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今どきハンドガンだけで異世界とか地味すぎる!!  作者: ヤナギ・ハラ
第三章 小さな仲間 守るべき子供たち
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38 宿屋の驚き

 この世界に転移してすでに数ヶ月の月日が流れたが、これほどまで異世界に来たのだと実感することはあまりなかったかもしれない。実際今目の前で起こっている現実は否が応でもここが異世界なのだと感じさせるものだ。


「これこそまさにザ・異世界ってやつだな…。」


 目の前に繰り広げられている光景、そこでは多種多様の種族が当たり前のように 町に存在しているのだ。まさに人種の坩堝の名に相応しいものである。いや、この場合は人種というより種族と言った方が適切なのだろう。そんなことを頭の隅で考えながらこの状況に圧倒されていた。


 初めて訪れた町はそんな沢山の種族で溢れかえっていた。

 全身を鎧のような硬い皮膚に覆われている者、それこそ本当に鎧のような鱗に全身覆われている者、巨大な角をその頭に持っている者、身長がこちらの膝までしかないような小さき者、そのどれもが元の世界ではありえない種族であった。


 まるで田舎から出てきたお上りさんのように、呆然と町を見つめていると、ぐいっと腕を引っ張られる感触でふと我に返る。

 そこには腕にしがみついているピピィとエインセルがいた。


「ピィ! シュン、ピピィ一緒にいるから平気だよ!」


「まったく、本当にキミは。 そんなにぼけーっとしていると危ないよ。」


「……ごめんなさい。」


 どうやらこのパーティーで一番危なっかしかったのは自分で間違いなかったようだ…。気を引き締めて行かなければ。


「さてと。町についたけど、これからどうするんだい?」


「とりあえず、泊まれる宿を探そう。」


 森の中ならともかく、町の中での野宿は流石に不味い。皆が泊まれる宿を取り、そこを拠点として町を散策するべきであろう。

 

 宿を探す道すがらこの町の様式について観察する。森が開けた場所に存在するこの町は川沿いを列村のように長い列に家々が立ち並んでいる。建物の様子はぱっと見木造建築が多いように見られる。これは森の木々を利用してのことだろう。そして木造だけではなく、石造りの家屋も少なくない数立ち並んでいる。これらの石は川沿いから調達したのかもしれない。そして、数は少ないが煉瓦作りの家もちらほらと見かける事ができた。

 町の様子は、どこか宿場町を連想させるような、そんな雰囲気を感じさせるものであった。もしかしたらこの町は、都市間をつなぐ中継都市のような存在なのかもしれない。


 しばらく通りを歩き、それらしい建物を発見する。周りの家より少しばかり大きな木造のその建物は、入り口の上に宿屋の屋号の様な物が掘られた木板が掲げられている。家の作りもしっかりしており、見た感じ良さそうに見えた。


 実はここまでの道すがら、宿屋っぽい建物は幾つか目には付いてた。しかし、その建物の雰囲気があまり良いものではなく__作りがというよりガラがよろしくないという意味で__そこに泊まるのに些か不安があったのだ。自分一人であればそんな安宿でも問題ないのかもしれないが、こちらにはピピィやエインセルといった見た目が小さな子達もいる。その為要らぬトラブルに巻き込まれるのを危惧してスルーしていたのだ。


 宿屋の扉を開き中へと入る。室内はなかなかどうして、クラシックな作りがいい感じな雰囲気を醸し出している。趣向を凝らした机や椅子、そして柱には細かな細工が施されている。壁や柱に掛けられたランタンが室内を暖かな光で照らしている。高級としうよりかは、落ち着いていて、どこか上品に感じる。


 部屋のすぐ手前のカウンターの上には、ベルのような物が置いてある。おそらくこれで店の者を呼ぶのだろう。そのベルを取り、左右に振って音を奏でる。高く澄んだ音が室内に響き渡る。


クルルゥ(はーーい)キュルクル(今行きますー)。」


 部屋の奥から長閑な声が聞こえ、そして間を置かずにカウンターに店の者が姿を表す。


クルルル(はいはーい)クルクルルル(お客さんだね)クルルク(泊まりで)クルクルル(いいのかな)クルクル(それとも)クルックル(食事かい)。」



 奥から現れた人物…、その容姿に思わず声を失う。

 ずんぐりした体型に短い手足、胴と首が一体となっており身体にそのま大きな頭が付いたかのような体、小さくそして短い指はそれで上手く物を扱えるのか心配になるほどだ。長く伸びた鼻筋につぶらで小さな目と耳がその者をよく印象づけている。


「カ……カピバラ…?」


 そう、目の前に居るのは、紛れもないカピバラである。世界最大の齧歯類でその愛くるしい表示や仕草、体型から日本で大人気の巨大ネズミ。そんなカピバラが二足歩行で言葉を喋っている。これには驚きを隠せない。


クルル(あ、あの)… クル(もし)?」


 あまりの驚きで固まっていたのか、目の前のカピバラに不審がられてしまった。直に気を取り直し、何でもないように振る舞う。


『あ、いや、申し訳ない。宿泊したいのだけど、部屋は空いているかな。』


『おや、お兄さん遠くから来た人?』


『まぁ、そんなところさ。』


『そちらはお連れの皆様でよろしいので? …って、ありゃ。お犬さんもご一緒ですか。』


 カピバラ店員はアセナに視線を向け、一瞬驚いたような表情を見せる。…とはいえ、カピバラの表情を正確に読み取ることが出来るわけでもなく、なんとなく驚いたのだろう、という感じでしかないが。


『この子は仲間なんだが、この宿では犬の宿泊は断っているのか?』


『いえ、そういうわけではないのですけど。厩舎ではなく宿泊ですよね?それだと大部屋はすこし難しいかもしれないので個室になりますけど、よろしいですか?』


 大部屋とは、確か宿泊客どうしが一つの部屋で雑魚寝する部屋だったと記憶している。たしかにそんな部屋に犬が一緒だと要らぬトラブルになる可能性もある。それであれば個室を借りたほうが良いだろう。


『ああ、問題ない。個室で頼む。』


『部屋はどうします? 一室、それとも二室取りますか。』


『そうだな…、みんなどうする?』


『一部屋で問題ないんじゃないかな。シュン以外はこの通り体が小さいからね。』


『ピピィもそれでいいかい?』


「ピィ? ピピィ、シュンと一緒!」


『はは。 それじゃあ一部屋で頼む。』


『了解しました。それでは一部屋4ネルと50ピリンになります。』


 この辺りで用いられる通貨は事前にフェノーに教えてもらっており、1ネルが銀貨一枚、10ピリンが銅貨一枚、1ピリンが鉄銭1となっている。ちなみに金貨は100ネルである。

 懐から袋を取り出し、銀貨4枚と銅貨5枚をカウンターの上へと取り出す。


『はい、確かに。 ではこちら鍵になります。部屋は階段を上がって一番左奥になります。明日の昼前までの宿泊となりますので、時間が過ぎた場合もう一泊料金発生しますので注意して下さいね。』


『了解した。』


 カピバラ店員から鍵を受け取り部屋へと向かう。

 あてがわれた部屋は10畳程度の広さで寝台が二つと簡易な机と椅子が置かれていた。室内は程よく清掃されており、物語で登場するような薄汚れている部屋ではなく安心した。


「思ったよりも清潔感があるし、これは当たりだね。この宿を選んで正解だったかな。」


 通貨の大凡の価値はフェノーにより聞いており、それと照らし合わせて見るが、これで銀貨4枚と銅貨5枚ならば充分良心的な価格だと思われる。持ち合わせにはまだ余裕があるので、しばらくはこの宿に連泊しても良さそうだ。


「さて、俺はこれからちょっと出かけてくるけど、皆はどうする?」


「そうだね、部屋に籠もっていてもつまらないしキミについていくよ。」


「ピィ! ピピィも行く!」


「ワン!」


 皆が一緒に行くというので、断る理由も無いので一緒に出かけることにする。それに町には何があるかまだわからないので、皆で一緒に行動した方が良いのかもしれない。


「それで、何処に行こうというのだい?」


「ちょっと鍛冶屋に行きたいと思うんだ。」


「鍛冶屋かい?」


「ああ、色々と調達したいものがあるんだ。」


 そう、鍛冶屋で調達したいもの。



 新たな武器の購入だ。


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