第4話 送別会? それ、何て罰ゲーム?
「水島君の送別会だけど、最終日の定時後で良いかな?」
いつも通りに椅子ごとこちらに移動してきて、迫野さんが言った。
(え? 今、送別会って言った? しかも、最終日って言ったか?)
引継ぎ相手が決まって居ないから、最終日まで出てくることになりそうな状況だ。
それなのに迫野さんの中では、もう、最終日まで出勤してくることが決まっている様だった。
有給休暇とは、一体……
そのことは100歩譲って良いとしても、最終日に何が悲しくて一緒に飲まないといけないんだろうか? 迫野さん、大砂さん、北地課長はまだ良い。
中垣内さんとは遠慮しておきたい。
どうせ遅れてくるだろうけど、間違って中垣内さんが先に行ってようものなら、また何か一言言われるだろう。
最終日まで、気分的に嫌になるようなことは避けたい。
「済みません、その日は大学時代の友達と飲むって前から約束していたんですよ」
「大学時代の友達なら、キャンセルできるんじゃないの?」
「丁度、こっちに来ているみたいでして、次はいつ会えるか分かりませんので……済みません」
「ふ~ん、そうなんだ。
それじゃあ、仕方がないかな?」
「済みません」
近くにならないと皆の都合が分からないから、開催間近になると言うのは分かる。
分かるけど、断られること込みで考えて欲しい。
まぁ、今回はいつ言われても断っていたけどね。
大体、辞める会社の送別会なんて罰ゲームでしかない。
こっちとしては、後腐れなく、静かに速やかに辞めたいと思っている。
だから、有給休暇を使って「いつの間にかいなくなった」というのが理想でもある。
(送別会なんてやらなくても良いから、早く引継ぎ相手決めてくれないかな? このままだと、引き継がないで辞めることになるけど……)
もし、そうなったらそれまでだ。
俺としては、資料は期日までに用意した。
引継ぎの為の説明をするだけの時間もあった。
引継ぎ要員を用意しなかったのは、この会社の落ち度だ、辞めていく俺がその責任を被る必要は無いだろう。
(やる事やったら、何か吹っ切れて来たかも知れない)
有給休暇でフェードアウトは難しいかも知れないが、送別会を拒否したり、引継ぎのことだったり、終わりが見えたことにより色々と吹っ切れたのかも知れない。




