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今どきハンドガンだけで異世界とか地味すぎる!!  作者: ヤナギ・ハラ
第三章 小さな仲間 守るべき子供たち
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43 訪問者

 宿屋の一室に、静かな寝息が聞こえてくる。

 部屋に設けられたシンプルなベッドの上で、ピピィがスヤスヤと寝ており、その隣ではアセナがピピィに寄り添うようにして体を丸めて一緒に寝ている。


 通りでの件の後、一先ず落ち着こうと宿屋に戻り休んでいるところだ。気持ちを落ち着かせる為にピピィをベッドへと運び、優しく頭をなでてあげていると、だいぶ落ち着いてきて、今ではすっかり安心して寝入っている。


 エインセルも同じ様にピピィの頭を優しく撫でながら、ピピィの寝顔を見てやさしく微笑んでいる。


「大した怪我にならなくて本当に良かったよ。」


 エインセルがほっとしたように口にする。彼女の言う通りだ。本当に大事に至らなくてよかった。


 先程のことを思い返す。あの時、荷馬車に近寄っていたピピィに対して乱暴を働いた男。そしてその後、姿を表した商人の男。一見どこにでもいるような旅の商人のように見えるが、とてもそうとは思えなかった。そして、気になることがもう一つ。あの荷馬車についてだ。


 ピピィはあの荷馬車のことが気になり近寄っていった。そしてその後、男によって乱暴されてしまったのだ。その男は荷馬車の御者であり、あの商人と一緒に旅の途中のようであった。つまり、あの荷馬車は商人の物であり、荷馬車の中身は男が扱っている商品ということになる。


 そこで一つの疑問が生まれる。。

 あの騒動の時、何が起こっても対処出来るように常にマップを確認していた。そのお陰で背後から襲ってきたもう一人の男の存在に気が付いたのだ。その時、確認していたマップには複数のマーカーが表示されていた。ピピィに乱暴した男、背後から襲ってきた男、商人の男。

 しかし、その場に居たのは奴らだけではなかった。


 荷馬車の中にも複数のマーカーが表示されていたのだ。


 別に馬車の中に人が居たとしてもそれは不思議ではない。もともと馬車は人を運ぶための乗り物なのだ。しかし、荷馬車とうのは、その名の通り荷を運ぶための物だ。人を沢山乗せるのであれば馬車か、もしくは幌馬車が一般的だ。

 別に荷馬車に人を乗せてはいけないという決まりはない。それに商品を運ぶ旅の途中というのであれば、護衛として荷馬車に人が乗り込むということも十分考えられる。

 しかし、それでは説明がつかない事がある。もし護衛で荷馬車に乗り込んでいるのであれば、あの騒動の時に、外に出てこないというのはおかしい。あれだけ揉めたのだ。対処しないのであれば護衛の意味がない。ということは、あの荷馬車に乗っていたのは護衛以外の目的があって搭乗していたということになる。

 いったい何のために。


 そして気になる点が他にもあった。

 荷馬車の開閉口に(かんぬき)が設けられたいたのだ。


 外側に。


 もし野党などの襲撃に備えて閂を設けるのであれば、それは内側にする必要がある。外側に設けては意味がない。そうなってくるとあの荷馬車の構造は理に適っていない。あれはまるで中にいる者の逃走を拒む為に外側から閂を掛けるかのようだ。そしてあの補強。あれは少々内側から暴れられても破壊できないようにしているかのようであった。


 商人の男が所有する荷馬車の中に複数のマーカーが表示されていた。

 これが意味することは恐らく____





「…シュン」


 エインセルが何かを知らせるように声をかけてきた。


「うん、わかってる。」


 短くそう答え扉の方へと視線を向ける。

 ちょうどその時、扉をノックする音が聞こえてくる。

 マップを確認すると扉の向こうに、一つのマーカーが表示されている。

 油断なく扉の向こうを警戒する。


 その存在には少し前から気が付いていた。

 通りでの騒ぎの後から、後を追うように付いて来ていたのだ。


 最初はあの商人が寄越した偵察かと思ったが、しばらくマップで観察していたが恐らく違うであろうと結論付けた。このマーカーは一度も商人と接触していなかったからだ。いや、商人だけではない。このマーカーは他の誰とも接触していなかった。


 このマーカーはいった何者なのか。

 そして、何故今になってこちらに接触してきたのか。


 マーカーを確認する。その表記は白である。つまり敵ではないということだ。しかし、油断していいというわけではない。何かあっても対応出来るように、ホルスターに手を掛ける。


『誰だ。』


 扉の向こうに声をかける。

 すると扉の向こうでビクッと驚いたような気配がする。

 しばらく待ってみるが、反応を起こさないので、再度声をかけようとすると、扉の向こうから微かに、聞き取れるかどうかという位の小さな声が聞こえてきた。


『…す、す、すいません…です。 は、は、話ししたいことが……。ごめな、さい。あ、あの…。』


 震える声で、しどろもどろに、途切れた途切れに言葉が聞こえてくる。驚いているのか、怖がっているのか、その声からはとても平静とは思えない、しかし必死さがありありと伝わる喋り方で話しかけてくる。


『あ、あ、、あの…。お、お、おいら…。その…。』


 しかしその要領をえない話し方に、このままでは埒が明かないと思い、警戒をしながらも、近づいていって扉を開ける。


 扉を開けると『ひぅ…っ!』と悲鳴のような息を飲む声が聞こえてきた。

 その声のする方へと視線を向けると、そこには、口をパクパクさせ酸欠なりかけている小さな犬が目を見開いてこちらを凝視していた。


 見開いた目からは大粒の涙が止まることなく流れ出しており、床に大量の水たまりを作っていた。そして泣き続けている犬の体には、至る所に大量のアザの後が見て取れた。それこそアザがない場所を探す方が難しいぐらいの数である。


 そのあまりの惨状に思わず声を失う。


『あ、あ、あ、 お、 お おいら…。』


 体中にアザを作って、涙を流しながら、必死になって声を出そうとしている。


『お、お、おいら』


 言葉を最後まで聞くこなく、すぐに目の前の犬を抱きかかえる。そしてそのまま部屋へと連れて行き、空いているベッドへ下ろす。


『お、あ、 あ、 え え? 』


 いきなりのことに驚いている犬を横目に、ストックから救急キットを取り出し、急いで治療を始める。


『え、え? あ、あ』


『大丈夫! すぐ治療するっ! もうしばらくの辛抱だぞ。』


 何故こんな酷い事に!?

 いや、それよりも今は治療することが先決だ。

 命に別状はないようには見えるが、だからといってこのまま放おって置く訳には行かない。救急キットを使い今できるだけの治療をする。

 痣がある箇所に塗り薬を塗り、ガーゼを当て包帯を巻きつける。痣の場所が多いので結構な作業だが、それでもその全ての箇所を処置を終える。


『これを食べて。元気が出るぞ。』


 さらにレーションを取り出し、犬の前に差し出す。

 最初は戸惑っていた犬も、有無を言わせぬこちらの様子に観念したのか、レーションを口にする。口にした瞬間驚きの表情を見せるが、その後は最初の戸惑いが嘘のように勢いよく食べ始める。


 レーションは摂取することで多少の怪我や体力を回復することが出来る。レーションとキットを両方用いれば相乗効果でさらに回復出来るだろう。


 そう思って犬の様子そ伺っていたのだが、いつまでたっても痣が消えることがない。レーションと救急キットを使用したというのに、一向に完治する気配がない。


『どういうことだ? どうして傷が治らない…!? 治療を阻害しているんだ? それとも…、 キットが効かないのか。 なら薬草とかで治療を…。』


 何か別の方法で治療をしなければ。

 そう思っていたら、犬がおずおずした様子でいる。


『あ、ああ…、あの、その…。 心配してくれて ありがとう、です。 でも大丈夫です。 こ、これ…怪我してるわけではない、です。』


『なんだって?』


『こ、これ、生まれつき、あ、アザ、ある、です。だから…、ち、治療しても、消えない。』


 犬は瞳に大きな涙を浮かべこちらを見つめてくる。


『ここ、こんなに、心配してくれる人。 ああ、あんまりいないから、 お、おいら、嬉しい、な。』


 涙を流す顔に、微かな笑みを浮かべそう応える。

 そこではたと何かに気が付いた様子の犬は、改めてコチラに向き直る。


『じ、じ、自己紹介がまだったった、です。 お、おいら、スクォンクって言います。も、も、森に住んでいる、妖精 です。』


『妖精?』


『う、うん。森で、ひ、一人で、暮らしてたんだ。お、おいら、こんな、み、見た目だろ? だから、ず、ずっと一人で暮らしてたんだ。』


 犬の妖精__スクォンクは伏し目で手をモジモジさせている。


『こ、こんな、見た目だから、人から、わ、笑われるのは、わかってる、んだ。おいら、醜いの、自覚してるんだ。』


 涙を流しながら、それでもなんとか言葉を続けている。


『で、でもな。そんな、おいらの見た目でも、き、気にしないって言ってくれた、友達が、い、いるんだ。 お、いらの大切な、初めて出来た、と、友達なんだ!』


 そこまで言ったスクォンクが、これまで以上に涙を流し、嗚咽を漏らしながら、必死に言葉を伝えてくる。





『お、お、お願いします。 お、お、おいらの友達を、た、助けて下さい。』


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