第4話 向こうは楽でいいよな
「北地さん、ちょっと打ち合わせしたいんですけど、良いですか?」
磯島さんが北地課長の下へ来た。
「どうしました?」
「あそこの機械何ですけど、確認して頂きたいと思って」
「分かりました。
それなら、水島君にも来てもらいましょう。
水島君、ちょっと一緒に来てもらえるか?」
お呼び出しだ。
俺も呼ばれたと言うことは、俺が担当となったあの会社の件だろう。
少し横顔を見たところ、少し厳しい様な顔つきをしている。
あまり良い話ではなさそうだ。
「2人が帰った後に、少しだけ担当の方と話したんだけど、もう少し金額を落とせないか? と言う話だったんだけど、どうだろう?」
磯島さんが切り出した。
「どうとは?」
「開発の工数を減らせないかな……と……」
「無理だと思いますが、本人の意見も聞きましょう。
水島君、工数は減らせるかな?」
口では俺に聞いているが、目の奥では『出来ないと言え』と言われているような気がする。
作業量は大体決まっている。
その結果が、見積もりの時に出した必要工数だ。
必要な工数を減らすってことは、期間が短くなることを指す。
100人日だったものが80人日の工数にするってことは、単純に20人日減ったことになる。
週休2日の会社なら、1か月分1人居なくなったことになる。
まぁ、これは極端な例だけど、結局はそう言うことだ。
開発に掛けられる時間が減ることになる。
予定表でも、短くなった機関で作成することになる。
そうなると、当然ながらしわ寄せは俺の身に降りかかることになる。
主には、睡眠時間とか勤務時間とか……
「無理ですね……機能を減らさないと無理ですよ」
「機能はあれ以上減らせないって事だから、あとは機械か……」
「サーバーは、あれ以上落とすとまともに動かないかも知れませんよ」
「う~ん、利益分を削るか……」
「それをやると、今後もそれをやらないといけなくなりますよ?」
「そうだよなぁ……う~ん……」
「どうしても減らしたいのなら、機能を削るしかないですよ。
必要なら、またあちらに行くのも良いですよ」
「……その時はお願いします。
では、今日はありがとうございました」
磯島さんは席を立ち、帰って行った。
俺と北地課長も席を立ち、自分の席へと帰った。
「向こうは、こっちが何とかすると思って簡単に言ってくるんだよ。
全く、楽なもんだよ」
その途中、北地課長がぽつりと漏らした。
同じ頃、自席へと向かう磯島さんも「全く、自分の事ばかり言って……相手をするのはこっちなのに……楽に言ってくれるよな」と呟いていた。




