隠れた花園 その2
……はぁ、色々とヤバかった。
「お疲れ様でした―」
「お疲れです―」
満足げにヨガ教室を後にする生徒達に軽く会釈しながら、俺は心底そう思っていた。
テレビなんかでしか見た事がなかったヨガ教室が、まさかここまで……色んな意味でヤバいとは思いもしなかった。
月城さんの教室に女性しか居ないのも理解できる。この中に混じる勇気もないし、居たらいたで正常な男子は耐えられない。
最後はマジで瞑想状態だったよ。
「ふふっ。どうだった? 空くん?」
「いっ、いや……体の至る所が伸びる感じで、痛かったです」
健全な男子としては最高な時間でした! なんて本音は言えないよ。
「普段使わない筋肉も動かすからねぇ。でも、意外とスポーツ選手にも人気なのよ?」
「えっ? そうなんですか?」
「それこそ、隅から隅まで伸ばすから稼働域が広がったりするみたいでね? テニスにも活用できるんじゃないかしら」
稼働域か……確かに言われてみればそういう気がしなくもない。
「確かにそうかもしれません」
「私のヨガ教室は主婦から小さい子まで大募集なんだけど、女性専用なのよね。けど……時間がある時はここ使っても良いからね? あと、ポーズなんかもレクチャーしてあげるわ」
「本当ですか? じゃあ今度是非お願いします」
「はいはーい。あっ、2人とも着替え終わったみたいね?」
差し支えない回答したけど、正直ヨガの効果には可能性を感じる。ただ月城さんと2人きりはヤバい気がする。せめて……
「はぁーサッパリしたぁ!」
「気持ち良かったですね。三葉先輩」
美由か美世ちゃん辺りが一緒じゃないと。
「待った? 空くん」
「いや、全然」
「ごめんね空くん。居心地悪かったわよね? でも日南先生到着したみたいだから診察OKよ」
「そんな事無いですよ月城さん。むしろ見学させていただいてありがとうございます」
「そうだね。体験させていただいてありがとうございます」
「いえいえ。こちらこそありがとう」
「いっその事、教室通っちゃえばいいんだよぉ。ねぇ? 恋さん」
「興味があるならウェルカムよ? 脂肪燃焼、姿勢矯正、美容効果も期待できるしね」
「えっ! 良いんですか?」
……おーい。女子会再開ですか?
「もちろん! 美耶さんも入ってるしね?」
「いやぁ、その大きなおっぱいがまた大きくなるのかぁ」
「なっ、何言ってるんですか三葉先輩!」
「いやいや、一緒にシャワー使ったけど、もう大きく大きくて。いっぱい触っちゃった」
「そっ、そんな事言うなら、三葉先輩の胸なんて綺麗で凄く整った理想的なお椀型じゃないですか。柔らかくもありハリもあるなんて……ずるいですよ?」
「まぁまぁ。若いっていいわねぇ」
……はい。ここに一応男居るんですが?
「ふふっ。じゃあ私も帰ろうかな? それじゃあ恋さんお疲れ様でした。美由ちゃんと空っちもまたね? っと、帰る前に……」
「えっ? ちょっ……あっ! みっ三葉先輩! いきなり揉まないで下さいよ」
「へへっ。ごめんごめん……って、んっ……」
「お返しです!」
「やったなぁ」
「ふふっ」
「ちょっと? そんな事してたら私も触ってみたくなるじゃないのっ」
……あの俺2階行きますよ? …………羨ましっ。
★
思わぬ体験を終え、若干の満足感と物足りなさを感じながらも、俺と美由は2階のサン&ムーンオフィスへと足を運んだ。
「うわぁ広いね」
なんて、初めて俺が来た時と同じ反応の美由の様子を見ながら、俺は日南先生の居る部屋まで歩いて行く。
それにしても、ここまで勝手に入って良いのか?
『今日は天女目くん、病院へ助っ人に行ってるけど、日南先生は居るから適当に入って良いよ。私、ここ片付けたら上行くし』
なんて月城さんは言ってたけど、本当に良いのか?まぁ、良いと言うんだからお言葉に甘えるけど。
「っと、着いたよ。この先が日南先生の診察室」
「なんか立派なドアだね。残りの2つのドアの先にも先生とかが居るの?」
「あぁ、そっちの右端の部屋は父さんの診察室らしい。真ん中は分からないな」
「へぇ、あとでこっそり入ってみようか」
それだけはやめとけ。男子の部屋に母さんが入ると同等の意味だぞ? 父さんに限ってそんな事態はないと思うけど……いやダメだ。考えれば考えるほど有り得そうな感じがする。
「それは止めとこう? やっぱ居る時に入らないと」
「冗談だよ。まぁ空みたいに如何わしい雑誌はないと思うけどね?」
雑誌……だと? まさかベッドの下に隠している秘蔵のグラビア雑誌の存在を知っているのか?
「はっ? なんでそれを……」
「えっ? あるの? 冗談で言ったんだけど……」
はっ、嵌められた!!
「俺だって冗談に決まってるだろ? どんな反応するか見てみたかっただけだ」
「本当かなぁ?」
「本当だよ」
「もう。溜まってるなら、いつでも体貸してあげるのに」
「なっ、何言ってるんだよ。先生待たせるのもあれだし、行くぞ?」
「ご注文お待ちしてます。24時間受け付け可能だからね?」
「そっ、そう言う事を軽々しく言わないのっ! じゃあ行くからな?」
「ふふっ。はいどうぞ」
ったく、こんな会話他の人が聞いてたらどうするんだよ。とりあえず先生をこれ以上待たせるのはマズイ。
コンコン
「はーい」
「失礼します」
ドアをノックすると、前と同じように先生の声が聞こえた。俺はその声を聞き届けると、ゆっくりと診察室へと入って行く。
するとどうだろう。前と同じ様に椅子に座る白衣の女性が、くるりと向きを変えてこっちを向いた。
相変わらずの合法巨乳ロリ、日南先生の登場だ。
「こんにちわ日南先生。宜しくお願いします」
「はいよー。いやごめんね。所用で遅くなっちゃって。っと? あれ? 隣の可愛い子は……」
「はっ、初めまして! 空くんの姉の……天女目美由と言います!」
「姉……? そうかそうか。えっとじゃあ、まず空くん。名前で呼んで欲しいと言ったよね? 若さを保つには、まず呼び方からなんだよ」
「えっ? あっ、すいません。詩乃先生」
「あと、美由ちゃん?」
「はっ、はい?」
「初めまして。私は日南詩乃と言います。空くんの肘の様子をサポートしてる訳だけど、安心して? 疑うような事はしてないからね?」
「えっ、わっ私そんな事……」
「ふふっ。そっか。なら良いんだよ。これからも宜しくね?」
「はっ、はい!」
……出たよ。詩乃先生の何でも知っているオーラ。前に診断を受けながら色々聞かれたもんな。気まずい質問もあって、何気なく嘘ついたらあんな感じで詰められたもん。
けど、先生? 先生の様な女性の前で、週の自家発電の回数はなかなか言えないって。思い出すだけで恥ずかしい。
「まぁ、今日は見学の方が居るけど……普段通り診察するから。宜しくね?」
★
その後、まさにその言葉の通りに先生の診察は始まった。
流石に上半身は裸にされなかったけど、肘から全体の動きを確認しつつ、練習メニューの報告。気になった所なんかを話していった。
あとは簡単にマッサージをしながら雑談。意外と美由と波長が合うらしく、後半は殆ど女子の会話で盛り上がっていた。ここでも置いてけぼりだったのは想定外だったよ。
「よっと! じゃあ今日の診断はおしまい。来週もこの時間帯で大丈夫かな?」
「はい大丈夫です。ありがとうございました」
「とんでもない。あっ、美由ちゃん? さっきチア部に入ってるって言ってたけど……良かったら簡単に診察しようか?」
「えっ? 良いんですか?」
「もちろん。美由ちゃんは可愛いからね」
「ありがとうございます!」
…………あれ? なんで2人して俺の方見てるんですか? あぁそうですか、さっさと椅子から立てと。
「よっと。はいよ」
「よっこいしょ。じゃあ詩乃さん! 宜しくお願いします」
「了解了解。いやはや、間近で見れば見るほど大きなおっぱいだなぁ。若いからハリが凄いよ」
「そんなぁ。詩乃さんの方が大きいじゃないですか。大人の色気が羨ましいです」
「ふふっ、ありがとう。じゃあ初診って事で、上のシャツ脱いでもらおうかな」
「はっ、恥ずかしいな」
「女同士なんだし、気にしない気にしない」
はぁ……なんだろう。引き合わせた瞬間バチバチのバトルが始まるかと内心ドキドキしてたんだけど、めちゃくちゃ意気投合してないか?
…………って? あれ? なんでまた2人して俺の事を?
「空くん? 今から美由ちゃんの診察をするんだけど、Tシャツを脱いでもらおうと思ってる。つまりその……ブラジャー及び、たわわなおっぱいを見たいのかな?」
「もう、見たいなら素直に言ってくれたらいいのに。先生? 私は全然……」
なっ!!! そう言う事かよ!
「外で待ってます!」
ガチャ
あぶねぇ。想像以上の2人の仲良し雰囲気に、安心しきってた。流石にあれ以上見る訳にはいかないよ。
けど、これで詩乃先生の無害さは美由にも伝わったよな? 美世ちゃんにも伝わる事だろうし、何とか一安心……
「あっ、あぁ……しっ、詩乃さ……ん……」
「んっ、そこは……そっ、そこは……」
ちょっと待ってくれ? あの詩乃先生? 美由? 一体診察室で……
「あぁ……んっ! だっ、だめぇ……」
何してるんですかっ!!
次話も宜しくお願いします<m(__)m>




