第1話 何かが違う……
(俺は……ずっとこのままなのかな?)
デバッグ作業をしながら、ふと、そんなことを考えた。
決して、バグの箇所が未だに掴めないからではないし、その事で現実逃避をしている訳でもない。
現実はいつも残酷だ。
そんなことを考え始めたら、悪い方向へしか考えが向かわない。
(金は……使う暇がないからある程度はあるけど……)
別に「これが欲しい」が無いから、口座の数字が減っていく値は毎月殆ど変わらない。
もし増やすとしたら、食費を増やして良いものや美味しいものを食べれば良いだろうけど、得てして、そう言う物は時間が掛かる。
フレンチでコース料理を食べる時間があるのなら、10秒チャージを食べながらデバッグしたい。
そうしたら、少しでも早く家に帰ることが出来る。
そもそも、そう言う所は正装しないと門前払いとなるだろうが、その正装を持っていない。
(まぁ、今度はユ〇ケルのプレミアムでも買ってみるかな……)
そうしたとしても、根本は何も解決していない。
このまま、会社に使い潰されるのかどうかと言うことだ。
(他の会社なら、もっと他の生活があったのかな?)
恋愛事も会社に入ってからは、とんと遠ざかっている。
社内恋愛? 女の子なんて居るわけがない。
漫画とかで社内恋愛で、社内でイチャイチャとかあるけど、あんなものはフィクションだから。
帰りが終電近くになったり徹夜があるような職場に、女の子何て居るわけがないから。
第一、法律で女性の深夜の一人作業は避けるってなっている以上、こんな職場に女の子が来るわけがない。
世間では『男女平等』とか言われているが、実際の世間は『面倒事は避ける』ように動く。
深夜にまで作業が及ぶかも知れない職場には、最初から配属しなければ何の問題も発生しない。
以前、「うちの部署には女の子が来ませんね」と言った時に、北地課長からの返答でその様に聞いた。
じゃあ、社外恋愛となるのだが、今の状況では客先に相手を求めることになる。
打ち合わせの相手は男性が殆どだし、俺はそっちの気はないので女の子が良い。
そもそも客先で恋愛対象として見られる女の子って、受付に居る女の子ぐらいだ。
そして、そういう子は大抵、相手が既にいる。
そもそも、出会いを求めて客先に行っているわけではないので、受付の女の子をじっくりと眺めるわけにもいかない。
(この業界に入ったこと自体が、間違いだったのかな?)
でも、北地課長も大砂さんも結婚している。
業界のせいにするのは間違っている。
だけど、何かのせいにしないとやっていられない程、弱ってきているのかも知れない……




