなのは不自然だ。
魔力門が見えているのに、何もしないなんてことはあるのだろうか?
別に魔法に詳しいわけでもない俺が感覚的に魔力門を開いたのだ、見えているなら他の人が気づかないわけがない。
見えないなら?
それは文字通り手探りで魔力門を開くことになる。
そうなれば難易度は跳ね上がる。
いわゆる才能とか、天才といわれる人たちの領分になってくるかもしれない。
(模様は書き換えれるけど……魔力が上手く通らないな?)
上手く通らないというのは、魔法陣が魔力になにかしらの変化を与えている感覚がないのだ。
初期魔法陣を通った魔力はその速度が増し、流れが安定する。
だが、俺が手を加えた魔法陣は何も引っかかることなく通り過ぎる。
やはりあてずっぽうではダメなのだろう。
どこかで魔法を習う必要がある。
しかし都合の良い当てなどあるはずもなく……いや、ある!
この世界に知り合いがほとんどいない俺だが、知り合いでなければ魔法について詳しい人物を知っている。
それに、俺ならその人に師事することができるはずだ。
だが、それを達成するためには事前の準備がいる。
(いけるか? いや、大丈夫だろう。今の俺なら普通の五歳児ではないからな!)
第二門までの解放を日常的にできるようになってから増えた魔力量に比例するように身体能力も爆上がりしている。
心当たりの人物の弟子になるにはとある物が必要になるのだが、それは少し遠いところにあり子供では入れないような場所に隠されている。
(行くか)
そう決心すれば行動あるのみだ。
十歳になるまで素直に待っても魔法は覚えられるはずだが、ネイルの病気のことを考えると早めに魔法を覚えることが必要だ。
単純に強くなれればいいのだが、やはりこのゲーム世界で一番強くなる方法は魔法なのだ。
それは今の俺でも実感している。
魔力が増えただけで大人並みの力を発揮できる五歳児が何よりの証拠だろう。
ちなみに周りにこのことはバレないように注意を払っている。
もしこのことがバレ、俺が魔力をどうこうしていると知れればこの世界の十歳になるまで魔法は使ってはいけないという教えに背いていると判断され、魔力を使っていないか監視されでもしたら面倒だ。
そういった事情から細心の注意を払いながら準備を始めることにする。
五歳児が大人のような力を発揮していたら一発でバレるので、行動は基本的にみんなが寝静まった時になる。
幸い子供は昼寝時間が確保されているので寝不足でキツくなるということはなかったが、やはり睡眠時間は短くなってしまった。
そして今日も夜中に起きだし、家を出る。
必要な物の採取だ。
(あったあった! 確かこの辺りに群生地が)
お目当ての物は森に入り暫く進んだところに生えている。
(確かこの月光草が百本必要だったよな)
―――――――月光草
呪いの解呪に効果のある薬草だ。
需要はそこそこといったところだが、群生地がなかなか見つからないので貴重品でもある。
しかし、俺はその群生地の探し方を知っている。
ゲーム本編となる王都周辺ならばそもそも群生地を知っているのだが、俺の住んでいる場所は本編に登場しなかった場所だ。
なので月光草を探すのに苦労している。
月光草は月の光で育っているので、森の中で開けた場所にある。
さらに、ある程度標高の高い場所でないといけないので、山の山頂付近が狙い目だ。
もちろんそこまで深い場所に入ると危険が多いので、採取できる人は少ないし月光草自体の情報が世の中に出回っていない。
知る人ぞ知る秘薬といっていいだろう。
今回はその秘薬となる月光草が必要なので、遠慮なく集める。
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