第7話 仕様書は後から作られる
コンパイルは終わった。
正常系もとりあえずは動いた。
次はテストなのだけど、その前に基本設計書と詳細設計書を作るようなことを、迫野さんが言っていたのを思い出した。
「迫野さん。
とりあえず、プログラムが出来ましたので、仕様書を作る方法を教えてもらえますか?」
「そうか、よし、ちょっと待ってね……」
暫くして、いつも通りに椅子ごと俺の席へと移動してきた。
「それじゃあ、そのメールの場所を開いて」
いつの間にか、迫野さんからメールが届いていた。
言われた通りに、メールに書かれていたフォルダを開く。
「その中にあるものを、自分のPCに持ってきて、適当なところで解凍してくれれば良いよ。
中の実行ファイルを動かしてインストーラーを実行すれば、ソフトがインストールされるから。
インストールは、特に設定しなくても大丈夫だと思う。
プログラムを実行したら、出てきたウィンドウにファイルを放り込んで実行すると、ソースからコメント行とかを抜き出して仕様書っぽく作ってくれるから、後は調整して終わりだよ」
「分かりました、やってみます。
ありがとうございました」
迫野さんは自席へと帰って行った。
PCでは、解凍が終わったようだ。
(次は、インストーラーを動かすんだったな)
解凍した作成されたフォルダの中にあった実行ファイルを探して、ダブルクリックをして実行する。
少し待つとダイアログ画面が表示され、インストール先とか使用するユーザー名などを入力するよう促された。
(特に設定は要らないって、言っていたよな?)
何も考えず、そのままOKボタンを押してインストールを進めていった。
最後のOKボタンを押した時に、ソフトウェアが勝手に起動した。
(んで、ここにファイルを放り込めば良いって言ってたな)
作成したソースを、全て選択してソフトウェアの画面にドロップする。
そして、右下にあった実行ボタンを押す。
すると、処理中とダイアログが表示されて、ハードディスクが激しく動き出した。
今までにない程に激しく動いたので少し焦ったが、何もできないし、何かすると壊してしまうかも知れないのでそのまま処理が終了するのを待った。
暫くして処理が終了したようで、処理中のダイアログが消えて、ハードディスクのランプも消えた。
何事もなかったかのように動きがない。
(処理結果はどこに行ったんだよ)
探し回ってみると、ソースのあったフォルダに某表計算ソフトのファイルがいくつか新しく作成されていた。
(これか)
ファイルを開いてみると、ソースのファイル名が付けられたシートなどが作成されていた。
シートの中を見てみると、以前、迫野さんに見る様に言われた仕様書と同じようなものがあった。
処理の内容も作られているが、それは、俺がコメント行として書いたものがそのまま出力されていた。
(成程……だから、コメントはきちんと入れておけって言ってたのか)
段落合わせなどの調整をして、数分後には仕様書らしいものが出来上がっていた。




