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今どきハンドガンだけで異世界とか地味すぎる!!  作者: ヤナギ・ハラ
第ニ章 新たな旅立ち 新しい仲間
20/79

20 バベルの塔なき世界 <挿絵入>

今回より新章突入となります。

 オークの村を襲ってきた人間たちを排除した後、生存者を引き連れゴブリンの集落に戻ったが、そこでさらなる人間の襲撃を危惧して新たな居住地を探すため集落を放棄し新天地へ向け旅立つことを話し合いで決めた。


 住み慣れた土地を離れるのは大きな不安であるだろう。しかし、集落の皆を危険に晒す訳にはいかない。苦渋の決断だっただろう。

 そんなゴブリン達の為に少しでも手助けをすることが出来ればと思い、今回の集落移動についていくことにした。


 そこで自分に何が出来るのかを改めて考える。

 この世界に転移してまだ日が浅く、情勢などについては何もわからないのが現状だ。なので何処に征くべきかを助言することは出来ない。だが、単純作業などでは役に立つことが出来るのではと考えた。


 先ずは物資移動に関する手助けだ。拠点を移す為にはどうしても大量の荷物などが出てきてしまう。それらを運んで移動するのは重労働である。なのでその役目を引き受けることにした。自分にはアイテムをストックすることが出来るというスキルを持ち合わせている。重量に関してはほぼ無制限だと思われる。まだ詳しく検証した訳ではないのだが、今の所許容オーバーには至っていない。なので、集落で使われていた生活用品などを収納して運ぶことにした。これにより運搬にかかる負担を大幅に減らすことが出来た。


 次に行うのは家畜の扱いについてだ。

 長い距離を移動するのに全ての家畜を連れて行くのは不可能である。家畜も生きていく上で食事をしなければならない。旅の間全ての家畜をまかなうための量の肥料など存在しない。そこで旅に連れて行く家畜を少数にし、残り半数以上の家畜をつぶす事にした。そしてつぶした家畜をアイテムとして収納することにしたのだ。


 しかし、ただつぶしただけでは収納すことは出来ない。これは狩りの時に気がついたのだが、生物をただ殺しただけではアイテムとして判定されず、収納出来なかったのだ。これはおそらく生物を殺してもそれはアイテムではなくただの死体と判定されるからだろう。ゲームでは死体はアイテムというカテゴリーではなかった。あくまで死体であり、収納も回収もできない。死体は時間とともに自然と消滅していくからだ。


 そこである実験をする事にした。

 解体である。


 狩った獲物を解体し、解体したものをアイテムとすれば収納できると考えたのだ。内蔵を取り出し血抜きをし、皮を剥いで肉を部位ごとに切り分ける。皮、肉、骨、といった様にカテゴリー分けしたのだ。すると目論見通りこれらを全て収納することが出来たのだ。

 すぐさま同じ様に家畜を解体していく。これで移動に伴う負担をさらに下げることが出来た。同時に移動時に懸念されていた食糧危機もある程度は回避することが出来た。ストックされるアイテムは収納している間劣化することは無い。なので腐敗する心配することなく肉類を持ち運ぶ出来たのだ。


 こうして集落移動の準備は着々と進めていったのだが、ふとした思い付きから、ある実験を行った。


 住居の収納である。

 家畜は解体することで、それらを収納することができたのだ。

 では同じような事を住居でも出来るのではと考えたのだ。


 実験の結果、住居も収納することが出来た。


 これには自分も驚いてしまった。まさか家まで収納出来るとは。

 これは彼らの家の構造が幸いしたのだろう。

 彼らの家は竪穴式住居の構造にとても似ており、簡易な木組みの上に藁や茅葺を被せる形を取っていた。なのでこれらを種類ごとに解体して分けることがとても簡単だったのだ。解体した家は材料をそのまま収納するので、再び取り出した時、また同じ様に組み立てれば簡単に家を作ることが出来るのだ。もしこれが石やレンガ作りの家であったらこうは行かなかったであろう。解体された家はただの瓦礫となり、再び家として組み立てることは出来ない。


 こうして最大の懸念であった住居の問題も無事回避することが出来たので、全ての準備を終え新たな土地に向けて一行は旅立つのであった。






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇





「ピッピピピ~♪ ピッピッピッ~~♪」


『ギャウギャウギャ~♪ ギャッギャッギャ~~♪』


『オックオクオ~♪ オットットウ~~♪』


 集落を移動するために旅立ったゴブリン達は、苦労しながらもゆっくりと森の中進んでいた。集落には50名近いゴブリン達が居たが、今一緒に行動しているゴブリンは40と少しである。では他のゴブリンは何処に行ったのかというと、彼らは隊を離れ周辺の村々にいる仲間たちに今回の事を知らせるために別行動をとっているのだ。周辺には幾つかの群れが複数存在していたようで、その集落ごとに別れて生活していた。その彼らに今回の人間の襲撃の出来事を伝え危険を知らせるためだ。また、ゴブリン以外の種族の村々にも同じ様に知らせようと動いている。無論すべての村々に伝えて回るということは不可能だが、それでも自分たちで出来ることをしているのだ。彼らのその他者への想いには本当に頭が下がる。


 自分もゴブリン達の旅に一緒についていき色々と手助けをしながら移動している。

 旅では移動こそ大変だが、他は特に苦労することなく順調に歩みを進めている。

 大凡一日20km~25km程度進んでいる。森という整備されていない道なき道のなかこれだけの人数でのこの移動速度はかなりのものだ。無論移動に伴う物資の運搬などはアイテムとして収納しているので、かなり身軽な移動とはなるのだが、それでも驚きだ。さすがは森の民である。



「ピ~ッピピ~ッピ♪」


『ギャ~ギャッギャ~♪』


『オ~クオックオ~♪』


 そんな移動の中、のどかな歌が森の中に響いている。

 その声はなんとも楽しげで、いや実際楽しいのだろう。

 移動をものともせず、まるでハイキングを楽しんでいるかのようだ。


 ことの始まりは些細なことだった。

 移動する中、なんとなく元の世界の歌を口ずさんでいたら、ピピィが食いついてきたのである。彼女はメロディを口ずさむのが好きなようで、こちらの歌に興味をもったのだ。元の世界にはありとあらゆる歌、メロディが無数に存在し、バラエティーも豊かである。転移後の世界には無いような音も多数存在しているだろう。そんな歌がピピィの琴線に触れたのだ。彼女は食い入る様に聞き、そして自身で歌い出したのだ。


 聞いて驚いたのだが、彼女の歌声はとても美しかった。綺麗な声を音にのせて歌う歌は、とても澄んでいて聞いていて心地よいものだった。また、楽しげに歌う様は、こちらも楽しくなってくるほどだ。

 ピピィの唄に感化されたのか、ゴブゴブやオクオクといった子供達が一緒になって歌を歌っている。こうして、森の中を移動するという苦労の耐えない旅が、なんとも楽しいハイキングへと変わっていったのだった。







◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇






 ゴブリン達と行動を共にすることになってはや数週間、途中予期せぬアクシデントに遭遇することもなく、また恐れていた人間からの襲撃もなく、旅は順調に進んでいた。


 移動は日が昇るとともに開始し、途中休憩を挟みつつ夕日が傾く前には移動を終え夜を越すための準備に取り掛かる。大人達で周辺を探索し、可能なら狩りを行う。そして集団で夜をあかし、日が昇るとともにまた移動を開始する。これらを来る日も繰り返す。


 移動する中、歌好きなピピィの為に新しい歌を教えて彼女と一緒に歌ったり、子供達と合唱したりと楽しく過ごすことも忘れない。移動にいらぬ苦労やストレスを掛けさせないために、なるべく楽しめるよう心がけた。子供たちにとってこの移動は大変負担だと思ったからだ。しかし、そんな子供たちはどこ吹く風、この度を大いに楽しんでいた。そしてその無限ともいえる体力はこちらよりもある意味上である。子供とは偉大である。





 そんな旅の中、ただ移動するだけではなく、自分はあることを個人的に行っていた。


 言葉の習得だ。


 この世界に転移してきて、言葉が通じず苦労することが多々あった。それらを解決するために言語の学習は急務と思ったからだ。ミミやピピィがいることで、彼女らの手を借り意思を伝達してもらうことは可能だが、いつまでも彼女達に頼ってばかりでは、いられない。


 旅の途中、どうすれば言語を学べるのかを考えた。

 そこで助力を仰いだのがドルイドゴブリンだ。


 彼はゴブリンの中でも特に知者であり、様々な事を経験として得ている。教えを請うのにまさに理想の相手だ。そしてピピィやミミの力を借りながら彼から言葉を学ぶことにしたのだ。


 彼から言語を習う傍ら、この世界の基本的な知識も教えてもらうことになったのだが、そこでこの世界についてのある事柄を知り、その事実に驚愕してしまった。その事実は元の世界では考えられる事であった。



 この世界には、基本的に言葉の壁というものが存在しないというのだ。



 無論言葉が無いという事ではない。

 ゴブリンにはゴブリンの、オークにはオークの言語は存在する。

 では言葉の壁がないとはどういう事か。

 なんと言語が異なっていても意思疎通が出来るというのである。


 最初彼の言っている事が理解出来なかった。

 それはそうだ。意味がわからない。


 元の世界では、国や地域で言語が異なるということは当たり前のことであった。同じ国でも違う言語を用いることも決して珍しいものではなかった。そして、言語が異なれば、意思疎通を行うのにも様々な苦労が伴った。他言語を習得するものや、通訳を介してのやりとりも多く行われていた。


 しかし、この世界ではそういった事は基本しなくても良いのだという。


 ゴブリンとオークでは、用いる言葉は違うが、両者ともに相手が何を言っているのかを理解することが出来るのだという。言語が異なっていても、何も弊害がないのだ。


 この事実を知って、まさかこれほどまで元の世界と違うのか、と。

 驚嘆である。

 

 そんな驚きを禁じ得ない事柄だが、しかし、ある事からなんとか受け止める事ができた。


 ミミやピピィという存在だ。


 彼女らと自分は意思疎通が出来ている。しかしこれはお互い同じ言葉を発している訳ではない。自分は日本語を話しているし、ミミは精霊の言葉を使っている。ピピィも同様だ。

 しかし違う言語を使っているがそこに意思疎通に対して大きな弊害はない。


 この現象と同じような出来事が世界で行われているのだ。そう考えると納得出来る。いや、納得せざるを得ないのだ。


 このような、不思議な現象ではあるが、ふと、あることが頭をよぎる。

 元いた世界でも、同じ様な話を聞いたことがあるのだ。



   バベルの塔


 

 バベルの塔の物語では、【人類が塔をつくり神に挑戦しようとしたので、神は塔を崩した】という解釈が一般に知られている。


 また別の話、偽典の「ヨベル書」によれば、【神はノアの息子たちに世界の各地を与え、そこに住むよう命じていた。しかし人々は、これら新技術を用いて天まで届く塔をつくり、シェムを高く上げ、人間が各地に散るのを免れようと考えた。神は降臨してこの塔を見「人間は言葉が同じなため、このようなことを始めた。人々の言語を乱し、通じない違う言葉を話させるようにしよう」と言った。このため、人間たちは混乱し、塔の建設をやめ、世界各地へ散らばっていった。*¹】 という言も存在する。


 もしかしたらこの世界では、バベルの塔のような物は存在せず、そのため言葉を変え混乱させる必要がなく、だからこそ互い意思疎通出来るのではないだろうか。


 もちろんこれは自分の勝手な想像でしかないし、なんの根拠もない。

 しかし、もしそうだとしたら…。

 とてもじゃないが、理解できる範囲を超えている。

 考えるだけ無駄なのかもしれない。

 


 不思議な現象ではあるが、例外も多数存在するという。



 その一つとして、ミミような精霊の存在が挙げられる。

 彼女らが扱う精霊語は多くの種族には理解することは出来ない。これは彼女が一般というカテゴリから外れた特異な存在だからではないかと考えられる。精霊とは普通の生物とは根本から異なる存在だからだろう。



 そして、他の例外についてもドルイドゴブリンに教えてもらうことが出来た。





 “ 作られた言語 ” 


 そういったものが存在するという。

 これは、種族として元から備わっている言葉ではなく、新たに作られた言葉というものがこの世界には存在しており、それらの言語は、その言語を習得した者たちでしか意思疎通がれきないという。

 たとえば、ドルイドゴブリンの扱う言葉の一つに、 “神へ捧げるための言葉” があるという。主に彼らドルイドが精霊などの存在と交信するために使用する言葉で、この言葉は他のゴブリンに言葉の意味は伝わらないという。

 同じ種族の中でもこうした言葉の使い分けをする場合があるのだという。確かにドルイドといった特殊な職ではそういった事も必要なのかもしれない。


 そしてそれらの “ 作られた言葉 ” は他にも多く存在する。


 その一つとして、公用語や共通語などの言語が上げられる。

 これは、種族間でのやり取りをスムーズに行うためのものである。


 種族が違くても意思が伝わるのでは。

 そう思われたのが、ここでも例外的な存在というものが関わってくる。


 ミミのような精霊は特殊な存在だが、実は、この世界にはそのような存在が多数見受けられるのだという。例としてあげると、この世界には妖精のような存在がいるという。代表的な例として、ケット・シーという妖精がいる。

  妖精とは精霊と普通の種族の中間に位置する存在と言われている。彼らは独自の言葉を持っているのだが、それは他の種族には伝わらないらしい。しかし妖精側も相手が何を言っているのかも判らないのだという。なので、その両者が意思疎通できるように使われる言葉が共通語や公用語だというのだ。普通の種族にとってこれらの言語は無くても生きていく上で必要ではない。しかし、両者の間で頻繁に意思伝達をするものや、智者などはそれらの言葉を学習し習得しているのだという。意外とこれらの言葉を使っている者も多いらしい。


 もちろん妖精はケット・シーだけという分けではない。他にも多種に渡り妖精は存在し、また妖精ではない別の特殊な種が存在しているという。


 この世界の住人からしたら、なんとも面倒でややこしい話なのかもしれないが、日本育ちの自分からすれば、これが普通なのではと感じてしまう。

 イギリス人と話したければ英語を、フランス人と話したければフランス語を、イタリア人と話したければイタリア語を、それぞれ学習するのが当たり前である。そして公の場でこれら複数の国の人達と話す場合は公用語である英語を使い話す。


 ◯◯人を妖精や別の存在に置き換えて考えれば分かりやすいだろう。

 彼ら特殊な存在と話したい時には共通語を使用すればよいのだと。



 しかしこれらの “ 作られた言葉 ” はこの様な公用語や共通語だけでは無いらしい。


 なんと人間族の中には、その人間族だけの言語である ”大陸語” が存在しているらしい。これは既にある公用語が、何故中心なのか。なぜ自分たちが合わせなければならないのか、という考えに至って新たに作られた言葉らしい。彼らからしたらその新しい言葉こそ世界での基準となる言葉であり、それこそがこの大陸で基準として使われるべきだ。というのである。そしてその ”大陸語” を一部の人間は驕った考えから ”上級語” ”高位種族語” などと称する者もいるという。


 なんともブッ飛んだ話だ。

 さすが人間様である。


 頭が痛くなる話ではあるが、元いた世界でも歴史を紐解けば同じ様な思想をした人間たちなどいくらでも存在していたし、21世紀になった今ですらそんな考えをもっている連中は存在した。この世界の人間だけを責めることは出来ないだろう。


 この世界の人間も業が深い話である。

 しかし、ドルイドゴブリンが勘違いしないでほしいと言ってきたのだ。


 たしかに人間族の中にこのような考えを持つ者もいるが、全ての人間族がそういう思想ではないと言うのだ。人間族の中には多種族と共存共栄を願う者も少なからず存在し、事実として、国外、つまり人間族の国以外で住んでいる人間も多く、彼らは普通に生活し、普通に言葉を交わす。妖精などと会話するときも、”大陸語” などという言葉を使わず、一般に広まっている公用語を使用しているのだ。


 実際ドルイドゴブリンは人間族と接触し言葉を交わしたこともあるが、普通にそれぞれの言葉で意思疎通を行ったという。


 すべての人間族をそのような、高慢な存在として見ないでほしいとドルイドゴブリンは言いってきたのだ。



 あらためて彼の懐の深さ、そして思慮深さに頭が下がる思いがした。

 彼自身もそうであるが、ゴブリンという種族に対して尊敬の念を禁じえない。



 この世界に転移して、彼らに出会えて本当に良かった。





 旅の間、ドルイドゴブリンにはこの世界にまつわる様々な話を聞かせてもらい、様々な知識を得ることが出来た。そして彼は種族としての言葉の他に共通語も習得していたので、共通語を教わることが出来た。


 まだまだ上手くしゃべることは出来ないが、それでも少しづつ会話が出来る様になってきた。文法などは習得に時間がかかるので、まずは優先して名詞とにかく沢山覚えるようにし、また動詞も優勢して覚えるようにした。名詞と動詞さえ解れば拙いながらも相手に意思を伝えることが出来るからだ。





 こうして様々なことを学びながらの旅路であったが、いくばくも無く終わりを告げようとしていた。









皆様おまたせ致しました。

今回から新たな章に突入致しました。

今回の話は、新たな旅の導入としてこの世界について少しだけ説明致しました。

自分で書いていて、何いってんだ?ってなりながら書いてました。

なんともややこしい…。

ですが世界の構築にどうしても必要だったので…。

面倒かと思いますが、お付き合い頂けますと幸いです。


今回面倒な話ばかりだったので、少し気休め程度ではありますが、

ここで少しばかりのキャラクター紹介を。



主人公 :篠崎瞬しのざきしゅん 

     いぬ!!

挿絵(By みてみん)


                                 以上!!





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引用元

*¹https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%99%E3%83%AB%E3%81%AE%E5%A1%94


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