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今どきハンドガンだけで異世界とか地味すぎる!!  作者: ヤナギ・ハラ
第四章 迫りくる脅威
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70 焦り

「……っん…」


 閉じていた瞳に光が差し込んでくる。光に導かれるように、ぼやけていた意識は、少しずつ鮮明になってく。


「 …… ……っ!?」


 不意に意識が覚醒する。


 勢いよく体を起こす。周囲には木々が立ち並び、濃い緑の匂いがそこが森であることを思い出させるに十分であった。


「目が覚めたかい。」


 隣に腰掛けていたエインセルが声をかけてくれる。目覚めに良い澄んだ声ではあるが、今はそれに気をよくしている場合ではない。


「エリィっ。ここは…、いやそれよりも。 どうなった!?」


 虎の姿をした人物に襲撃を受け、皆を逃がすために対峙していた。圧倒的な力を前に、追い込まれていた事を今でも明瞭に覚えてる。目の前にいるだけで身が竦むその威圧。今思い出しても、その時の恐怖が蘇ってくる。


 そして理解する。

 強者と対峙し、そこから記憶が途絶えていることに。




 戦いに敗れたのだ。




 周囲を見渡す。そこで現状を目の当たりにする。


「!?? みんなっ!? 」


 立ち上がり傍へと駆け寄る。

 何故みんなが森の中に……避難していた筈だ。


 皆気を失っているのか目を閉じている。だが外傷などは見当たらない。その事に安堵しつつも、何故このような事態になっているのか理解することが出来ないでいた。皆には避難するように指示していた筈だ。


「エリィ、いったいどういう事……なんで皆がここに居るんだ。それになぜ皆気を失って…」


 ___皆


 違和感を覚える。


 皆が疲れたように眠っている。


 皆が


 皆


 

「_____ピピィは何処だ…?」


 急いでマップを開き確認する。周囲にピピィのマーカーは表示されてなかった。


 背中に嫌な汗が流れる。


 何故ここにピピィが居ない。


 いったどうして___


「___連れ攫われてしまったよ。」


 エインセルが静かにそう応える。

 連れ攫われた。

 その言葉に体中が沸騰しそうなほどの激情に駆られる。


 いったい誰に___いや、そんなもの聞かなくてもわかる。


「シュン、落ち着いて。」


 エインセルが近寄り肩に手をかけてくる。


「大丈夫、落ち着いてるよ。」


「シュン、落ち着つ__ 」


「落ち着いているっ!!!!!!!!!」


 感情にまかせてエインセルを怒鳴りつけてしまう。何も悪くない彼女に当たり散らすなど筋違いにも程があるが、怒りを抑えることが出来なかった。


「シュン。少し冷静になるべきだよ。今のキミは酷い顔をしている。ピピィなら大丈夫さ。だから落ち着いて。」


「大丈夫!? 何でそんな事が言えるんだ!? ピピィが攫われたんだぞ! 悠長なこと言ってる場合じゃない!!」


「だからだよシュン。今のキミは冷静じゃない。物事を冷静に判断できていないでいる。周りが見えていない。いつものキミならもっと広い視野をもっているはずだよね。だからねシュン、落ち着いて。」


 エリィに窘められ、さらなる怒りをぶつけそうになるが、エインセルに顔を真っ直ぐ見つめられ、既のところで怒りの感情を飲み込む。


 落ち着け、落ち着くんだ。

 確かに今の自分は冷静ではない。

 これでは見えるものも見えなくなってしまう。

 冷静に、心を鎮めるんだ。

 頭をクリアに、視野を広く。



 目を閉じ、深呼吸をする。



 数度の深呼吸を繰り返し、心を落ち着かせ、熱を冷ます。



「____ ごめんエリィ、少し自分を見失っていたよ。ありがとう。」


 エインセルは笑顔で応えてくれる。その笑顔に心が落ち着いていくのがわかる。余裕が生まれたことにより、先程は分からなかったこともわかるようになってくる。


 メイン画面を開き全体マップを表示させる。普段常に表示されている縮小マップではなく全体を表示出来るものである。


 そこにはエインセルをはじめ子供らのマーカーが表示されている。しかしそこにはピピィのマーカーは表記はされていない。


 マップの縮尺を操作して変更しより広範囲を表示出来るようにする。このマップはかなりの範囲を映し出すことが可能であり、ゲーム内では不可能な距離でも表示することが出来る。


「____いた。」


 ここからかなり離れた場所にピピィのマーカーが表示されていた。マーカーは今もなお移動している。


「移動中……」


 おそらく虎人が抱えて移動しているのだろう。その移動スピードはかなりのものである。


 どうやら虎人は一人でこの依頼を受けているようだ。もし複数で依頼を受けているのならば、一人で抱えながら移動などはしないだろう。それならば乗合馬車などを使わずに一人で抱え走った方が何倍も早い。


 それに虎人の周囲には仲間と思われるようなマーカーは表示されていない。そこには虎人とピピィ、そしてもう一つのマーカーしか映し出されていなかった。そして、これがエインセルが言いたかったことなのだと理解した。




「____ありがとうミミ。」


 ピピィの傍をミミのマーカーが寄り添うようにして移動していた。精霊の彼女だからこそ、ピピィの傍にいてやることが出来たのだ。その事に安堵し感謝する。



《《ミミ、聞こえる?》》


ゲーム内でも使用することができる個別チャットを利用してミミに語りかける。双方かなりの距離があるが、問題なく使えることはすでに実証済みである。


《《シュン!? もう、いつまで寝てるのよっ! あんたがしっかりしないからこのミミさんが代わりに頑張ってあげてるんだからねっ! 感謝しなさいよっ!!》》


《《うん___。 ありがとう、ミミ。》》


《《判ればばよろしいっ。 もう大丈夫なの?》》


《《うん。もう平気だよ。》》


《《そう……。 ……あまりみんなに心配をかけるんじゃないわよ。 みんなまだ子供なんだから。 》》


《《うん……、 本当そうだね。 ゴメン。》》


 ミミの言う通りだ。皆を守らなければならないのに、皆に心配をかけてしまうなど……。だが今は落ち込んでいる場合ではない。成すべき事をしなければ。


《《ミミ、ピピィの様子はどう?》》


《《虎人に連れられているわ。気を失っているけど、怪我してる訳ではないわ。ただ眠らされているだけよ。》》


《《そうか、無事みたいで本当よかった。》》


 ミミの言葉に安堵する。どうやら無闇に傷つけられてはいないようで安心である。これは他の子供たちも傷ついている様子はなかったので、大丈夫だと思ってはいたが、こうやって確認できると改めて安堵する。


《《ミミ、何かわかったことはあるか。》》


《《特にないわね。この虎人が何者かから依頼を受けてピピィをさらったってこと以外は。》》


 虎人は依頼を受けて襲撃してきたと言っていたが、どうやら間違いないようだ。それにしても、ピピィを攫うのが目的だったとは……。もしわかっていればもっと別の対応もできたかもしれない。ピピィはハーピー族だ。空を飛ぶことができる。ならば何よりも優先して避難させていれば捕まることはなかったかもしれない。それに他の子たちだってもっと上手く対応できていれば……。


《《シュン》》


 思考の渦に囚われてしまっているところに、ミミの声が届いてくる。その声はどこまでも優しく静かだった。


《《あの時はまだ虎人の真意がわからなかった。だからああするのは間違いではなかったわ。その時に出来る最善の事をしただけ。あなたが必要以上に自分を責める必要はないわ。そして、今自分ができることをするだけ。それはクヨクヨしている事ではないわよ。》》


《《……》》


《《そして、全部無事に終えたら、その時にでもまた反省すればいいわよ。その時はこのミミさんがじっくり相手してあげるわよ。》》


《《……ん》》


《《ちょっと! このミミさんの言うことが聞けないっていうの? 返事は!》》


《《……うん ありがとう。》》


《《わかればよろしいっ!》》


 ミミに励まされ、気持ちを切り替える。

 ミミの言う通り今はやるべきことに集中するべきだ。


《《ミミ、そいつが何処に向かっているのかわかるか?》》


《《ピピィを攫ってこいって命令した奴のところに運ぶんでしょうけど、それが何所なのかは判らないわ。》》


 マップで確認しているが、虎人は未だ移動している。受け渡しの場所に向かっているのだろう。そこが街なのか、それとも人里離れた場所なのかは、今の段階では判らない。


 マーカーは既に人里から離れたところに位置してりる。自分たちが普段利用している宿場町ではなかったようだ。そうなると、さらに向こうの町か、それとももっと遠く、他所の土地なのか。


 もし別の国などという事になったらかなり面倒なことになる。もしそうだとしたら、早めに手を打たなければならない。


《《ミミ、もし何かわかったことがあったら直ぐに知らせてほしい。些細なことでも構わない。》》


《《わかったわ。》》


 ミミとの会話を終わらせ、エインセルへと向き合う。


「エリィ、これからピピィの後を追う。どこに連れていかれるのかまだ判らない。だからといってこのまま立ち止まっている訳にはいかない。それにもし、他所の国にでも連れていかれたら、面倒なことになる。だから、今すぐ後を追うよ。」


「そうか。 うん、それがいいね。」


 周りに視線を向ける。そこでは未だ皆が静かに眠っている。


「____みんなのことを頼む。」


 エインセルは笑顔でそれに応えてくれた。


「ワォン!!!」


 エインセルの隣に控えていたアセナが任せろと言わんばかりに吠える。


「ああ、そうなだ。アセナもみんなを頼むよ。守ってあげてくれ。」


「ワォン!」


「それじゃあ、行ってくるよ。」


 二人に背を向け、森の中を突き進む。



 ピピィ、今行くからな。

 





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