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リーフェルニア領の戦い⑥

 ガウェインが一騎討ちにて勝利を収めた一方で、レオナルドとゴラウンの戦闘は未だに続いていた。

 戦いは苛烈さを増し、気が付けば館を離れ、近くの林の中へと突入していた。

 

「おおおっ!」

「くっ、まずい……この林の中は罠が……!」


 つばぜり合いをしながら、レオナルドの腕力に押し込まれる形で林の中に誘導されたゴラウンは焦りを感じる。

 林の中には先刻煮え湯を飲まされた誘眠茸があるのだ。

 さすがのゴラウンもこれを受けては眠りに落ちてしまう。


(しかし条件は相手も同じ筈だ……! 敵に地の利があるとは言え、戦闘中に足下を気にする余裕は無いだろう)


 誘眠茸はおそらくはランダムな位置にあり、地の利があるとはいえその位置全てを把握するのは不可能に近く、お互い周囲に気を配らざるを得ないだろう、とゴラウンは予測を立てる。

 しかしその予測とは裏腹に、レオナルドの動きは鈍ることはなく、むしろ積極的に攻撃を仕掛けている節さえある。


「まさか、罠の場所を全て把握していると言うのか……!? いや、違うな……全く気にしていない……のか?」


 レオナルドの視線は常にゴラウンを捉えており、周囲の状況など歯牙にもかけていない。

 その時、レオナルドが誘眠茸を踏み抜き、胞子が辺りに充満した。


「捨て身の戦法であったか……しかし、これで決着のようだな」


 素早く胞子から距離を取り、ひょんなことから決着が着いてしまったことに拍子抜けしてしまったゴラウンは、構えを解き、リューグやその他の部下達を心配し、館のある方向へと振り向く。

 その刹那、闘気を感じたゴラウンは、未だ胞子が舞う方へと向き直る。


「せぇぇぇいっ!」

「なっ! ぐうっ!」


 向き直った時には既にレオナルドは眼前まで迫っており、ゴラウンは対応しきれずに左腕に大剣の一撃を受けてしまう。

 焦り腕の状態を確認するが、剣の一撃を受けたにも関わらず、切断されてはいなかった。

 しかし攻撃を受けた箇所は赤黒く腫れ上がっており、まともに動かすことは叶わない。恐らくは骨折、軽くても骨にヒビがあるなど、戦闘にかなり影響があるだろう。

 

「すまんな。奇襲(こういうの)は我輩の趣向に合わないのだが、状況が状況だ。悪く思わんでくれ」

「ぐっ……胞子を無効化する手段があったとはな……いや、それを想定出来なかった私の失態だな」

「我が領地には優秀な錬金術師がいるのだ、状態異常を無効化するポーションを作るぐらい訳はないさ」


 そんなわけないだろう、とゴラウンは心の中で愚痴をこぼす。

 状態異常を予防できるポーションなど超が付くレベルの高級品だ、それをこのような僻地で作成できる人物がいるなどとは到底思えない。

 だがゴラウンにはそれよりも気掛かりなことがあった。


「……刃を潰していたのか? 敵に情けをかけるとは、随分と甘いな」


 思い返せばレオナルドの攻撃は手足などを狙ったものが多かった。

 元々殺すつもりはなかったのだろう。


「心優しい娘を持つと、親は苦労するものさ」

「何……? どういう意味――――」


 瞬間、ゴラウンの背筋に冷たいものが走る。


「この感覚……どうやら最悪の事態に陥ったようだな」

「何? どういうことだ? 妙な圧力を感じるが、何か関係があるのか?」

「……こうなってしまえば間違いなく死ぬ。お前達はおろか、我々も含むこの近辺にいる全員がだ」

「いったい何なんだ、説明しろ!」

「触れてはいけないものに触れてしまった。ただそれだけだ」


 ゴラウンの要領を得ない説明に、レオナルドは怪訝な表情になる。

 しかし、ゴラウンの言葉が何を意味するのかは、時を待たずして知ることとなる。

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