第六話 第二門
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ネイルが生まれて一年が経った。
俺も三歳になり、できることも増えてきた。
しかし、ネイアが生まれてヴィヘイムが訪ねてきた時のことは忘れない。
それだけの衝撃だったのだ。
それはヴィヘイムが馬車に乗り、いよいよ王都へ帰ろうかという時に起こった。
突如こちらを振り返り、俺を呼びつけた。
そして、顔を覗き込んできて笑ったのだ。
それは優しいほほ笑みではなく、下ごごろ満載の卑しいものであった。
まさか男である俺が、下ごごろをこんなにもぶつけられるとは思わず、背筋が凍ったのを覚えている。
解放された俺は、ヴィヘイムがいなくなった後思わず両親に抱き着き泣いてしまった。
精神年齢には自信のあった俺だが、体の反応には抗えないようで、感情の爆発を抑えられないようだ。
むしろヴィヘイムが居なくなるまでよく我慢できたと思う。
だが、これでまたヴィヘイムはしばらくやってこない。
それは今の俺にとって一番ありがたいことでもあった。
というのも、最近やっと魔力を操ることに成功した。
レジェイネや両親のように火を出したりなど、魔法の具現化はできていないのだが、体内に魔力を巡らし、自分の好きなように魔力線を走らせることができる。
その際魔法陣を形成し、その魔法陣がトンネルのような役割で魔力を通している。
この魔法陣がなければ魔力の速度や、量の調整ができない。
そして今日は、その魔法陣に対して試したいことがあった。
(魔法陣を形成……そこに同じような魔法陣をさらに形成)
今まで右腕に一つしか作っていなかった魔法陣を、左腕に二つ目を作ってみたのだ。
(おお! これは、全部の魔力を自由に操れる全能感!)
体内を魔力が巡り、隅々まで循環している。
その効果なのか、立つ足に力が漲っているように感じる。
恐らく、地球基準の三歳児に比べると力強く歩けると思う。
自分の体内では自由に魔力を操れるが、未だ魔法の具現化には至らない。
それはレジェイネを観察しても分からなかった。
恐らく、魔法陣がカギなのだが、レジェイネの使う火を灯す魔法陣が見えないので、手探りで調べているのだ。
レジェイネが魔法を使うとき、なんとなく腕に魔法陣があることはわかるのだが、その紋様が確認できないのだ。
(今使っている紋様を小さくできないかな?)
俺が使っている紋様は隙間が多く、まだ余裕があるような気がした。
試しに魔力を流し込み、魔法陣を包み込むようにして圧縮してみる。
(おお! 小さくなった! ということは二つ目いけるか?)
余裕のできた部分にもう一つ魔法陣を形成してみる。
(ん? 別に魔力に変化はないか)
魔法陣を増やすことはできた。
だが、魔力量が増えたり、魔力を巡らす速度に変化が出たりはしない。
(魔法陣で魔力をコントロールしている……ということは、魔力量はその人の才能になるのか?)
なんとなく魔法陣の役割は理解できた。
火に変換したり、威力を調整したり、魔力を操る役割が魔法陣。
そのエネルギー元が魔力。
ならば、そのエネルギー元となっている魔力を増やすことができれば、色々な魔法が使えるようになるのでは?
そして俺は魔力が増える方法を知っている。
(第二門解!)
左脳部分にある第二門を解放する。
今までは増えすぎる魔力量のせいで体に負担がかかり過ぎていた。
なので魔力門の解放は避けてきたのだが、魔力コントロールに余裕のできた今ならいける気がした。
(くっ! まだキツイか!)
魔力線に奔流してくる魔力。
魔力の通る道が狭いといわんばかりに押し広げてくる。
だが、なんとか耐えて見せる。
前の時のように抗うことさえ出来ないほどの圧力ではない。
「はぁはぁはぁ」
息遣いが荒くなり、汗も出てきた。
それと同時に立っていられなくなり、膝をつく。
「マジかよ。こんなキツイのか」
頭痛や吐き気もしてきた。
どうしようもない苦しみを、少しでも紛らわそうと髪を掻き乱す。
地獄のような苦しみだが、数分なのか数十分なのか時間の感覚がなくなる頃、窓辺から見える夕日が目に入ってきた。
(綺麗だな)
朦朧とした意識のせいで自分がどこにいるかもわからなくなってしまっていたが、夕日のお陰か、意識が覚醒したことを認識する。
右手を顔の前に持っていきまじまじと見つめる。
(やっぱり! 太くなってる!)
魔力線が成長している。
それと同時に魔力も増えているようだ。
今は魔力門が開いているわけではないので、基礎的な魔力が増えたことになる。
では、この状態で魔力門を開くとどうなるのか?
試しに第一門を解放する。
(おお! 前より魔力が増えている!)
さらなる魔力の増加。
新しい魔力門を開くと己の魔力総量が増えると同時に、身体への負担で苦痛が伴う。
だが、それを乗り越えるメリットは大きい。
第二門を解放できた今ではすでに両親の魔力線の太さを超えるまでになった。
さらには、二度目以降の第一門や第二門の解放では一時的な魔力強化が確認できた。
これは、もしかしたら最強のエンジンを積んでいるような状態なのではないだろうか?
三歳で大人を超える魔力量は異常なはずだ。
なので、このことは周りにばれないように配慮し、魔法について情報を集める必要がありそうだ。
ゲーム時代のように、コマンドを選んで使うものではないだろうから。
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