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今どきハンドガンだけで異世界とか地味すぎる!!  作者: ヤナギ・ハラ
第ニ章 新たな旅立ち 新しい仲間
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26 妖精とレーション

 エインセルに招待され彼女の家へと足を運び、そこで彼女の友である同居人の妖精を紹介されたのだが、その姿はエインセルとはまったく異なる容姿をしていた。小柄で中性的な容姿をしているエインセルに対し、フェノーと呼ばれた妖精は、見上げる程に巨大な身体をしていた。二メートルは超えるであろう巨体は、その全身を緑色の毛のようなもので隙間なく覆われていた。


**(やぁ)***(客人よ)。 ****(我が家へ)****(ようこそ)****(歓迎する)。」


 現れた妖精に言葉をかけられるが、その言葉はこちらには伝わらない言語である為、返答することができない。いや、もし共通語で話しかけられたとしても、驚きですぐには応えられなかったかもしれない。


『フェノー。彼にはその言葉は伝わらないよ。こっちの言語を使うといいよ。』


******(そうなのか)  **(ふむ)…」


 フェノーは少しの間思考し、そして新たに言葉を口にする。


『これでどうかな。 言葉は伝わるかね、客人。』


 発せられた言葉はこちらにも判る言語、共通語であった。フェノーも共通語を使うことが出来るようだ。

 彼の言葉に頷いて応える。


『ああ。 判る』


『そうか、それはなにより。 では改めて。 ようこそ客人よ。歓迎しよう。』


『招待 ありがとう。 シュン だ』


「ピピィだよ!」


 彼に自己紹介をする。ピピィも笑顔で挨拶をする。


『そうか。 シュンにピピィだね。 それと… そこの精霊は君たちの友人なのかな。』


『ああ、 精霊 ミミ 』


 ミミはひらりと飛んで挨拶をしてみせる。


『そうか。 シュンとピピィ、そしてミミだね。 よろしく。 私はフェノゼリーだ。』


 フェノー、正式名はフェノゼリーというらしい。フェノーは愛称なのだろう。

 フェノーは律儀に挨拶をしてくた。彼はその巨体に反し、どうやら穏やかな人物のようである。


『何もないところではあるが、ゆっくりしていくといい。』


 彼は挨拶を済ませると、ゆっくりと家の中へ入っていく。


『さぁ、入っておいでよシュン。ピピィとミミもさ。』


「ピィ! エインセルのおうち!」


 後に付いてくようにしてエインセル、そしてピピィも家の中へと入っていく。


「まさか、エインセルの同居人があんなにも大きな妖精だったとはね。彼には驚いたな。」


「シュン驚いてばかりじゃないの。少しは慣れなさいよ。」


「そうは言っても、びっくりしちゃうんだから仕方ないじゃん。 本当元の世界とは何もかも違うんだってつくづく思い知らされるよ。」


「まったく…。」


 少々呆れ顔のミミを頭の上に乗せながら、自分も彼らの家へと入っていく。





――――――――――――――――――――




『美味しい。』


 招かれた家の中で、自分たちはテーブルに座り、出された飲み物で喉を潤していた。

 陶器に注がれたそれはお茶に近い味わいではあるが、日本で飲まれていた紅茶とも緑茶とも違う何とも言いようのないものであった。しかしマズイかと言われるとそうではなく、癖もなく喉越しも良く、どちらかといえば、いや普通に美味しかった。


『そうか。 口にあってよかった。』


『フェノーは自家栽培をしていてね。そのお茶もフェノーが栽培した葉を煎じてるんだ。彼、体躯に似合わず細かいことが好きなんだ。』


 エインセルはクスクスと笑いながらお茶を優雅に飲んでいる。


 エインセルに言われて目の前の出されたお茶に目を向ける。

 透明感のあるミドリのお茶はスッキリしていて飲みやすい。

 茶を自家で栽培するとはよほど凝っているのだろう。



 家の中には色々なハーブのようなものが鉢に植えられている。そのどれもが綺麗に手入れされている。またハーブだけではなく、花や果実が実っているものもある。


 人は見かけによらないものだ。


「ピィ! ピィ!」


 ピピィは美味しそうに出された茶を飲んでいる。彼女もお気に召したそうだ。


『気に入ってもらえて、何よりだ。』


 全員分の茶を入れ終えたフェノーは、棚からカゴのようなものを出すと、中に入っている物をとりだし、器に移していく。


『よかったら食べてくれ。お茶によく合う食べ物だ。』


 フェノーはご丁寧にもお茶請けまで出してくれた。細かな所まで気を配れる妖精である。


『ありがとう。 頂く。』


 出されたお茶請けを手に取る。それは小さく一口サイズにまとまっていて、薄く伸ばされていた。ほんのりとバターの香りがし、甘く香ばしい匂いが鼻をくすぐる。


「これ… もしかして、 ビスケットか?」


 手にしたソレは元の世界でも馴染みのある洋菓子にすごく似ていた。

 ビスケットは小麦粉にミルクやバター、砂糖などを混ぜ焼く菓子であったと記憶してるが、まさかここで目にするとは思わなかった。


 出されたビスケットを手に取り口に運ぶ。歯ざわりは現代のビスケットより少し硬く感じたが、程よい甘さが口の中に広がり、その風味も相まってとても美味しい。


『これ 美味しい。 フェノー 作った か?』


『口にあってよかった。これは家の裏で栽培しているコムギという稲を粉末にして、その粉をミルクや果実などと一緒に練り込んで、それを窯で焼いたもの。』


 その話を聞いて思わず目を丸くする。


 確かにビスケットには驚いたが、それよりも驚いたのが小麦である。

 驚嘆すべき事に、フェノーは小麦を自家栽培していたのだ。

 まさか小麦にまで手を出しているとは…。


 小麦を栽培しているということは、そこからビスケットの材料となる小麦粉を作ったのだろうか。


 そんなビスケットについてだが、ある事に気がつく。


「…そうか! 全粒粉だ。」


 これらのビスケットは恐らく全粒粉で作られたものだ。

 現代のビスケットでは小麦粉を使用するが、その小麦粉は表皮、胚芽、胚乳を分けて精製して作られる。対して全粒粉はそれら全てを分けることなく粉にする。その為小麦粉と違い少し茶褐色を帯びる。しかし、その分栄養価は小麦よりも高い。

 先程ビスケットを食べた時少し固く感じたが、恐らく全粒粉を使用したからだろう。


 再びビスケットを口にする。その独特の触感と風味と味、やはり全粒粉で間違いないだろう。



 そんな思考を余所に隣ではピピィが美味しそうにビスケットを口にしている。


「ピィ! ピィ! これおいしいねー♪」


 彼女は何に対しても全力で楽しむので、見ていて気持ちが良い。


「あら、これって…。」


 そんな中、出されたビスケットを見てミミが何かに気がついたようだ。


「ミミ、どうかしたの。」


「シュン。これってアナタのレーションに少し似てないかしら。」


「レーションに?」


「ええ。」


「…ああー。確かにそうかもしれないね。」


 レーションはその作りから保存食として用いられるが、実はビスケットもその作りから保存食として用いられることがあるのだ。ただ、レーションほど保存性は無いのであくまで代用としてではある。しかしのそ栄養価は非常に高く短期間であれば十分に代用出来るほどである。


 そのことをミミに伝えると、納得した表情をする。


「なるほど、だから似ているのね。 パクっ。 んー、味はまあまあね。」


「こら! 頂いたものにそんなこと言うんじゃありません!」


「あら、だって本当のことじゃない。」


「ったく… この精霊さんときたら…。」


 思わず頭を抱えたくなる。

 あけすけというか何というか、ミミは良くも悪くも正直過ぎるのだ。正直なのは悪いことではないと思うが、もう少しばかり物事を考えて発言してほしものである。いや、これは日本人の自分だからそう思うだけで、気にし過ぎなのかもしれないが…。


「ピィ! シュンのもおいしいけど、これもおいしいよ。」


 ピピィ本気(マジ)天使。


 彼女を見習ってほしいものだ。


『それって、先程キミたちが話していたレーションとか言う食べ物の事かい?』


 ミミとの会話を聞いていたエインセルが話に興味を持ったようで、こちらに話しかけてきた。そういえば、彼女にはレーションのことを話していたなと思い出す。


『フェノー くれた これ、 レーション 似てる。』


『へぇ、そうなのかい?』


『 保存、 長く 持つ。 レーション 同じ。』


 ビスケットとレーションの類似をしていて、ふと思いつく。


 折角こうしてお茶請けとしてビスケットを出してくれたのだ。

 こちらもレーションを出して、お返ししても良いのではないだろうか。

 それにエインセルにはレーションをあげる約束をしていたし、それを今果たしても良いだろう。


 そう思い、ストックからレーションを取り出す。

 包装から中身を取り出し、テーブル上の器に置く。


『これ レーション。』


 エインセルは出されたレーションを興味深そうに観察している。


『へぇ、これがそのレーションなんだ。 本当だ。 何となくフェノーが作ったやつに似ている気がするね。』


 フェノーも同じ様に興味を持ったのか、レーションを見つめている。


『ふむ…。確かに似てなくも無い。でも作りは違う。材料も異なる。色んなもの沢山入っている。それにこれ、すごい栄養ある。』


 フェノーは違いに気がついているようだ。見ただけでそれが判るなんて流石である。自家栽培やビスケット作りなどで培った知識や経験から導き出したのだろう。


『よかったら  皆 食べる。』


『おや。 良いのかい?』


『ああ。 フェノー作った それの お返し。』


 更にレーションを取り出す。


「ミミとピピィも、折角だから一緒に食べよう。」


 二人にも同じ様に勧める。勧められた二人はとても喜んでくれた。


「ピィ! ピィ! シュンありがとう!」


「もうっ。判ってるじゃない。」


 ミミにレーションを出さないと頭の毛を毟られるのは目に見えているか。なので毟られる前に出した方がいい。それに、ここで号泣でもされたら恥ずかしい。


『ではボクたちも頂くとしようか。』


『うむ。 シュン、感謝する。』


 エインセルとフェノーも器に出されたレーションを手に取る。

 

 ミミとピピィが美味しそうに食べているのを横目に、手にしたレーションを口にする。


 今のところレーションはこの世界でも好評であった。はたして妖精にも受け入れられるだろうか。


 二人の様子を伺う。

 するとフェノーがレーションを食べたまま、神妙な表情を浮かべてる。

 レーションを持つ手は止まり、一口食べただけである。

 

 この反応は今までにないものであった。

 妖精にはレーションは口に合わなかったのだろうか。

 心配していると、フェノーがボツりと言葉を漏らした。


***(これは)… ****(マズイな)…  **(毒だ)


 それは思わず声が出たという感じであった。その為言葉が戻ってしまっている。


「ピィ? まずい?  どく?  これ、毒違うよ?」


「…えっ?」


 不味い__毒


 どういう事だ。

 レーションが毒だということはありえない。

 これは自分が作ったものではなくてスキル_能力で具現化したものだ。

 そのような効果は無いはずだ。


 では何故…

 彼の口に合わなかっただけ…

 だから不味いとこぼしたのか。

 いや、いくら不味かったとはいえ、いきなり毒なんて普通は言わない。


 まさか…妖精とって有害な物質でも含まれていた…!?

 例えばアレルギー反応のように、他の種族には単なる栄養素でも、妖精には拒絶反応が起こってしまうとか…。他にも、普通の食材_例えば玉ねぎなどは、犬や猫にとっては危険な食材で、体内の赤血球が破壊されてしまうという…。犬や猫にとっては、まさに毒である。それらと同じ事が起きていたら…。それならば彼の言葉にも納得がいく。


「…はっ!! マズイ!!」


 急いでストックから水を取り出す。


「水だ! これでっ!いや、クソ!! 『水  急ぐ!! お腹 洗う!!』 」


 そして救急セットを取り出す。

 救急セットの中身にエピペンという物があり、これはアナフィラキシーショックや、アレルギー反応の進行を遅らせるアドレナリン自己注射薬である。これをー使えば彼らの拒絶反応も緩和出来るかもしれない。妖精に効くか確証は無いが、今は一刻を争う。使うべきだ。


『これ! 治療! フェノー、エインセル! 大丈夫! 』


 ピピィとミミが驚いた様子でこちらを見ているが、今は構っている暇はない。

 

『急ぐ! 早く!』


 二人に詰め寄る。

 これらの処置は一分一秒を争う。

 素早い処置がとても重要になってくる。


 言葉を失っていたフェノーであったが、こちらの慌てた様子に気がつくと、はっとした表情をする。


『シュン、違う。 そういうことでは無い。 誤解させてしまいすまない。シュンのレーションは、毒ではない。安心してほしい。それに味も、とても美味しい。本当だ。』


 フェノーは落ち着いた様子で、こちらに説明するかのように言葉を発する。


「え… どういう_?」


 何を言っているのか分からなかった。

 彼は先程レーションを毒だと言っていたのではないのか。

 聞き違い?

 いや、でも先程の様子を思い返すが、彼は確かに神妙な、困惑した表情をしていた。

 いったいどういうことだ。

 ここに来て言葉の壁が齟齬になってきている。


「ミミ、いったいどういうことか教えてくれ! 彼は何て言っているんだ? 俺には上手く伝わららいんだ。手遅れになったらマズイ。教えくれ!」


 逸る気持ちを抑えてミミに助けを求める。彼女ならば、しっかりと彼らの言葉を理解し意思を伝えてくれるだろ。そんな願いをこめて彼女にお願いする。


「ミミ! 頼む!」


 こちらの焦った様子に、ミミは慌てることなく、若干呆れとも取れるため息をつきながらも、こちらの要望に応える。


「はぁ…。シュン、あなた慌てすぎ。彼は何ともなってないわよ。言葉の意味も何も、彼が言った通り、別に何でもないわよ。」

 

「でも、先程彼は毒だって。」


「だから、毒でもなんでもないわよ。」


 いまいち要領を得ない。しかし、ミミはいたって冷静で、焦った様子は見られない。


『シュン。誤解させてすまない。言葉を考えるべきだった。』

 

『フェノー、 大丈夫 か?』


『ああ、大丈夫だ。』


 フェノーは大丈夫だと言っているが、その顔は嘘を言っているようには見えない。また慌てた様子は見られず、本当に大丈夫なのかもしれない。


『では、どうして。』


 フェノーは何事かを考える仕草をした後、ゆっくりと口を開く。


『このレーションは、とても美味しい。それは本当だ。でもそれだけじゃない。これには、不思議な力がある。それが問題。』


 不思議な力__ゲーム内ではレーションには若干の体力やスタミナを回復させると言った効果があった。それのことを言っているのだろうか。


『レーション 体力 回復 する』


『なるほど。多分それのせい。エネルギー源が凝縮されている。』


『エネルギー 凝縮 ?』


『力の源。それで体力が回復する。術による活性化や治療に近い。』


 この世界では魔法や精霊術などが存在していて、魔力や精霊力を使い様々な力を行使することができる。フェノーが言うには、このレーションによる体力やスタミナ回復はそれに近いということなのだろうか。


『生き物は食べることによって生命を維持している。でも精霊は違う。彼らは大気や大地といった自然のエネルギーを吸収する。それが力の源。そして妖精も、精霊ほどではないが、自然からのエネルギーを得る。』


 フェノーは手にしたレーションを見つめる。


『これは力の源、自然のエネルギーに似ている。そのエネルギーの塊。妖精によく効く。効きすぎる。過剰摂取__強い効力は妖精を酔わせる。媚薬と同じ。』


 フェノーから聞かされた話は、意外なものであった。

 レーションが力の源、これはまだ判る。

 体力の回復などにはエネルギーが消費される。それをその力の源が補うのだろう。

 しかしエネルギーの過剰摂取とはどういったことなのだろうか。

 食べ物ならば栄養を過剰に摂取すると太るのだが、同じようなことなのだろうか。

 エネルギー太り_?

 聞いたことがない。

 それに酔うとも言っていた。

 アルコールの過剰摂取は時として命を奪う場合もある。

 レーションも同じ様なことが起きてしまうのだろうか。


『レーション 食べ過ぎ。  身体 悪い?』


 フェノーにそのことを聞いてみる。

 もし危険なら渡さないほうが良い。


 彼は首を横に振りそれを否定した。


『危険は無い。先程も言った通り、力の源。身体には良い。毒だと言ったのは、妖精にとって、これは魅力的すぎるから。身体をエネルギーで満たされる快感。身体がこれを欲してしまう。』


『つまり…』


『美味しいものに抗うのは難しい。妖精とて同じ。』


 フェノーはゆっくりと指をさす。その先にはエインセルがいた。

 様子がおかしい。

 エインセルはレーションを食べたまま固まっている。

 

『エインセル?』


 名を呼ぶが反応しない。

 彼女は遠くを見ている。

 その目はどこか艶があり、恍惚の表情を浮かべている。


『エインセル! エインセル!』


 彼女の肩を掴み揺らす。


「んぁ… 」


 艶めかしい息をもらした後、はっとしたように気がつく。


『っ…! あぁ、シュンか。これはすまない。少しぼーっとしてしまっていたようだ。』


『エインセル、平気 か?』


『あぁ、平気さ。 それにしても…。 このレーションというのは、なんとも不思議な味…だね。』


 エインセルはその手に持っているレーションを見つめる。

 その目線は次第に色を持つようになり…


『エインセル!』


『…っ! すまない。またぼーっとしていたね。 うん、これは少し…、そう、ほんの少し刺激が強いね。 うん。 嫌いではないよ。』


 手にしたレーションをそのままゆっくり顔に近づけ。そのまま口にする。

 ゆっくりと噛みしめ、その全てを味わうかのように咀嚼する。

 その顔は何処までの幸せそうであり、そして恍惚の表情を浮かべている。




 この感じはどこか既視感がある。

 


 頭の上の、いつもの定位置に座り幸せそうに横になっている。

 それにそっくりである。



「…、 レーションあげたの早まったかな…」





 アレルギーだとなんだとか早とちりした自分がひどくマヌケ思えてきた。





 妖精と精霊が似たような存在だとはいえ、こんな所まで似なくてもよかったのに…。

 



 なんだか無駄に疲れてしまった…。


 一休みしたいな…。 




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