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今どきハンドガンだけで異世界とか地味すぎる!!  作者: ヤナギ・ハラ
第三章 小さな仲間 守るべき子供たち
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59 成長


 その日もいつもと同じように森で狩りを行う。

 今日の獲物は長い緑の毛に覆われた鹿のような生物である。その鹿は数頭の群れで行動しており、集団で行動している分周囲への警戒の目は多く、狩りの難易度は幾分高めだ。


《《 距離はおおよそ50Mぐらいか。 これ以上近づくと気づかれるかもしれないね。どう、行けそう?》》


《《 問題ない。》》


《《 そっか。それじゃあ、やてみよう。焦らないでいいからね。練習通りやればおそらく問題なく仕留められるよ。》》


《《 うん 》》


 アネアは静かに構えると、手にしたソレで槍を投擲する。放たれた槍は空気を切り裂くようにしながら森の中を進み、その勢いのまま集団でいた緑鹿の一頭を安々と貫く。貫かれた緑鹿はその場に崩れ落ちる。首への一撃を受けた鹿は、それが致命傷となりすでに虫の息となっている。集団でいた他の緑鹿は散り散りに森の中を逃げるように駆け出していく。しかし、そのうちの一頭に狙いすましたかのように次の槍が放たれ、それは狂いなく緑鹿を貫いていった。一瞬の間に二頭の緑鹿を仕留めたアネアは、そのまま鹿へと近寄っていき、倒れている二頭の首へナイフを突き立て仕留めていく。


 仕留められた緑鹿の近くに向かい、素早く収納する。


「無駄な動きも無かったし、狙いも正確だし威力も申し分ない。扱いも慣れたみたいだし、問題ないね。」


 アネアの手元に目を向ける。そこにはある道具が握られてた。


 投槍器


 槍を投擲する際に用いられる投槍専用の道具である。もとの世界ではアトラトルという名で広く知れ渡っていた物だ。その起源はかなり古く、数万年前からその存在は確認されている。そしてそれはこの世界でも同じで、投槍器自体は存在していた。しかし、それらがあまり使われている様子はない。その理由としては元の世界と同じく、他の様々な道具の台頭にあるだろう。しかし、そんな使われなくなっていった道具ではあるが、その威力は眼を見張るものが有る。テコの原理を利用したその投槍器は、ある程度訓練すれば、オリンピック選手に比肩するほどの投擲距離を難なく叩き出すことが出来る程だ。一般人が一流アスリートに匹敵する力を身につけるといえば、その凄まじさがわかるだろう。


 そんな絶大な威力を誇る投槍器を、アネアに使用してはどうかと提案したのだ。難色を示していたアネアであったが、彼女は自身の攻撃の威力不足に思うところがあったのだろう、それを自覚している彼女は使うことを受け入れた。


 アネアはまだ幼く体も小さい。成人した同種族と比べても攻撃力が低いのは当然のことである。だからこそ彼女は自身の能力を上げるためならば、例え己が未熟だと判っていてもそれを受け止め、そして様々なものを吸収していくのだ。


 投槍器を使用したアネアの投擲技術は、凄まじいものであった。槍を投げればその飛距離は300Mを優に超え、100M範囲内であれば、かなりの精度で目標を貫くことが出来た。これはアサルトライフルでの狙撃に匹敵する精度である。無論アサルトライフルと槍とでは、その武器の特性から同じように運用出来るという訳ではない。しかし、それでもこの投槍器を使っての攻撃は、いろんな可能性を秘めている。


 そのことをアネアに伝え、この数日間は投擲技術を徹底的に鍛え上げた。

 そして今日、狩りで初めての実践投入となったが、その結果は見ての通り、素晴らしいものであった。


 蜘蛛の体をめいいっぱい利用した、体全体を使っての投擲は、人間ではおよそ不可能な運動エネルギーをその槍に乗せ、放たれた槍は凄まじい威力となって獲物を貫いた。その威力はハンドガンのソレを優に超えている。そもそも槍と弾丸では重量そのものが異なる。そのため、マンストッピングパワーは圧倒的に槍が勝っているのだ。


「連射速度も申し分ないし、実践でも使えることがわかった。これかもどんどん練習していこう。」


 無言でうなずくアネアであったが、その顔にはわずかだが笑みが含まれていた。今回の手応えに彼女も少なからず喜んでいるようだ。最初は投槍器を使うことに難色を示していが、もうそういった事も起きないだろう。


「よし、それじゃあ狩りを再開しようか。」


「うん」









◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇










「それじゃあ、ネルエルザ。お願いできる?」


「はいっ!」


 軽快な声と共に、ネルエルザは水の中に手を入れ魔法を唱える。魔力を流された水は僅かに震えながらも、それ以上の変化は見られず静かに振動するのみである。どれほどの時間そうしていたであろうか。大量の水の前に、やはり簡単にはいかないのかと見守っている中、僅かながら変化が見え始めた。大きな器に入れられた水は、その水面を震わせながら、やがて白い湯気を立ち上らせていった。


「お、おお…… おおおぉぉ!!」


 目の前の光景に思わず声が漏れてしまう。それを見ていたウルエルザや他の子供たちは疑問の表情を浮かべている。そんな周りの様子も意に介さず、ネルエルザの傍まで近寄ると、ネルエルザが魔力を流していたその水の中に手を入れ、そして成功したことを確認すると、その出来に更に笑みが溢れてしまう。


「___ふう。 これでよろしいでしょ__きゃっ!」


 ネルエルザの両手を掴み上下に激しく揺さぶる。いきなりの出来事にネルエルザは思わず悲鳴をあげてしまった。しかし、そんなことはお構いなしと言わんばかりのテンションで言葉をる。


「ありがとうネルエルザ!! 完璧だよ!!」


 目の前の水_____程よい温度まで温められたお湯の正体はお風呂である。

 目の前に用意された風呂に感激し、興奮し、テンションが上っているのを自覚はしている。が、それでもこの感情を抑えるのは難しい。


 密かに、そして綿密に計画していたことが、今まさに実現した瞬間であった。


 ネルエルザが水を扱えるということが判ってから、それをどう活かせるかということを考え、まずは水というものについて理解してもらう為に液体と気体についてゆっくりと説明をしていった。そして実際に水を沸騰させ水蒸気を見せる。これは普段の生活で当たり前のように起こっている現象なので、ネルエルザもすんなりと受け止めることが出来た。しかしその次の段階へと進むと、ネルエルザは途端に頭を悩ませてしまった。


 頭を悩ませる原因となった次の段階____それは振動である。


 水の分子H2Oは、振動することによって気体へと変化する。そしてそれは何も気体になるというだけではない。物質は振動することによって熱を発するのだ。その熱は振動の強弱がそのまま温度の上下につながる。振動を無くせばそれは氷へと姿を変え、激しく振動させれば水は気体となる。


 基礎的なことでは有るが、それはネルエルザにとっては未知の知識であり、理解する事が出来なかった。


 しかし、ネルエルザは水を操作することが出来た。ならばその水を振動させることは容易なはずである。では何故出来ないのか。これは水を生み出した時と同じように、理解度が足りていないからだと思われる。


 振動についてネルエルザに理解してもらう必要がある。なのでまずは、目に見える形で確認してもらうことにした。


 そこで用意したのは砂である。砂を平たい器に入れ、その器を左右にふるようにして砂粒を動かす。それをネルエルザに体感してもらう。そしてそれを確認したら、次に同じ形をした器に水を入れ、同じように左右に動かしていく。砂の器を傾ければ傾けた方に砂は寄っていき、反対に傾ければそちらへ砂は移動する。水の器でも同じように行う。それを何度も繰り返し、動きを確認させる。


 そこで、その両者を見比べさせ、その性質が同じであることを理解させる。砂は小さい粒が寄り集まってその姿を形つくっている。そしてそれは水も同じである。水も砂と同じように小さな粒が寄り集まって水の姿を形つくっている。


 前回の水操作でそのことを理解出来たネルエルザは、この砂と水の両方を見比べて、それが同じものだと気づくことが出来た。そして振動というものも同時に僅かながら理解することが出来た。


 砂の器を細かく振ると、中の粒は器の中を細かく忙しなく移動していく。そのイメージを頭に焼き付け、それを水の器で再現していく。


 最初はほとんど動くことはなかった水であるが、それでも辛抱強く、細かく動くイメージを再現するように、ただひたすらに魔力を流していった。そうした訓練をしばらく続けていると、わずかながら水が振動するようになっていった。その事に喜びつつも、気を抜くことなく訓練を続けていく。そうして数日をただひたすら水を振動させるという単純作業を繰り返し行い、ついには温度が変わるまでになっていった。実際に温められた水、もといお湯に触れてその事実を確かめ、そして目を輝かせているネルエルザ。今はまだ小さな器の中の水であるが、理解することの出来た事は大きい。少しづつ水の量を増やしていき、そして大量の水を振動させることが出来るようになったのがつい先日のことだ。そして今日、満を持しての本番。


 そしてネルエルザは見事お風呂を沸かすことに成功したのだった。



「ピィ!! お風呂! お風呂!!」


 以前にお風呂を体験したことのあるピピィは、目の前に用意されたお風呂に興奮してぴょんぴょん飛び跳ね喜びの舞を踊っている。そのあまりのテンションに他の子供たちは少々引いている。


 しかしピピィのその気持も痛いほどよく解る。テンションが上ってしまうのも仕方がないことだ。それにテンションが上っているのは何もピピィだけではない。別の所に視線を向けると、そこにはソワソワして若干落ち着きがないエインセルがいた。


 彼女もお風呂に魅了されたひとりである。エインセルはそのお風呂の圧倒的なまでの魅力によって寝落ちしてしまうという事件があった。それほどはまったのだ。そんな経験をしたエインセルも、再びお風呂を前に心がざわついているのだろう。


「ぴぃ! シュン!! お風呂入る! 入る!!」


 すぐにでも服を脱ぎ捨て風呂に突撃しそうなピピィを既の所で止め、落ち着くように促す。


「ピピィ。そのままお風呂に入っちゃダメだよ。まずは体を綺麗に流してからね。それと、入るのはもう少しまって。」


「ピィ?」


 慌てるピピィの肩に手を置いて落ち着かせると、視線を後ろへと向ける。そこにはピピィとのやりとりを眺めていたネルエルザが立っていた。


「え?」


 突然視線を向けられたネルエルザは、何事かとびっくりしているようだ。


「ここは一番の功労者であるネルエルザに、当然一番風呂の権利があるからね。」


「_____え?」





 


少し間が空いてしまい申し訳ないです(汗

なかなか執筆時間が取れませんでした。


なるべく早く投稿するつもりではいますので、これからも何卒よろしくお願い致します。

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