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第十五話 師匠

作中最強キャラマーリン。


そんな彼女と訓練とはいえ戦った俺……。


結果は完敗でした。


こんな化け物に勝とうなんて無理無理。


こっちの有効手段として使える弓は全部叩き落とされるし、幻影魔法で翻弄されるしでこちらのターンが一切こないのだ。


綺麗な完封負けである。

まあ、今から師匠になって貰おうとしている人物なので、ここで俺に負けてもらったらそれはそれでどうなんだって話になる。


予定調和で終わった最終試験が終わり、マーリンが俺の前に座る……。

パンツ、見えそうなんですけど!


そんな無防備なマーリンが合否を告げる。


「小僧……合格だ」


ん? なんだか悔しそうに言われたぞ? それに合格? 俺は何もできずに終わったんだが……。


「なんだ不満か? お前はこの私が直々に魔法を教えてやろうと言っているのだ。光栄に思えよ?」


不満などあるはずもない。

むしろこちらからお願いしていたことなので、ありがたく合格を頂戴する。


「わかったならこっちへ来い」


近くへ来いと手招きされたので、素直に距離を詰める。


「もっとだ!」


手の届く程度で立ち止まったらマーリンはイラついたように俺の手を引っ張った。


「ぶへっ!」


これはもう近づくとかいうレベルではなく、抱きしめられていた。


「私は煩わしいのが嫌いだ。だから手加減などせんぞ?」


マーリンはまだ若い女性だ。俺はまだ幼いとはいえ男だし、前世の感覚が色濃く残っている。

そんな俺が女性の胸へと抱きしめられると、一瞬思考が停止する。

しかし、マーリンが忠告とも呼べる言葉を口にすると、次の瞬間には女性に抱きしめられていることなど吹っ飛んでしまっていた。


「があああああ!」


全身を襲う激痛だ。

マーリンンが何かをしたのは確かなのだが、それが何なのかはわからない。

ただ、マーリンに抱きしめられているとヤバいということだけはわかった。


「コラ! 逃げようとするな。魔法を使いたいんだろう? これが一番手っ取り早くお前の才能を開花させる方法なんだ! 我慢しろ!」


マーリンの叱責を受け俺は歯を食いしばる。

これを耐えたら魔法が使えると思ったら急に力が入った。


それに、こんな痛い思いをしているのだ、効果があるに決まっている。

もし何の効果も得られなかったといわれたら、俺は一生マーリンを信用しくなるだろう。

全身を襲う激痛を数分耐え、ようやくマーリンが離れる。


「うんうん。やはりお前は生き延びたか、普通なら死ぬんだがな」


死ぬようなことを初対面の相手にやらないようにして欲しい。


「ゴホッゴホッ! 本当に死んだらどうするんだよ。もしかして弟子入り志願者みんなにこれやってるのか!」

「安心しろ、こんなことをやったのはお前が初めてだ」

「え……」

「喜べ、お前がこの大魔導士マーリンの初弟子だ」


口紅で真っ赤に染めた唇に指をあて、ウィンクをかましてきた魔女を思わずぶん殴りたくなった。

弟子入りの基準があまりにも厳しすぎる! 色んな奴に言い寄られた経験があるのだろうが、いくらんなでもやりすぎである。


「早速始めるぞ。文句があるならいつでも破門だからな」

「ぐっ!」


体中に痛みが残る中でいきなりすぎると文句を言いたかったが、破門という言葉を聞いて口を噤む。


「お前のその痛みは決して無駄ではないぞ? それなりの効果は保証してやろう。『ファイア』と唱えてみろ」

「『ファイア』」


マーリンに言われた通りの言葉を口にしてみた。

すると、自分の目の前に鬼火のようなものが出現した。


「うわっ!」


言葉の意味からして炎が出てくるとは思っていたが、いきなり目の前に現れるとは思ってもいなかった。


「お前に私の魔力を移植した。これで基本となる魔法は全て使えるはずだ」


なんだこの人すご過ぎないか? 魔力を移植? そんなことしてマーリンは大丈夫なのか?

俺が心配してマーリンの顔を見ると、手をこちらへ伸ばしてきて頭の上に乗せてきた。


「心配するな。移植といっても、お前と私の魔力が共通化されただけだ。私の力はなくならんよ」

「魔力の共通化?」


それは一体なんなのだろう……考えてもわからなさそうなので、いつもやっている自分の魔力を感じる作業を行ってみる。


「うわっ!」


再び驚いた声をあげてしまった。


「お前、魔力を自分の体内で自由に巡らせているのか? はははっ! 私の眼は間違いなかったようだ」


マーリンが気づいたように、自分の魔力を体内で巡らせてみた。

すると、今までなかった魔力が新たに現れたのだ。

己の魔力は薄い青……水色といってもいいかもしれない。そんな色だったのだが、それに絡むよう濃い赤色の魔力が巡っていたのだ。


「クククッ。これは生半可に鍛えるのは勿体ないな。それに、全力で叩いても壊れなさそうだしな……まあ壊れたら壊れたでいいか」


おい! 壊れたら壊れたでいいってどういうことだよ!

不穏な言葉を皮切りに、俺とマーリンの修行が始まった。


お読みいただきありがとうございます!

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