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遼寧(001型)

現状

 某検索エンジンで「遼寧」と入力すると、サジェストに「ポンコツ」といったワードが出てくる。呆れた。

 次に某動画サイトで「遼寧」を検索するとチープなサムネに「ガラクタ」、「欠陥」等々といった文字が並んでいる。

 最後に某SNSで「遼寧」と検索すると……。普通に遼寧省のニュースとかが出てきた。まあ、うん、そういうこともあるよ。


 とにかく、空母遼寧を否定的に評価する人々が一定数いるのだ。

 色々な見方のあるフネだが、実際はどのようなフネなのだろうか?




人民解放軍海軍とは?

 まずは遼寧を保有する人民解放軍海軍(以下、中国海軍という)の概要を見ていく。


 中国海軍は130隻以上の主要水上戦闘艦を含む約350隻の艦艇を保有する(2019年時点)。これは米海軍を上回る世界最大の海軍である。もちろん西太平洋でも最大の海軍である。

 2000年初頭から軍拡が進み、2013年には中国の主要水上戦闘艦総トン数が日本を上回った。その後は差が開くばかりである。

 2000年から2018年頭までに建造した艦艇の数を比較すると、中国が106隻なのに対し日本は僅か19隻である。ちなみに2018年に中国が建造を進めていた艦艇の数は25隻である。

 兵器やセンサーといったものの近代化を進め、艦艇全体の質を向上させている。

 2019年の中国の国防白書では近海防御型から遠海防衛型への転換を進めているとした。それに伴い、空母を含む大型艦の整備が急速に進められている。




遼寧はどんな空母?


就役まで

 元々はソ連のアドミラル・クズネツォフ級2番艦「ヴァリヤーグ」として、1985年にウクライナ・ソビエト社会主義共和国内で建造が始まった。そして1988年には進水した。しかし、その後にソ連が崩壊。中央政府からの建造資金供給がなくなった。

 しかし、造船所は自腹で本艦の建造を進めたのだ。とはいえ長くは続かず数ヶ月で工事は止まってしまった。この時点で艦全体の68%近くが完成していたという。新生ロシア海軍が建造を再開しようとしたりしたが、結局工事が進まないまま時間が過ぎていくことになる。最終的にはウクライナと管轄となった。

 政治的ないざこざがあったりしたものの、1998年まで本艦は放置されていた。

 1998年、マカオの中国系民間会社がウクライナから本艦を購入した。航海の際、トルコ政府が海峡通過に難色を示したが、中国政府との政治的折衝で妥協、「ヴャリヤーグ」は無事中国に回航された。しかし、「ヴャリヤーグ」が辿り着いたのはマカオではなく大連であった。

 数年間動きがなかったが、2005年には大連造船所に移され工事が始まった。

 2011年には完成式典が行われた。このあと海上公試が行われた。

 2012年9月25日、計画通り「ヴァリヤーグ」は中国海軍に引き渡された。この時に「遼寧」と命名される。中国の空母は省名が付けられるようだ。ちなみに「ヴァリヤーグ」というロシア語自体は2009年5月末の時点で消されていた。

 艦番号は「16」だった。


就役後

 遼寧はどの艦隊にも属していない。人民解放軍海軍指導部の直接の指揮・管理下にある。

 2013年の2月には大連から青島に移っている。青島には空母母港としての機能が追加されていたのだ。このように中国はかなり計画的に空母の導入を進めている。

 11月には海南島南部にある三亜総合保障基地(三亚综合保障基地)に入港した。ここも空母用の港として整備された軍港である。

 余談だが先日この港について調べてたので、その内容も記しておく。括弧内は読み飛ばしても構わない。

「三亜総合保障基地(三亚综合保障基地)は、海南省の最南端に位置する三亜市内にある海軍基地。同市には楡林海軍基地や亜竜湾海軍基地がある。この2つの基地には潜水艦がいる。亜竜湾海軍基地には094型(晋級)原子力潜水艦が駐留している。ちなみに楡林海軍基地のある楡林港は第二次世界大戦期には日本軍の根拠地の一つであった。

 ちなみに三亜市は日本の鴨川市の友好交流都市である。

 話が逸れたが、三亜総合保障基地は近年整備された綺麗な場所である。一番の特徴は、空母の為に用意された巨大な桟橋。なんと全長700m!世界最長の桟橋らしい。大きさ的に2隻の空母を係留出来る。更に反対側もあるので4隻が同時に係留出来るかも?実際の運用では空母機動部隊が丸々入る感じだろう。航空写真では075型強襲揚陸艦1隻と071型ドック型揚陸艦1隻、駆逐艦2隻が係留されている様子が見られる。どちらにせよかなり大規模な設備である。

 不確定な情報だが、これから建造が始まる(らしい)003型空母の2番艦はここを母港にすると言われている南シナ海への出撃も容易なここはこれから重要になっていくのかもしれない。」


 2014年の1月には青島に戻った。

 2016年12月には遼寧を含む艦隊が宮古海峡を通過し西太平洋へと進出した。第一列島線を通過したのだ。この時の艦隊は、遼寧、駆逐艦3隻、フリゲート2隻、コルベット1隻、補給艦1隻という構成だった。この際、フリゲートから発艦したZ9ヘリコプターが宮古島領空の近く(10~30km)を飛行したため、空自の戦闘機が緊急発進した。

 2017年1月には台湾国防部が30ノットで航行する遼寧を確認している。防衛白書でも防衛省は遼寧が30ノット出せると評価している(中国メディアの中には32ノット出せると言うところもある)。

 2018年3月には海南島周辺で、遼寧を含む40隻ほどの中国海軍艦艇が大規模な軍事演習を行った。

 5月には夜間離着陸の様子が報道された。これで全天候型運用の能力が明らかになった。

 この頃遼寧は改修を受けたとされる。飛行甲板のマーキングやコーティングを変更し、より航空機の運用を安全に行えるようになった。

 2019年6月に再び宮古海峡を通過し太平洋に進出した。このあと、グアム周辺を経由して南シナ海へと向かった。この際グアム周辺で訓練を行ったという。

 2020年4月にも遼寧艦隊は宮古海峡を通過した。中国海軍は遠方への展開能力を着実に高めている。

 2021年4月も同様の訓練が行われた。年間計画に基づいた定期訓練とされ、来年や再来年も同様の訓練が行われるだろうとのこと。今回の艦隊には055型駆逐艦が含まれていた。空母打撃群の運用も上手くなっているのかもしれない。日米の艦艇がこの艦隊を捕捉追尾していた。また、遼寧から発艦した早期警戒ヘリコプターが尖閣諸島周辺の領空に近づいたため、空自の戦闘機がスクランブルした。




遼寧のスペック


満載排水量 59,439トン

基準排水量 46,637トン

全長 305m

水線長 270m

全幅 70m

水線幅 38m

喫水 10.5m

主機 蒸気タービン4基、4軸

出力 20万馬力

速力 30ノット

兵装 HHQ-10(紅旗-10)近接防御SAM18連装発射機4基

   H/PJ-11型CIWS(30mmガトリング砲)3基

搭載機 J-15×24、Z-18J×4、Z-18F×4、Z-9C×2、Ka-31×2

乗員 船員1,960人、航空要員626人、司令部要員40人

航続距離 18ノットで8,000海里

     29ノットで3,850海里


 基本的には1番艦のアドミラル・クズネツォフと同じ。艦橋の前後にエレベーターを1基ずつ装備している。

 次級に002型空母(山東)がある。


 遼寧の紹介は如何でしたか?

 増強著しい中国海軍の象徴として活動を続ける遼寧は、今後もニュースで度々出てくると思います。そんな時、「そういえば遼寧はこんなフネだったな」と思い出していただけると嬉しいです。

 次回は少し飛んで003型空母、または先日話題になった韓国の軽空母を紹介したいと思います。

 また次回にて!

 三亜の海軍基地はグー●ルマップの航空写真で見ることが出来ます。現時点(2020/12/13撮影)では075型、071型等の姿が確認出来ます。


 個人的には艦載機発艦の話も入れたかった。

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