第1話 担当になる
「初めまして。
ソフトウェア株式会社の水島と申します。
よろしくお願いいたします」
北地課長、大砂さんに連れられて、お客さんの下へと連行された。
「水島君も2年目になったんだから、そろそろ担当を付けても良いと思いますよ」
俺以外の4人が集まって、決めたらしい。
大砂さんが担当していた仕事は、リーダーとしての仕事もあるため、担当している仕事は他の人に割り振ることに決めたそうだ。
そして、その担当していた先の一つが此処と言う訳だ。
会社に入って初めての名刺交換に、少し手が震えてしまった。
(あの研修も、全く無駄と言う訳じゃなかったな)
「担当の佐藤です。
よろしくお願いします」
他にもお偉いさんが居たが、俺が話す相手は佐藤さんが行うみたいだ。
第一印象は優しそうな人だった。
(まぁ、最初からケンカ腰で来る人なんて居ないよな)
「それじゃあ、今後は水島さんが全ての作業を行うんですか?」
佐藤さんから、今後の事について聞かれた。
「いえ、流石に水島一人に全てを任せるのは無理ですので、私もサポートします。
徐々に水島に移していきますが、暫くの間は、私が受けて水島が作業をする形になります」
「分かりました」
まぁ、初めから俺に全て任せると言われても、あちらにとっては不安でしかないだろう。
「それじゃあ、後は若い者に任せて、我々は席を外しますか」
「はい、それでは、あの件についてお話させて頂きます」
北地課長と、お偉いさんが会議室を後にした。
「それでは、集計システムの更新について、ご説明お願いします」
佐藤さんが、大砂さんに来てすぐに渡した資料の説明を求めてきた。
「はい、まず、今のシステムと実際の今の作業内容が段々と相違してきたため……」
昨日、大砂さんに「明日、お客さんの所でこの資料内容について説明するから、読んでおいて」と渡されていた。
何処がどのように現状と乖離していて、こう修正することにより乖離を無くすようにしようと説明していた。
大雑把に説明して、細かい所や質問に対しては資料を見ながら説明する感じで進めていくタイプの様だ。
「お客さんも、システムの大体の事は把握しているから、全てを細かく説明する必要は無いんだ」
帰りの電車の中で、大砂さんから説明された。
「今日の内容は、議事録を作っておいて貰える? お客さんにも提出するから、その心算で書いて欲しい。
そして、今回の指摘事項も直しておいて欲しい」
「分かりました」
大砂さんとしては、こんなことから少しずつ慣れさせる様に考えているのだろう。




