いざ散策へ
魔王軍は帝都に向けて戦力を集中させているので、帝都から離れたこの街は、衛兵が多く見られるなど多少の慌ただしさは垣間見えるが、街の様子は平和そのものだった。
舞踏会を開催するぐらいだ、いつ攻められても大丈夫だと思う程度には兵力に自信があるのだろう。
アースがレオナルドから聞いた話では、コンクエスター公爵家は帝国貴族の中でも指折りの力を持つらしいので、それも当然なのかもしれない。
街の規模も未だ発展途上のリーフェルニア領とは比ぶべくもない。
すれ違う人々も皆裕福そうな服装をしており、生活水準の高さが伺える。
宿へと到着したアースとエレミアは御者と別れ、一息つくことになった。
舞踏会が開催されるのは今日の夕刻からなので、まだ日も高い時間なのでしばらく時間に余裕がある。
アースはリーフェルニア領以外の人間の街の様子に興味を持ち、エレミアに辺りの散策を提案する。
「なあ、エレミア。まだ舞踏会まで時間がある、少し辺りを散策してみないか?」
「アース……あなた自分の立場を理解してる? 魔族だってバレたら大変なことになるわよ?」
「い、いやしかしだな……せっかく知らない土地に来たのだから少しぐらいは……」
アースはリーフェルニア領以外の人間族の街に来たのは始めてだったので、知的好奇心が押さえきれそうになかった。
しかもこれだけ発展した街だ、見所は多いだろう。
多少出歩くぐらいなら問題ないだろうとアースは思っていたのだが、護衛対象を一人にするわけにもいかないので、エレミアに反対されてしまっては致し方ない。
「――もう、わかったわよ! そんな悲しそうな顔されたら私が悪者みたいじゃない……ドレスの着替えに時間かかるから少しだけよ?」
「本当か!? では早速出掛けるとしよう」
アースはエレミアの手を引き、意気揚々と市街地へ繰り出すのであった。




