第10話 一段落
その後、単体テストを無事終了して、結合テスト、総合テストを終了した。
その都度、迫野さんにレビューをして貰い、確認しながら進めていく。
最初だからと言うことで、進捗の確認も含めて各テスト行程毎にレビューをする。
「段々、面倒になってきたでしょ」
迫野さんは、そう言いながら笑っていた。
「本当は、仕様書を書いたらレビューしないといけないから、もっと面倒だよ。
でもそうしないと、正しいテストが行われるのか分からないと言う事もあるんだけどね。
そこは、良く言えば信頼しているからと言うか、何と言うか……」
最後の方は言葉を濁していたが、多分、丸投げとか放置とか、そう言った言葉が入るのだろう。
取り敢えず、テストの行程は終了した。
後はお客様に引き渡すだけだ。
「お客さんの所に引き渡す時には、いろんな書類も付けなきゃいけないんだけど、今回についてはその辺のものは俺と大砂さんで用意するから、今回の作業はここまでだ。
とりあえず、開発以降の一通りの流れをやってみたけど、感想は?」
「そうですね、今回はサンプルになるモノがありましたけど、1から全部1人でやるとなると、出来るかどうか自信はありません」
「どの辺が難しそうだった?」
「機能に対して、どう言う風に処理分けしていけば良いのか、まだ良く分からないかなと……」
「その辺は、今後経験を積んでいけば分かるようになるから、今は焦る必要はないよ。
ただ、3年経っても同じようなことを言っているなら、話は別かもね。
もしそうだったら『お前は、今まで何をやって来たんだ?』って言われるかも知れないけどね」
「3年ですか?」
「あくまで目安だよ。
下手すれば2年目から、厳しいことを言ってくる人もいるからね。
『新人じゃないんだから』とか、『何時までも、新人気取りで仕事してるんじゃねぇぞ』ってね」
「そうなんですね……」
「後2~3回は同じような感じで進めたり、俺もサポートしながら進めていくから大丈夫だよ。
流石に『じゃあ、次はお客さんの所に行ってやってみようか』何て言わないよ……言われないよな?」
え? 本当に大丈夫なのか?
「あの仕事とあの仕事は中垣内さんがやっているし、あれとあれは俺がやっているし……他に何あったっけ?……」
いつも通りに独り言なのか、俺に同意を求めているのか分からない状態で呟いている。
返事をした方が良いのだろうか?
「……うん、大丈夫だ。
まさか、あの仕事を1人でやらせる訳無いし。
多分、大丈夫だよ」
1人で納得しているのだけど、俺は納得していない。
だからと言って、俺に反論する勇気もないし、何に反論すれば良いのかも分からないのだから反論のしようもない。
迫野さんが納得しているようだから、それで良しとしよう。
何も言うことはないが、反応はしないといけないだろうから、頷いておく。
迫野さんも頷き返したから、対応としては正しかったのだろう。
「じゃ、この場はお開きとしよう。
ご苦労様」
「ありがとうございました」
こうして、俺がこの会社に入って初めての開発は終了した。




