体育倉庫でも何も起こらないときがあったりする
………。
背を向け合うオレと宇佐凪。
「……」
「………」
話すことがお互いにないため沈黙。
正直オレはこの間に理性を少しずつ取り戻そうとがんばっている。
胸……M字……。
いかんいかん!
忘れなくては忘れなくては…。
もう過去のことだ……。
過去のこと……。
「前原クン鼻血出てる…」
宇佐凪がオレの顔を横からのぞきこんで言う。
「うぇっ!?」
とオレは鼻を両手で押さえながら少し宇佐凪から後退した。
その行動を見て少し宇佐凪は首をかしげる。
「どしたの?」
「いっ…いあ!?なんでもないよ?」
少し気が動転してしまった。
過去の記憶が頭の中でフラッシュバックする。
印象的なことは頭から離れないとは言うけれど……。
今ほど離れてほしいと思うことはないよ…。
はぁ…。
勝手に驚いて勝手に落ち込むオレ。
ただの変な人にしか見えないよ周りからは。
宇佐凪も若干苦笑いしている。
「早くここから出たいな」
「う〜んそぅだねぇ〜。でもあと2日は誰も来ないんでしょ?」
「あぁ…。何でこの高校は祝日なにもなくなるんだ…!?」
「まぁそれにしては野球部とか結構強いけどね」
「何でなんだろうな、公園とかで練習してんのかな?」
「……多分……」
宇佐凪が少し自信なさそうに言った。
公園でやるくらいなら校長に頼んでここでやってほしいくらいだよ。
そうすれば助けくらいスグくるのに…。
あのハゲ校長が…いやあれはハゲではなくスキンヘッドか…。
あの校長はスキンヘッドにすごく違和感がわかない。
つまりスキンヘッドが似合うということだ。
くだらないことかもしれないがスキンヘッドが似合う人というのは顔が長い人がおおい。
校長こそまさにその典型であるかもしれない。
だってたしか50代なのに30代にしか見えないぞあの校長。
人間恐ろしいわ…。
「あの校長め…」
うっかり口に出てしまった。
宇佐凪が少しムッとなる。
………!
しまった!
ここの校長は宇佐凪の…叔父だ!!
「叔父さんがそんなに嫌なの?」
「い!いや?そういうワケじゃないけどただ今部活ここでやってたらなぁって思って…」
「ふ〜ん」
信じられてない…。
確かにただの戯言だったのかもしれない。
だがこれは致命傷!
「…悪かった。次は口を慎みます…」
顔を下げて謝るオレ。
「よろしい」
と宇佐凪は校長らしく言うと自分のマットに横になって睡眠をはじめた。
1秒、2秒、3びょ……
「〜〜〜」
「早っ!」
オレはあまりの早寝に軽くひいてしまう。
気づくと三日月は窓からは見えなくなっていた。
…それほど時間が経ったってことか…。
……………。
オレもぱたりと横になる。
あと2日…。
2日でここを抜け出せるんだよな?
何事もなく…。
いや既にもう色々起こっているんだけども…。
このまま何もなく終われるのか?
いや、別に期待しているワケじゃないんだけど…。
このままで終われるような雰囲気じゃぁないんだよね。
くだらないことを考えつつオレは眠たくもないのに目をギュっとつぶった。
ブルブル……
さっきより寒くなってる。
…がんばれ…がんばれオレ。
きっと眠れるさ!
………………寝れるはずなんだけども……。
眠れるはずなのになぜだぁぁぁ!
頭で考えつつ謎のジェスチャーを行う。
…………………………。
落ち着いたところでオレはようやく、眠りにつくことができた。