第5話 新人だから通ると言う訳ではない
仕様書の修正を行い、それらしい形にする。
(それにしても、また、ここが切れてるし……だから、某表計算ソフトは嫌いなんだよ……)
四角い図形の中に文字列を設定すると、端っこの文字が切れて表示されない時がある。
画面上では正しく表示されているにも関わらずに、だ。
画面表示を印刷形式にすれば、ある程度は防ぐことが出来るらしいのだが、遅くて使い物にならない。
だから、作り終わった後に最後の確認として印刷形式で表示させている。
その結果が、さっきの心の叫びとなっていた。
そんな事もありながら、ようやく仕様書の修正が終わる。
(さてと、ようやくプログラムを作れるな……)
統合開発環境を起動して、プログラムを作って行く。
まずは、社内ライブラリの取り込みだ。
この辺は1行書けば良いだけなので、簡単なものだ。
この後は機能を実現するために、どんどんプログラムを書いて行けばいい。
統合開発環境の支援機能により、打ち間違いは直ぐに分かる。
1週間後には、ほぼ出来上がった。
(さてと、コンパイル出来るかな……)
コンパイルは上手くいったようだ。
椅子ごと迫野さんの席へと移動して、迫野さんにプログラムが作り終えたことを伝える。
「迫野さん、出来ました」
「そうか、じゃあ、ちょっと待ってね。
起動部分を作っちゃうから」
迫野さんが、何やらファイルを修正していく。
5分程経った位に、「よし、これで良いはずだ」と言って、此方へと振り向いた。
「メールで送ったところに、ブラウザでアクセスしてみて。
それでプログラムが動くはずだから。
動かなかったら、言ってくれ」
「分かりました。
ありがとうございます」
自席へと戻ってメールをチェックすると、迫野さんからメールが来ていた。
(此処にアクセスして……)
ブラウザを起動すると、画面上にはボタンが沢山表示された。
(ん、こんな画面じゃないはずだけど……動いたのか?)
画面を見ていくと、下の方にもボタンが続いている。
スクロールさせていくと、最後の方に見覚えのある文字列を見つけた。
(ひょっとして、このボタンを押すと動き始めるのか?)
そう思い、ボタンを押してみるがエラー画面が表示された。
(動かなかったのか?)
「迫野さん、上手く動かなかったみたいなので、見てもらって良いですか?」
「そう? ちょっと待ってね」
程なく、迫野さんが椅子ごと此方へと移動してきた。
「それだと思うボタンを押してみたのですが、この画面が表示されたんです」
「……ちょっとPC借りるよ」
迫野さんが調べ始めて、2~3分経った位だろうか、迫野さんが此方を見た。
「あ~、クラス名のOと0、間違ってるね。
だから動かなかったんだよ。
俺は、貰った仕様書からコピーしたから間違っていないはずだよ。
駄目だよ、Oと0が区別できるようなフォントを入れておかないと。
PCは新人だからって見逃してくれないからね」
「すみません、気を付けます。
そのフォントって、どこにありますか?」
「ん~っと、後でメールで送るわ」
「はい、ありがとうございます」




