第4話 覚悟、完了
大砂さんに議事録の確認を取りに行った時に、佐藤さんから電話が入った。
先ほどの話の事だろう。
席へ帰ろうとすると、大砂さんが手で「此処に居て」と言う様な動作をしていたので、その場に留まった。
「それでは失礼いたします」
大砂さんが受話器を置くと、大きく一呼吸して俺の方へ向いた。
「どうやら、やる方向で決まったそうだ。
これからスケジュールを引き直してみるけど、かなりタイトなスケジュールになると思う。
その後、誰かヘルプを頼めないか聞いてくるけど、ちょっと難しいかもしれない。
他も丁度、忙しくなるタイミングなんだよ。
申し訳ないけど、水島君だけで頑張って貰うことになるかも知れない」
「それって……」
「休日勤務は勿論、徹夜作業も十分にあり得ると思う」
「そうですか……」
入社してからこれ迄、終電近くになる事はあっても徹夜は無かった。
それが、突然、徹夜もあるかも知れないと言われるとは……実際に会社に寝泊まりしている人は入社の翌日に見たし、迫野さんも対策何度か会社で寝泊まりしたのを見ていた。
自分の身に降りかかるまでは他人事だったが、こう宣言されると戸惑うばかりだ。
「まぁ、遅かれ早かれ皆が通る道だから、準備はしておいた方が良いと思うよ。
迫野が慣れているから、色々と聞いておくと参考になると思うよ」
「分かりました」
大砂さんに軽く一礼して、自席へと戻る。
「どうした? 軽くショックを受けたようだけど?」
迫野さんが、いつも通りに椅子ごと此方の席へと移動してきた。
「大砂さんから、今度の仕事がかなりタイトになるから、休日出勤、徹夜作業もあり得ると言われて……」
「そうか……ついに水島も徹夜デビューか。
まぁ、遅かったんじゃないかな?」
「そうなんですか?」
「あぁ、中垣内さんが結構な量の仕事を熟してくれちゃうからな。
多少の仕事なら、中垣内さんに振っておけば良いから」
「じゃあ、今回も中垣内さんにヘルプに入って貰えば……」
「中垣内さんは今、2件のリリースが重なっているからな。
これ以上振ったら、流石に死ぬと思うぞ。
諦めるんだな」
「迫野さんも忙しいですよね?」
「そうだな。
あれのリリースが無ければ、手伝ってあげられると思うんだけどね」
「徹夜に備えておいた方が良い物って、何がありますか?」
「そうだね……前にも言ったけど、寝袋があれば横になって寝られるからあった方が良いと思う。
『封筒型』ってやつだと、毛布代わりに出来るものもあるから。
後は、床の上にそのまま寝ると痛いから、マットがあった方が良い。
インフレーターマットってやつだと、小さく畳めるから便利だと思うよ。
まぁ、アウトドアの店に行けば色々揃っているから、行って見ると良いよ」
「使うのは、思いっきりインドアですけどね」
「それは言わない約束だよ」
次の休みの日にでも、アウトドアショップへ行って見よう。




