第9話 新しいガジェットは大好物
「迫野さん、電子メモ買ったんですか?」
「うん、ついに買っちゃった。
打ち合わせとかなら、こっちの方が良いかなと思ってね」
「ノートPCで良くないですか?」
「ノートだと打ち込むのが手間だったけど、こっちなら書いたものがそのまま残せるからね」
「へぇ、どの位残せるんですか?」
「確か7000ページ分だったと思う……」
「それ位あれば、そうそう困りませんね」
迫野さんが、以前から偶に口にしていた電子メモを購入してきた。
今日はその初日で、2人きりの製品レビュー会が行われていた。
「使い心地はどうですか?」
「そうだね、書く分には画面に引っ掛かったり滑り過ぎずだから、悪くないと思うよ」
「なら、良いじゃないですか」
「でもね、感圧式のせいなのか、手を置いて書いていると、置かれた手にも反応するのか、伸びた線が書かれることがあるんだ」
「うえっ、面倒そうですね」
「手を液晶の上に置かないで書くか、何か硬い薄い板を、液晶に当たらない様にベゼルの上を跨ぐようにしてやらないと、変な線だらけになっちゃうのがね……」
「う~ん、使い難そうですね」
「だから、ホームセンターで、この薄い鉄板を買っちゃったよ」
何で電子メモに鉄板が挟めてあるのだろうと思ったら、そう言うことだったのか……
「これで、気にせず書けるようになったよ」
「変な手間が掛かりますね」
「まぁ、スケジュール帳とかの機能もあるし、大体良い感じだと思うよ」
「これで、進捗管理もバッチリですね?」
「プログラムも作ってくれたら、言うことないんだけどねぇ」
「そうしたら、僕ら皆失業しますよ」
「それなら、商売を替えるだけだよ」
そう言って笑っていた。
そうして、電子メモを迫野さんから手渡された。
暫く使ってみて、電子メモの感想を話す。
「迫野さん、これ、もうちょっと見やすくできないんですか?」
「うん、それで固定されているっぽいんだ。
俺ももうちょっと見やすくできないかな? って探してみたんだけど、無いんだよね」
「電気の下だと、光が反射してちょっと見難い所とかできちゃいますね」
「それでも、前の型と比べて見やすくなったみたいなんだって。
それなら輝度調整を付けてくれれば良かったのにさ」
「輝度調整を付けたくないポリシーでもあるんでしょうかね?」
「コスト削減とかか? そんなところでコストをケチるのなら、他の所でケチれって思うけどね。
まぁ、輝度調整で多少値段が上がっても、気にせず買うと思うけどね」
「電池が持たなくなるんですかね?」
「充電しなくても1か月位は持つらしい。
最大輝度で半分になったって、半月は持つのなら十分だよ。
どうせ、使わないときは充電しっぱなしにするだろうし」
「そうですよね……会議何て長くても2時間、まぁ頑張っても4時間ぐらいでしょうし、その時間が持てば誰も文句言いませんよね?」
「偉い人にはそれが分からんのですよ」
おっと、某機動戦士アニメのネタをぶっこんで来た。
一応、大学時代に隣の部屋の奴に「基本的必須科目だ」と見せられたから、ネタ元は分かった。
その後、某使徒アニメも「応用科目だ」と見せられた時には、俺は何をしているんだろうと思ったが……こんな所で役に立つとは思ってもみなかった。
「輝度調整は飾りではないんですね?」
「そう返すか」
迫野さんが再び笑っていた。
で、何の話だったっけ?




