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注意すべき特性

 アースの報告を受け、完成したという畑を視察しに来たレオナルドと、興味本位で付き添って来たエレミアは目の前の光景に唖然とする。


「――いや、畑を作るのは構わないとは言ったが……まだ1時間も経っていないぞ? 畑の形を作るだけなら納得できたが、我輩の目がおかしくなければもう収穫が出来そうな様子なのだが……」


「――これ、レッドベリーかしら? 私が知っているものより大きくて甘い香りが強いわ……アース、一つ食べてもいい?」


 レオナルドはアースに畑を作る許可を出したものの、これ程までの短時間で収穫が出来るようになっているなどとは想像していなかった。

 エレミアに至ってはそんなことよりも、未知の食材に対して興味津々な様子だ。


「ああ、もう熟しているから食べても構わないぞ」


「やった! じゃあ……いただきます。――っ! あまーーい! 何これ美味しい……」


 手に取ったその果実は、エレミアが知るレッドベリーとは異なる大きさと匂いだった。

 口にすると芳醇な香りが鼻腔を駆け抜け、酸味がありつつも濃厚な甘味が舌を喜ばせる。

 もはや普通のレッドベリーとは似て非なるものだと言えた。


「気に入ってくれてよかった。食べてわかったと思うが、ここにある作物は全て収穫可能だ。というか収穫しないで放置すると少し厄介なことになる」

 

「フム、厄介事とは何が起こるんだ? 当然、放置すれば腐ってくるのだろうが……」


「それもあるが……ここの植物は俺が調整した特殊なものでな。魔力を養分として育つんだ。放置をすると土地の魔力を吸収し続けて土地を枯らしてしまう事になる」


 ファティライズポーションによる魔力供給が無くなると、土中や大気中の魔力を吸収し始めてしまう。

 通常の植物も成長の過程で同様に吸収するのだが、その量は微々たるものだ。

 しかし、アースの改良した植物の場合その吸収量は数十倍に及ぶ。

 その結果周囲の土地の魔力を吸い尽くし、植物も育たぬ不毛の地と化してしまうのだ。

 そのため、成長しきったら一度に全て収穫するのが適切である。

 

「なるほど、では収穫はこちらで手配しよう。エレミアの興奮ぶりを見るに高級食材として扱える代物だろう。最初の輸出品としては薬と合わせて申し分無いだろう。アースよ、よくやってくれた。感謝する」


「ああ、作り方や管理方法を共有するのでこの畑以外でも作れるようにしよう。大量生産する場合には特殊な薬品を使うので、その素材の手配を頼みたい」


「心得た。この果実と貴公が作った薬を売った資金で揃えるとしよう。いやあこれだけの物だ、商人ギルドの連中の驚く顔が楽しみだな! カッカッカ!」


 その頃エレミアはというと、話をそっちのけで他の種類の果実を味見して興奮していたのであった。

 後日、果実を使ったデザートの試作品が連日食卓に並び、アース達が胸焼けを起こしたのは言うまでもない。

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