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精錬

 アースが荷車を押す人々の流れを追いながら歩いていると、やや街から外れた所に大きな煙突の付いた立派な建物が佇んでいた。


「ここか? この街にはそこそこ滞在していたが、こんな施設を見たのは初めてだな……そうか、作業時に煙が大量に出るから街の外れにあるんだな。見かけないはずだ」


 一人で納得していると、アースが来たことに気が付いたコハクが声をかけてきた。


「おーい! あんちゃん戻ったんやな。お疲れさん! こんなとこでどないしたん?」


 建物の外で指示を出していたコハクが、手を振りながら

こちらへと近づいてくる。


「ああ、運ばれてきた鉱石に少し興味があってな。少し見せて貰ってもいいか?」


「おー、ええで。ちょうど一段落ついたとこや。付いてきなー」


 コハクに連れられ、アースは建物の中へと入っていく。

 搬入口だと思われる場所には、大量の鉱石が所狭しと並べられいた。


「ここが倉庫兼搬入口やな。素材やでかい道具なんかはここに置く予定や。いやー、それにしてもあの鉱山はほんまえげつないで! ウチらが行った洞窟と別の場所から採掘したんやけど、同じレベルの鉱石がゴロゴロしとったで!」


 並べられた鉱石はまだ精錬前ではあるが、怪しげな光を放つものや、燃える炎のような模様のものなど、その種類は様々である。

 その見た目から素人目にも希少性の高さを否応なしに感じられる。

 アース達がメタルイーターと遭遇した洞窟では、アダマンタイト、流砂鉄、絶魔鉱などを目にしたが、そのどれもが一級品として扱われる金属類である。

 それらと同レベルの希少性や性能を持つ鉱石が所狭しと並べられている光景は、見る人が見たら卒倒してしまうかもしれない。


「おお……すごいな。これはアダマンタイトだったか? 俺も本で読んだことはあるんだが実物を見たのは初めてだ。あの時は戦闘に集中していてよく観察できていなかったしな」


 アースの触れたその鉱石は鈍い光沢のある深い青色をしていた。

 現存している金属の中で最も硬いと言われている金属、アダマンタイトの鉱石である。


「せやでー、そのひと塊で家一個建てられるんちゃうかな? まぁでも熱にも強くて加工がめっちゃ難しくてな、ここの設備だとちょいときついかもなぁ……」


「そうか、それなら俺に任せてくれ。『天地創造(クリエイション)』」


 アースが『天与(ギフト)』を使うと、触れていた30センチ程のアダマンタイトの鉱石がアースの手の上に浮かび上がる。


「――なるほど、これがアダマンタイトの性質か。 ……不純物を分離。形状は……保管しやすいようインゴット状がいいな」


 アースが『天与』を発動し終えると、その手にはアダマンタイトとそれ以外の不純物で精錬されたインゴットが残った。


「――え? も、もしかしてそれってアダマンタイトだけを抽出したんか……?」


「ああ、そうだが……問題があったか?」


「いやいやいや! アダマンタイトは精錬するのに相応の設備と時間がかかんねんで! それを高純度なうえにこんな短時間だなんて……あんちゃんドワーフの国に行ったら神様扱いされるんちゃうか?」


「いや、さすがに神様は言いすぎじゃないか?」


 コハクの言うように、鉄と槌の国と呼ばれるドワーフの暮らす国では、アースのような能力を持つ者が居たのならば神様扱いを受けてもおかしくはない。

 実際にアダマンタイトをアースがやったような状態にするには一月以上の時間はかかるし、その間施設を稼働させるための費用だって相応にかかる。

 それをこの一瞬でやってのけたのだ、コハクの言うことも全くの嘘ではないだろう。

 

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