第7話 今日って何日だっけ?
大砂さんとの話し合いにより、佐藤さんとの打ち合わせは出席しなくて良くなった。
これで、前日に無理して家に帰らなくても良いし、打ち合わせの時間、付随する時間全てを自由に使えることになった。
自由と言っても、デバッグとテストの時間になるだけなのだが……
その分、進捗は右肩上がりになって、お客様も大喜び……と、ならないのがこの世の中の理である。
どんどんとテストが進むにつれ、見つかるバグは一筋縄ではいかないようなものとなる。
所謂、『根の深いバグ』と言われるやつである。
「そう言うのは、一字一句、間違っていないことを確認していくしかないよ。
それでも見つからない様なら、仕様から間違っているかも知れないから仕様を見直すしかないよ」
隣の迫野さんからアドバイスらしきものを受ける。
助けてはくれないのね……
「それの仕様分からないから、手伝えないと思うんだよね。
大砂さんなら、何か分かるかも知れないけど……帰ってきたら、聞いてみるしかないよ」
大砂さんは今、他のお客さんとの打ち合わせで出かけている。
流石に『教えて頂きたいのですが……』と電話を掛けるわけにはいかない。
(う~ん、分からん……)
何度、見直してもおかしい様なところは見つからない。
仕様書をひっくり返してみても、問題になりそうなところもない。
(おかしいなぁ……)
「水島さん、今月の勤務表が出てないみたいですけど……」
席の後ろから、事務を担当している山下さんから声を掛けられた。
「え? 今日って締めの日でしたっけ?」
「はい、そうですよ」
「今日って何日でしたっけ?」
「28日ですよ」
そういえば、今月の締め日はその位になるって言われていたような気がする……
「済みません、忘れてました。
今から書くので、帰りまでには出します」
「15時までに提出してもらわないと困りますので、お願いします」
今は13時30分だから、あと1時間半か……
「はい、15時までに提出します。
済みませんでした」
「お願いします」
山下さんは踵を返して、自分の席へと戻って行った。
はい、今回の件については俺が全面的に悪かったです。
許してください。
デバッグを中断して、勤務表へ勤務時間を入力していく。
近々、締めの日だとは思っていたけど、今日だったとは……とりあえず、早く勤務表を提出しないと。




