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魔王軍元四天王vs四天王最強③

「テメェ……どうしてそんなに平然としてやがる?」

「さて、どうしてかな? お前の炎が俺には届かなかった、ただそれだけだ」


 アース自身に炎への耐性はないので、もちろん理由はある。

 アースの今着ている衣服、見た目こそいつも着ている使用人の服と同じであるが、ここ数日で対フレアルド用に新たにこしらえた特製品だ。


 火山地帯に生息する、熱エネルギーを吸収する特性を持つ『ポプモア草』。

 そして深海に生息する植物で、炎に対して有効な属性である水属性の濃密な魔力を多分に含んだ『貯水草』。

 更には、熱せられるとそれに比例して冷たくなる鉱石『不溶鉱』。

 

 通常であれば加工は困難で、服に使うなど土台無理な素材なのだが、アースの能力で線維状に加工し、それら3種を絶妙な配合率で服に仕立てたものが今アースの着ている服だ。

 炎や熱に対して高い耐性があり、受けた熱を蒸気として発散させる機能を備えている。


 ちなみに服を仕立てたのはマリアであり、駄目で元々の気持ちで緊急で用意してほしいと伝えたアースだったが、予想とは裏腹になんと2日で仕上げてしまったのだ。


(マリアには感謝してもしきれないな……この服がなければ先の攻撃で致命傷になっていたかもしれない)


「――ふざけるなァァァ!! どんな手を使ったかは知らねェが、そう何度も防げると思うなよ!」


 アースにしらを切られたことで、フレアルドの怒りは頂点へと達した。

 そしてフレアルドは腰を落とし、アースへ向かって手の平を突き出すと、拳大の火球がアースへと飛ぶ。

 次から次へと、両手を交互に連続で突き出し、火球の弾幕をアースへと浴びせる。


「オラララララァッ! くたばりやがれ!」


 百にも及ぶ火球の嵐によって爆炎に包まれたアースであったが、数が多い分一つ一つの威力はさほでもなく、それをものともせずに轟々と燃え広がる炎の中から飛び出す。

 アースは飛び出した勢いのまま、マジックバッグから新たな剣を取り出し、フレアルドへと肉薄する。


「フレアルドォォッ!」

「アァァースッ!」


 即座に対応したフレアルドの槍とアースの剣が激しくぶつかり合い、甲高い剣撃音が辺りに鳴り響いた。

 数秒の間鍔迫り合いが続くが、やはり単純な腕力ではフレアルドには敵わず、アースは少しづつ押し込まれていく。

 やがてアースの持つ剣が、せめぎ合う力に耐えきれずにひび割れ、悲鳴を上げ始める。


「くっ、やはり分が悪いか……『天地創造』!」


 アースが天与を使用すると、途端にアースの剣がぐにゃりと液体のように歪み、フレアルドの槍をすり抜けた。


「なっ!?」


 間髪を入れずに武器を再構築、小振りな金槌の形態を取る。

 フレアルドは込めていた力の行き先を失い、前のめりになっていた所に、アースはすかさず技を叩き込む。

 

「魔闘流戦槌術『天衝撃(てんしょうげき)』!」

「くそっ――たれがァ!」


 フレアルドの顎下を狙い、低く屈んだ後に、逆手に持った金槌を下から振り上げるようにして攻撃する。

 しかしフレアルドはその攻撃を避けきれないと見るや否や、自ら金槌へ向かって額を突き出すことでインパクトの瞬間をずらし、ダメージを軽減することに成功する。

 更には攻撃を受けながらも槍を操り、無理矢理な動きながらも、槍はアースの肩口を貫く。


「ぐあっ……! くっ、おぉぉぉっ!」


 アースの肩から大量の鮮血が舞う。

 相討ちと言いたいところであったが、頭部に打撃を受けたのはフレアルドにとってかなりの痛手だった。

 額が割れて出血し、目に血が滲むことで視界がぼやけ、更には脳震盪を起こし僅かにふらついてしまう。


「グッ……ガァ……!」


 そして、僅かなその隙をアースが逃す筈もなかった。


「これで終わりだ! フレアルド!」


 アースが使う魔闘流は、どんな状況、どんな武器でも戦えるようにと編み出された流派である。

 そして、その魔闘流の真髄である無手の格闘術、その奥義たる技の一つ。


「奥義――烈震勁(れっしんけい)!」


 以前コンクエスター家での戦いでアースが使用した技で、極限まで練った『気』を相手の体内に打ち込むことで

防御力を無視したダメージを与えることができる。

 しかしこの技を使うには数秒の溜めが必要であるので、相手に大きな隙がないと当てることは難しいのだが、今がその時、千載一遇の好機だ。


 肩の痛みをこらえ放ったアースの拳がフレアルドの腹部に触れる。


「ガッ……ぐあァァァッ!」


 フレアルドの体内でアースの放った気が、うねりながら大きくなっていき、やがて弾ける。

 フレアルドの巨体が宙へと舞い、そのまま地面へと落下した。

 

「――やったか?」


 アースは地に倒れ伏すフレアルドに近づいて様子を伺うが、動く気配はない。

 このまま止めを刺すこともできたのだろうが、アースとて、なにもかつての仲間であるフレアルドを殺したい程憎んでいるわけではない。

 冤罪をかけられたことや、魔王の暗殺に関しても、本当にフレアルドが仕組んだことかどうかはアースにはわからないことであり、そのあたりの事情……特に協力者を確認するためにも殺すことはできない。


 アースはとりあえず、倒れたフレアルドを熱に強いポプモア草の線維で編まれた縄を使い、両手足を縛り拘束するにとどめる。


「こっちはなんとかなったか……結構な時間が経ってしまったが、街は無事だろうか……?」


 フレアルドを部隊と分断してから、少なくない時間が過ぎた。

 アースは、今頃は交戦中であろう街の方角を見つめ、マジックバッグよりポーションを取り出し、一息に飲み干したのだった。

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