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既成事実を作ろうとする、美人義姉妹が今日も可愛い  作者: 北森青乃


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18/50

火照りと汗とお清楚

 



 家から少し歩いた場所にある河川敷。

 その高架下。黒い汚れの目立つ壁。


 それを目の前にし、これまた懐かしい感覚に襲われる。

 服装は、長らくタンスにしまっていたTシャツ短パン。右手にはラケット、左手にはテニスボール。


「よし……やるか」


 右手の感じる衝撃、響くボールの音。

 それらを全身で感じる度に、まるであの時の……数年前の自分に戻ったかのように嬉しくなる。


 俺……またテニスしてる。いや、また始めるんだ。


 この場所は、良く1人で壁打ちしていた場所だ。俺としては絶好の自主練場所だと思うけど、意外にも俺と同じ考えの人は近所に居ないらしい。人通りもなく、かなり集中もできるのに。


 まぁ、この近くの人なら舞松《まいまつ》公園のテニスコート行くか。舞松公園、前に美世ちゃんと久しぶりに行った場所。そりゃこんな殺風景な所より、何面もテニスコートある方に行くよな。


 でも、俺はこの場所が好きだ。なんたって、相手は世界で1番強い相手。

 そんな相手を前に、思う存分無制限で戦う事が出来るのだから。


 トンッ

 トンッ


 流石にミスしない相手だ。むしろこっちが体勢崩したら、次の自分にその代償が帰って来る。なるべく真ん中意識しろ……体勢崩しても。


 今のところ、フォアハンドは良い感じだ。痛みもない。

 問題はバックハンドかな? 


「よっと」


 打ち込む回数が少ないからか、久しぶりからなのか……フォアもバックも痛みはない。

 ただ、日南先生言ってたな……って、ヤバッ。昨日の事思い出しちゃったわ。




『ふむふむ。しなやかな筋肉だねぇ』


 明らかに真剣に体を見てくれている日南先生。けど、俺としては……まったくもって集中出来なかった。


 くっ……所々でむっ、胸が当たってるんですけど!?

 念入りに体を見てくれてはいるが、その距離はめちゃくちゃ近い。つまりその小玉のスイカ以上の大きさで、マシュマロの様な柔らかさが俺の腕やら背中やらに直撃。


 見知った仲であり、若干の耐性が付いて来たであろう美由、美世ちゃんとは違い……全くの初対面の人にやられると、何ともヤバい。


『でも、やっぱり下半身に比べると上半身の筋肉量が若干少ないかな?』


 うっ! しゃがんで足触らないでくれます? 

 直で谷間が……ってヤバっ!! 流石にもう……てっテントが張り裂けそうなんですけど!? だっ、ダメだ。誤魔化さな……


『ふむふむ……って、あっ……』


 あっ、バレた……

 初対面でこんな姿とかっ! ただの変態高校生じゃないかっ!!


『すっ、すいません』

『何言ってるの? 生理現象だし、むしろ健全な高校生の証拠だよ? でも、ここまで反応してくれると、私もまだまだイケるんだって自信が付いちゃった』


『いやっ、その……先生は美人ですよ。というか可愛らしいというか』

『ふふっ。ありがとっ。でも、これじゃ流石に空くんが診察に集中出来ないよね? 今度から私も服装には気を付けるね?』


 えっ? 服装……あれ? なんだろ? そう言われるとなんだか勿体ないような、残念な気持ちになるんですが……


『えっ……』

『つい癖で、このくらいダルんとした服しかないんだよねぇ。高校生くらいの年頃男子なんて身近には弟くらいしか居ないし……ごめんね?』

『いっ、いえ。でも俺なんかの為にわざわざ服を新調する必要はないですって』


 って、何言ってんだよ俺。けど何気なく良い言い訳じゃね?


『本当? ふふっ、優しいんだねぇ空くんは』

『そっ、そんな事無いですよ』


『じゃあ、今度は……下半身を確認したいから、ズボン脱いでもらおうかな?』

『えぇ!?』




 ガツッ


 あっ、やべっ! フレームに当たってボールが……


「はぁ……はぁ……大体10分で終了か……」


 余計な事思い出しちゃったよ。ったく、集中力も落ちたなぁ。


 結局、ズボンは脱がされなかったけど……なんか終始からかわれてる感じだったな。そういえば弟さん居るみたいだし、あんな感じで接してるのかも。


 でも、診察の雰囲気はガチだった。


 再開するのは良いけど、最初から飛ばすのはダメ。

 徐々に練習量を増やす事。

 あと、運動後のマッサージを欠かさない事。

 出来れば週に1度は来て欲しい。


 あと……


『マッサージとか専門家が居れば鬼に金棒なんだけどね? 心当たりある人はちょっと留守中だし……とにかく私の出来る範囲でその辺もカバーするね?』


 心当たりあるって凄いな? 父さんに聞いたら、サン&ムーンにはもう1人整体師の人が居るらしい。なんでも柔道整復師やら、あん摩マッサージ指圧師といった国家資格はもちろん、その他民間の資格も数多く所有しているみたいだ。


 ……こうしてみると、なんて場所なんだ? サン&ムーンって。トレーナーズカンパニーらしいけど恐ろしいな。


 って事で、初日はこの位にして帰りますか。


 そんなこんなで後片付けをし、河川敷から遊歩道へと登った時だった。


「えっ? あっ! 天女目さん?」


 どこからともなく、透き通るような声が聞こえて来る。

 ん?


 思わず振り返ると、そこには……1度見たら忘れない容姿の女の子が立っていた。

 黒髪で緩いパーマ。そして緑の大きなリボン。


 それはまさしく、


「あれ? 烏真さん?」


 お清楚お嬢様、烏丸一華さんで間違いない。


「こっ、こんにちわ! まっ、まさかこんな所でお会いできるとは!」

「そうだね。俺も驚いたよ」


「あっ! あの、この前はありがとうございました! あと、お礼すると約束して何の連絡も出来てなくてすいませんっ!」

「いやいや、全然気にしてないって」


 ……やっぱ反応がいちいち可愛いよな? 


「そんな事……あの、美世ちゃんにもお礼は言いましたし、お兄様に改めてお礼をしたいという趣旨も承諾得ております」

「承諾って、なんか一気に仰々しいな。もっと軽い感じで大丈夫だよ? 美世ちゃんの友達なんだからさ?」


「ごっ、ごめんなさい。善処します」

「ははっ」


「とっ、ところで……テニスされてたんですか?」

「そうだよ? 自主練ってやつかな? そういえば烏真さんはどうしてここを? もしかして帰り道?」


「はっ、はい! この遊歩道をず~っと行くと家が近いんです」

「そうなんだ」


 歩きなのか? ……車で送迎ってイメージが拭えないんだけど。


「あっ、天女目さん? その格好という事は、もう帰宅されたんですよね?」

「うん。そうだよ」


「そしてテニス……さっき自主練してると仰ってましたよね?」

「まぁ軽くだけどね」


「あの……もし宜しければで良いんですが、今からあの時のお礼させていただいても良いですか?」

「えっ、お礼? 今から?」


「はい。自主練……相手が居た方が良いのではないかと思いまして」

「相手って……?」


 相手? もしかして……


「嗜む程度ですが、私もテニスが出来ますので……ラリーの相手なら務まるかと」

「えっ? それってつまり……」

「はい! この近くにテニスコートがある公園があります。ですから思う存分テニスの練習にお付き合い致します」


 いや、マジか? ここで会ったのにも驚いたし、テニスが出来るのも驚いた。でもいいのか? このお清楚お嬢様だぞ?


「でっ、でも家に帰る時間とか……」

「そんなのは、ストメで大丈夫です! どうですか? 天女目さん!」


 って圧がすごっ! そういえば、なんか決めた事は曲げない感じの雰囲気は前もあったよな? 礼儀を重んじるというか……


「どうでしょう!?」


 なんかあの時を同じ空気感だ。

 こうなると断るのは……


「いかがですか!? 天女目さんっ!!」


 絶対難しいんだよなぁ……




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