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既成事実を作ろうとする、美人義姉妹が今日も可愛い  作者: 北森青乃


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38/50

突撃お嬢様

 



 学校の帰り道。俺は言いようのない疲労感に襲われていた。


 身体的疲労ではない。どちらかと言えば精神的疲労だろうか?

 いや、精神的疲労から来る身体的疲労……って、この際どっちでもいい。


 ともかく、今の俺の状況は芳しくない。

 男子に聞かれれば馬鹿にされるだろう。

 女子に見られればドン引きされるだろう。


 そうだ、俺は今……絶賛テントが張りっぱなしなのである。

 鞄で何気なく隠してはいるものの、その苦しみは計り知れない。


 くっ……まさかこんな事になるとは……

 色々な疑問はあるだろう。なぜテントが張りっぱなしなのか。


 その理由は一重に美由しか当てはまらない。

 ある意味本性を現した美由は、俺に対してかなりナチュラルに積極的な行動をとるようになった。

 別に家では問題ない。いや、厳密に言えばあるけど……問題はそこじゃない。ずばり学校でも、いつも以上にそういう行動が多くなった。


 程良い話し方。程良いボディタッチ。程良く甘える。

 そして誰も居ない屋上。

 1度許してしまった以上、断れる事も出来ないんだけど……それ以上に、今までの知っている美由とは違う雰囲気に、俺自身が変に感じてしまっている。


 その結果がこれだ。

 とはいえ、男ならもっとも効果的な対処法を知っているはず。もちろん俺だって知ってはいる。


 そう、この状況を生み出した原因は1つじゃない。

 ずばり自由な空間と時間が……限りなくなくなった事だ。


 シモな話をすると、俺が自家発電をしていたのは多くが夜。しかし現状……夜には2人のどちらか、または両方が居るんだ。つまり何もできない。かといって、眠気には勝てないからそのまま寝てしまうと、朝には元気なテント。


 そのままシャワーでも浴びて、こっそり致そうとしても……あの2人、俺が起きたのをどうやって察知しているのか分からないけど、直ぐ洗面台まで来やがる。挙句の果てに、


『一緒に入っていい~?』


 なんて言うもんだから、致すまもなく終了せざるを得ない。


 そんな状況で、今に至る訳で……正直事態は想像以上だ。

 ぐぅ……ヤバい。


 次に希望を感じる時間はお風呂の時間。だけど自主練終わって帰ると、直ぐに2人が帰ってくるタイミング。

 乱入されない様にそそくさと入ってたから……時間がなかった。


 とはいえ、学校でさえこんな状況になるという事は、想像以上に我慢の限界が近い現れ。という事で、今日の俺は一目散に家に帰り、自主練を休み……お風呂に入ろうとしているっ!!


 この時間帯なら、あの2人は部活中。美耶さんが乱入ってパターンも考えられるけど、2人よりは可能性は低い。

 だから……帰るぞっ!


 なんて、決意も新たに歩みを進める俺。気が付けばゴールはあと少し。

 あと少しで念願の……そんな嬉しさがこみあげてきた時だった。


「あっ、天女目さんっ!」


 不意に聞こえてきたのは……透き通るような声。


 んっ? まさか、この声……

 一抹の予感を感じながら視線を向けると、脇道の所に立っていたのは……


「烏真さん!?」


 お清楚お嬢様だった。

 なっ、なぜ? このタイミングの悪い時に!?


 本来であれば、その澄み切った声と姿に癒されている所。ただ、今日にしてみれば、その登場はタイミングが悪い言いようがなかった。

 しかも、今の俺にとって最悪な事がもう1つ。


「おっ、お久しぶりです!」

「そっ、そうだね。って、その恰好……」

「あっ、その……変ですか?」


 いつもの制服姿ではなく、なんとテニスウェアに身を包んでいた事だった。

 なっ、なんだと!? 白と水色のテニスウェアに、青のスコート!? これじゃあ制服の時より体のラインが丸見えじゃないか!


 てか、腕細っ! 足長っ! 色白っ! 身長は桐生院先輩の方が高いけど、十分モデルとしても行けるんじゃないか?

 胸も程よく……お尻のラインも……って!! 最悪なタイミングで、最悪な恰好で来たもんだね!? 烏真さんっ!


「そっ、そんな事ないよ! 似合ってる」

「よっ、良かった……あの、天女目さん? これから自主練ですよね? もしよかったらお付き合いさせてくれませんか?」


 なっ、そういう事か! だから万全なテニス姿。しかもラケットも持参とは……ぐっ!

 けど、今日は……今日は……


「えっと……」

「あっ……もしかして私、自主練習のお邪魔でしょうか」


 うおっ! 止めてくれ! その顔で、その声でこっち見るのは反則だって!

 しかもお嬢様泣かせてるって背徳感がすごいんですけど!?


 しっ、仕方ない。ちょっと軽めに早めに終わらせれば大丈夫かな。うん。それなら烏真さんも悲しむことは無いだろう。

 となればとりあえず、一旦着替えに行こう。


「何言ってるんだよ。嬉しいよ。じゃあとりあえず、家に行って着替えてもいいかな?」

「はっ、はいっ!」


 俺はそう言いながら徐に歩き出すと、烏真さんはその横を静かについてくる。

 正直、この距離感も良い匂いがしてなかなかヤバい。それにチラチラ視界に入るテニスウェアの格好も、とにかくマズい。何気ない会話をしつつ、視線を前にだな。


 頭の中で、何度も冷静冷静という文字が駆け巡る中、俺はひたすら前を向いて歩き続けた。

 よし、あと少しで家。


「あそこ家だからさ? 烏真さんも中入って待ってて?」

「えっ!? お邪魔しても良いんですか?」


「外で待たせるわけにはいかないだろ?」

「あっ、ありがとうございますっ!」


 ふぅ、あと少し。集中切らすな……って、前からトラック来た。ここら辺で工事でもしてるのか? 最近よく通るんだよな。ここ歩道ないし……


「烏真さん。トラック来たから、端に寄って? 俺を盾にする感じでさ」

「えっ? あっ、はい!」


 念の為だけど、これで大丈夫だな。


「ほら、女の子を車側に立たせるなっていう……」


 バシャ!!


 その時だった。顔面にぶつかる液体。冷たい何か。

 反射的に目を瞑ってしまい、なんとか目を開いた瞬間、まつげから零れる水滴。

 右半身に感じる冷たさと、シャツの張り付く感覚。


「なっ、天女目さんっ! 大丈夫ですか!?」


 えっと……あぁ、そこの水溜りですか? 結構なスピードで通ったもんで、水はねですか? 

 ははっ……


「だっ、大丈夫。烏真さんは大丈夫?」

「私は全然大丈夫です。天女目さんが目の前に居たので……」

「なら良かった。えっと、とりあえず……家行っても良いかな?」




 ★




 シャー


「はぁ……」


 お風呂場に響くシャワーと俺の声。

 その温かさが、今日は格別に気持ち良く感じる。とはいえ、まだ自主練前の前だ。


 あの水浴びから、俺と烏真さんは少し駆け足で家まで来た。

 烏真さんはなんか謝ってたけど、別に烏真さんのせいじゃない。気にするなとは言ったけど……どうだろう?


 とりあえず、家には美耶さんが居て……事情は話した。今はリビングで烏真さんと歓談中だろう。


『どうしたの? 空くん! まぁまぁとんだ災難ね? あら、このお嬢様は……あぁ! あなたが一華ちゃん? いつも美世がお世話になってます。ささっ、入って入って? 空くんは、とりあえずシャワーでも浴びて来るといいわよ? 体の芯まで水浸しみたいだし。私は一華さんとお話ししてるわ。それにしても、一華さん……綺麗で可愛いわね? …………あの子達もうかうか出来ないわね? ふふっ』


 最後、ぼそっと聞こえた言葉が本当にそうなのかは自信ないけど……何か企んでいそうな気はする。

 でも、美耶さんのコミュ力の高さは折り紙付きだし、問題ないだろう。


 さっさとシャワー浴びて……って、あれ?

 その時、俺はふと閃いた。このシャワーの時間、美耶さんは烏真さんと話してる。つまり、完全に安全な時間では? つまり……するなら今しかないのでは?


 その閃きは、我ながら天晴なものだった。

 そうと決まれば、早速……


「天女目さん?」


 なんて、いざ致そうとした瞬間だった。ドアの方から烏真さんの声が聞こえる。

 って、烏真さん? なんだ? 


「どうかした?」


 とりあえず、早々にリビングに戻ってもらって、さっさと致さないと……


「その……失礼します!」


 ガチャ


 それは余りにも突然の出来事だった。ドアが開いたかと思うと、目の前の鏡から見えたのは……バスタオル1枚の烏真さん。


 えっ? あの……


「おっ、お背中……」


 ん? その……お背中? しかもバスタオル1枚? あの……その下ってもしかして……


「流しに参りましたっ!」


 裸じゃないんですか!?




次話も宜しくお願いします<m(__)m>

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