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今どきハンドガンだけで異世界とか地味すぎる!!  作者: ヤナギ・ハラ
第三章 小さな仲間 守るべき子供たち
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48 ワン! きゃうん!

 囚われていた子供たちの、その最後の一人が、今目の前でアセナによってひっくり返されている。


 これはいったいどういう状況なのだろうか…。


「えっと、アセナ。何をしているのかな?」


「ワン!」


「きゃいんっ!!」


「え? どっちが主従関係かはっきりさせている? なにそれ。」


「ワンっ!!」


「きゃいんっ! きゃいんっ!!」


「え、最初が肝心? いや、何を言っているかわからないんだけど。えっと、君もそんな仰向けで尻尾を丸めなくても…。あ、言葉通じないか。」


 いまいち状況がつかめないが、とりあえず、子供の上に組み伏せているアセナを抱きかかえ子供の上から引き離す。


「ワンっ!」


「きゃうぅぅん!!」


「こら、脅さない! めっ!!」


 アセナをエインセルへと預け、子供を抱き上げて姿勢を正してあげる。

 子供は丸めていた尻尾をフリフリと元気よく振っている。


「ワン!!」


「きゃうん!!」


 アセナが吠えると、コテンっとひっくり返り再び仰向けでプルプルしてしまう。

 そんなやり取りを何度か繰り返し、アセナが満足したのか、ベッドの上でまるまっている。


『…アセナがすまない。』


『いえ、当然のことなので! 気にしないで下さい!!』


『…え?』


『自分は下っ端なので! はいっ!』


『………。』


 目をキラキラさせてこちらを見つめてくる子供。

 丸くふんわりとした頭、ぴょこんと小さな耳。クルンと丸まった尻尾。つぶらな瞳でこちらを見つめる顔は、なんとなくかまってやりたくなるような、そんな気持ちが生じてくる。


 ……豆柴だ。


豆柴__柴犬をもっと小さくしたような、としか言いようがない顔をした獣人の子。それが最後の一人であった。


 豆柴っ子。

 名をマメというらしい。


 ……マメぇ……


 マメはコボルトと呼ばれる犬型の獣人で、狩猟民族であり普段は群れで行動しているらしい。群れのボスをリーダーとした集団を形成し、ボスは群れの為に、群れはボスの為に生きるという。話を聞くに狼の生態に近いのだろうか。


「あ、だからアセナはあんな行動を取っていたのか。」


 あれは群れのボスを決める為の示威行為だったのかもしれない。


「アセナもそういった事には意外と厳しいんだな。」


 アセナも妖精とはいえ犬、思うところがあったのだろう。




 一通り紹介を終え、ふと窓の外をみると、すでに空が淡いオレンジへと染まっていた。結構な時間経過していたようだ。今日は皆色々とあり疲れただろうと思い、その日はひとまずこれで終了とし、そのまま休むことにした。ただこのままでは皆、特に子どもたちは腹を空かしているだろうと思い、外で買ってきた食事を皆に振る舞うことにした。皆美味しそうに食べていたので、やはりお腹が減っていたのだろう。


 彼女らの体を見るに、捕らえられていたとはいえ、ある程度は食事も与えられていたのだろう。しかし、それでもやはり満足に食べることが出来たわけでもないように思える。しかし今は心配する必要はない。皆腹いっぱいになるまで食べてほしいものだ。



 皆が食事をしている間に、宿屋の受付に向かい部屋をもう一室借りてることにする。さすがにこの人数だと数が多すぎるので二部屋にわけることにしたのだ。ただ、万が一の事を考え、アセナには子供らの部屋で寝泊まりしてもらうことにした。もし何かが起こったとしても、アセナがいれば大丈夫だろう。



 食事を取り、長い一日を終え、子どもたちは久しぶりに穏やかな夜を過ごしていく。






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 




 窓の隙間から暖かな光が室内を明るく照らしている。外では町の住人が元気よく活動を始めている。そんな町の雑多な音を聞きながら、ベッドに腰掛け、これからの事に思いを馳せる。


「ん、どうしたのよ。神妙な顔をしちゃって。」


 同じようにベッドに腰掛け足をぶらぶらさせながらミミが顔を覗きながら聞いてくる。自分では気づいていなかったが、微妙な表情をしていたようだ。


「いや、彼女らの事を考えていたんだ。」


「あの子たちの事?」


「うん…」


 スクォンクに頼まれた時、そこまで深くは考えていなかった。

 彼から話を聞いた時、もちろん助けたいとは思ったが、それはあくまでついで。 主な理由はやはりピピィを守る為の、露払いが目的であった。


 助けたらそれで終わりだと思っていた。

 

 だからそこまで考えが及んでいなかった。


 助けた後のことなど。



 昨日助けた者たち。

 彼女らはまだ幼い子供であった。


 一人では生きていくことの出来ない、まだ小さな子供だ。

 本来であれば、親元で庇護を受けながら暮らさなければならない。

 大人が守らねばならない。

 そんな小さな存在だ。


 彼女たちは、人間の手によって囚われていた。

 そして今、助け出すことが出来た。

 ここまではいい。



 だがその後はどうする?

 


 後のことは何も考えず、そのまま彼女たちを放置するのか。

 まだ小さい子供を?

 そんなことが出来るのか?


 ではどうする。

 彼女たちを親元へ、故郷へ送り帰す。

 それも一つの手なのかもしれない。

 しかし、彼女達は故郷を飛び出してきたのだ。例え故郷に帰った所でそこに彼女らの居場所はない。また同じ道を辿るだろう。


 自分の居場所を求め、幼いながらも懸命に生きてきた。

 そんな彼女らを見捨てる…。


 もしこれがなんの関係もない見ず知らずの子だったら、ここまで考えることはしなかっただろう。自分は聖人君子ではない。すべての者を助けることなど出来るはずもなく、またやろうとも思わない。


 しかし、彼女たちは、もう見ず知らずの子供ではなくなっていた。

 互いに顔を合わせ、自己紹介をし、一緒に食事をした。

 そんな仲になってしまっていた。


 そんな子らを見捨てることが出来るのか__。


 そして、それだけではなかった。


 彼女らに、ある姿が重なってしまうのだ。



 元いた世界。

 まだ自分が学生だった頃。

 側に小さな女の子がいた。

 自分が助けた女の子。

 自分のせいで身体と心に深いキズを負わせてしまった女の子。

 それでも懸命に生き、己の不幸を物ともせず、立派に成長していった女の子。


 そんな女の子の姿が子供たちに重なってみえるのだ。


 そういえば、年頃もちょうど同じぐらいかもしれない。

 そんなことを考えていた。



 昨日から頭の中で、ずっと考えを巡らせていた。

 どうするべきか。

 いや、何が出来るのか。



「なぁ、ミミ。」


「なに?」



「俺の考え__聞いてくれるかな。」














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