第5話 初日から配属
「それでは、少し休憩しましょう。
切りが悪いので、午前中は此処までとします。
午後は1時から始めますので、それまでには此処に居てください。
本日の昼食はお弁当を用意してありますので、少々、お待ちください」
そう言って、磯島さんは会議室から出ていき、弁当とお茶を持って帰って来た。
弁当とお茶を配り終えると、磯島さんは会議室から出て行った。
「おい、一緒に食べようぜ」
難波に声を掛け、一緒に弁当を食べようと誘った。
「あぁ、いいよ。
と言うか、みんな一緒に食べよう」
難波が皆に向けて声を掛け、一か所に集まって弁当を食べ始める。
「それにしても、名刺渡すのってあんなに面倒だったんだな」
難波に話しかける。
「あぁ、最初に選ばれて災難だったよ、全く。
あんなに面倒なものなら、他の国のように笑って握手でお仕舞の方が楽で良いよな」
「文字を隠すなとか、先に出せとか、別に良いだろって感じだけどな」
「でも、相手は歳上ばかりだから、少しでもマウント取りたいんだろ?」
斎藤が会話に混ざってくる。
「それな」
田中が同意する。
「名刺何て無くなれば良いのに……」
「全くだな……」
難波の呟きに、俺も同意する。
「そう言えば、席が1つ空いていたよな? どうしたんだろうな?」
1つ空いていた席の事を、皆に聞いてみた。
「今まで空いていると言うことは、バックレたのかもしれないな」
斎藤が答える。
「遅刻して、来るに来られなくなったとか?」
難波が笑いながら言う。
「まさか、子供じゃあるまいし」
俺の言葉で、皆が笑った。
1時まで、そんな話をしながら会議室で待っていた。
1時になり、磯島さんが会議室へと帰って来た。
4人ほど先輩の社員と思われる人を引き連れて……
「え~、皆さん揃っていますね。
これから、皆さんには配属先へと移動していただきます。
こちらの方々は、皆さんの上司となる方で、連れて行ってもらってください」
(えっ? 入社初日から行くの? 研修は名刺交換だけ? 仕事の研修は無いの?)
俺の頭の中には、色々な疑問が生じていたのだが、そんなことはお構いなしとばかりに、田中が呼ばれ、斎藤が呼ばれと話はどんどん進んでいた。
頭の整理が出来ていないうちに、俺の名前が呼ばれた。
「水島君は、北地課長の下に配属となります」
「北地です、よろしく」
「水島です。
よろしくお願いします」
その後も、各々の配属先の上司が告げられた。
どうやら、俺は同期の居ない部署に1人放り込まれたらしい。
何とも言えない心細さが、全身を覆い尽くした。