表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今どきハンドガンだけで異世界とか地味すぎる!!  作者: ヤナギ・ハラ
第三章 小さな仲間 守るべき子供たち
42/79

40 マチェット

 マチェット、元の世界では中南米の現地人が草木や藪などを切り開く為に使っていた山刀で、農具として幅広く使われていた。

 そしてそれは何も農具だけに使われているわけではなく、その幅広い用途から軍用のサバイバル道具としても採用されているものもあった。破壊力もあり、そして耐久力もあるそれは、世界中で使われていたのだ。


 そして、それは現実の世界だけではなかった。マチェットはゲーム世界でも幅広く人気があり、FPSにおいてはメジャーな接近武器として採用されることが多かった。そしてそれは、この世界に転移する直前にプレイしていたゲームにも登場していた。


 マチェットを見た瞬間、何故か、ある感覚が訪れた。


 ――使える、と。


 そしてマチェットを手に取った瞬間、その感覚が確信へとなった。

 この武器の使い方を知っている。


 それは___そう、銃を手にした時と同じ様に。バヨネットナイフを手にした時と同じ様に。ゲームで使っていた時の感覚と同じ様に扱えるのだ。


 何故そのような感覚が訪れたのか。これは能力で具現化したものではない。実際にこの世界に元からある物だ。しかし、使えるのだ。


 手に取ったマチェットを、感覚を確かめるように、動作を確認するようにして扱う。やはりその使い心地は手に馴染むものだった。


『…お前さん、それを武器として扱えるのか。』


 マチェットを手にしている姿を見ていたトカゲ店員が、驚いた表情でこちらを眺めていた。そこで、あらためてここが店内だと思い返し、店の中で刃物を振り回すというとんでもない行為にひどく焦ってします。


『 ! …これはすまない。つい我を失ってしまった。 申し訳ない。』


 マチェットを棚へと戻し、頭を下げて深く謝罪する。たとえ憲兵に突き出されたとしても文句が言えない行為だ。


『いや、それは構わないさ。それにしても、お前さん剣術は素人じゃなかったのか?随分堂に入っていたように見えたが。』


『以前これと似たような物を使っていた事があったんだ。それで少しは使い方を知っている。』


『そいつは西南の山岳部族連中がよく使う山刀だが、お前さんそっち方面出身なのかい?』


『いや、そういうわけではない。ただ便利で使っていた。』


『へえ、そうなのか。それじゃあ、短い方の得物はそいつにするかい?』


 目の前のマチェットを確認する。まさか異世界で手にすることが出来るとは思ってもいなかった。これが使えるとなると、戦術の幅が広がる。これは思わぬ収穫だ。これを逃す手はない。


『ああ、これにする。そうだな…。 これを20揃えてもらえるか。』


『20!? お前さんっ、そんな大量にどうするっていうんだい?』


 マチェットがゲームと同じ様に使えるのであれば、これは接近武器としてだけでなく、投擲武器としても使えることになる。この重量での投擲は鉄板ですら貫くことが出来るとても強力なものだ。ゲームのような即死効果はないにしても充分武器として通用するだろう。

 20という数は投擲用としての使用も考えているからだ。能力で具現化した銃やナイフとは違い、これは投げたらそれまでであり、勝手に回収されることも、ストック数がもとに戻ることもない。なのでそれを考慮してのことだ。


『用途としては、接近用だけではなく、消耗品として、あと予備も含めての数なのだが、この数を揃えるのは難しいか?』


『いや、これは武器ではなく道具として置いてある物でもあるから他の武器よりかは数が揃っているから無理ではないが…。本当にその数が必要なのか?』


『ああ、頼む。』


『ったく…。こんな奇妙な注文する奴、なかなかいないぞ。お前さん変わってやがるな。』


 トカゲ店員は奥へと向かっていく。

 暫く店内で待っていると、再びカウンターへと戻ってきた。

 仲間を引き連れて。


『お前さんが変な注文をしおった輩か。』


 先程のトカゲ店員が連れてきた人物も同じ種族なのだろうが、風貌が少し異なっていた。顔には深いシワが刻み込まれており、長き時を生きた独特の雰囲気が漂っている。おそらく年配のリザードマンなのだろう。しかしそんなことはどうでもいい。それよりも気になることがあり、それに目を奪われてしまっていた。

 目の前のそれはどうしても信じられなかった。


 顎から髭のような毛が生えていたのだ。


 それは髭か?

 顎髭か?

 トカゲって髭生えのか?

 というか、爬虫類って毛そのものが生えるものか?

 この世界の爬虫類は違うのか?

 そもそも目の前の種族はトカゲではなく、まったく別物なのか?


『なんじゃ、お前さん。ワシの顔に何か付いとるのか?』


 立派なものが付いてますけど?

 

 そんな無礼な事言えるはずもなく、喉まで出かかったものをぐっと飲み込む。


『いや、なんでもない。 あんたは?』


『ワシはこの鍛冶工房の棟梁じゃよ。それで、その山刀を20欲しいというのじゃな?』


『ああ、そうだ。駄目か?』


『いや、駄目ではないが今すぐには無理じゃ。数が足らん。だから一から造らなきゃならん。しかしこっちも暇ではないのじゃ。今すぐに造る時間は開いとらん。だから他の作業の合間に造ることになる。じゃから数を揃えるとなると、そうさな……あと5日はかかるじゃろう。』


 確かにいきなり20という数を揃えろとなると、難しいのかもしれない。


『それでかまわない。では頼む。』


『ふん、おかしな奴じゃ。取り敢えずは、今ある数だけ持っていけ。』


『助かる。』


 トカゲ棟梁は話は終わったとばかりに奥へと引っ込んでいった。作業へと戻っていったのだろう。


 店内に残ったトカゲ店員は今あるだけのマチェットを集めカウンターへと運んでいく。


『一本14ネルだから、二十で、ええと…____』


『280ネルだ。』


『…お前さん計算早いな。算術が出来るのか。ちょっとまってな。___よし、確かに280ネルだな。』


 何やら道具を使い数を確かめていたトカゲ店員が、280という数に間違いが無いことを確認する。おそらぐあれはこの世界での計算機のようなものなのだろう。


 懐の革袋から金貨2枚、大型銀貨8枚を取り出しカウンターへと置いていく。


『きっちり280ネルだ。確認してくれ。』


 カウンターに置かれた金貨を手に取り、測りのようなものに乗せていく。おそらぐ偽造かどうか調べていると思われる。銀貨程度なら問題ないが、流石に金貨ともなるとこういった手順が必要になってくるのだろう。

 カウンターに置かれた全ての硬貨を調べ終わると、納得した様子で硬貨を回収する。


『確かに280ネル。受け取った。それで、どうする。このまま今あるやつ持っていくか? それとも後日まとめて受け取るか?』


『とりあえず、二つだけ受け取る。残りは後日頼む。』


『了解した。拵えはどうする?』


 トカゲ店員に言われてそのことに頭がいっていなかったことに気が付く。普通ならば刃物を抜き身で持ち歩くことはしない。いくら能力で収納できるとはいえ、必要だろう。しかし20となると…。


『とりあえず、二つほど鞘をつけてくれ。残りの分は必要ない。もし必要になったらその時に改めて調達する。』


『そうか。この山刀はすこし形状が特殊だからそれ専用に作らなきゃならん。日が傾くまでには出来上がってるから、その時に取りに来てくれ。山刀と一緒に渡す。』


『わかった。』


 追加で鞘の代金11ネルを渡す。

 トータルで結構な額にはなったが、予想外の物を入手することが出来てたので、その事を考えるとこれで良かったと思える。ちなみに、両手剣の方はキャンセルすることにした。扱える武器が存在するのであれば、そちらを使ったほうが断然よい。無理に扱えないものを使用することはない。長物とマチェットではリーチが違うが、それでも使える武器の練度を上げたほうが良いだろう。


『それではまた後で取りに来る』


『はいよ。』


 トカゲ店員に別れをつげ店の外へと向かう。

 思わぬ収穫に顔を綻ばせる。



 この店を紹介してくれたカピバラ店員にあとで感謝をしなければな。

 


評価 コメント ブックマーク お待ちしております!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ