天然とは何をしても失敗したりする
ブルブル……
ぅぅ…。
寒い……。
窓から見えるのは三日月と1つだけある大きな雲。
何だか幻想的な、そんな風景。
何でオレがこんな、らしくないことを思ったかというと…。
正直なところ寒くてしょうがないワケで…。
とりあえずどんなことでもいいから頭使わないと凍えて死ぬよこれは…。
私服ならまだしもさすがに体操服となるとそれはもう…。
(ドキッ…)
あのときのドキッ、はなんだったんだ?
ぅぅ…分からない。
「ねぇ前原ク〜ン毛布とかないの〜?」
ビクッ!
突然話しかけられてつい驚いてしまった。
毛布があったらオレもほしいよ…。
「体育倉庫に毛布なんてむずいと思うが…?」
「……」
早き沈黙。
宇佐凪にしては珍しく黙りこんだ。
オレは今背を向けているため何をしているのか見ることができない。
だがオレに分かることとして宇佐凪はこんな簡単に引き下がるやつではない。
ペタペタペタペタ…
コンクリートの床を裸足で歩く音。
足音?宇佐凪だろうけど…。
ガシャン!
いったい何をしてらっしゃるのでしょうか宇佐凪様は……。
カン!ガシャガシャー…バン!
ダメだ!これ以上やったら体育倉庫がもたない!
もうやめてぇ!
さすがに我慢できなくなったので立ち上がる。
………!?
オレは目を疑った。
あぁ疑ったよ?これはどうやってもおかしいからね…。
「前原くぅ〜ん。たすけてぇ〜」
宇佐凪はものすごく…なんというか…あられもない体勢で動けずにいる。
バーベルに首元にあり背中は完全に床についていた。
しかも器具いれの上からすべってきた高飛び用の棒が2本膝の内側にはさまれておる。
漢として言わせてもらうとこの体勢は……。
M字開脚…。
「ぅぅ〜」
宇佐凪が顔を赤くしてオレを見た。
本能に勝った俺は視線を宇佐凪から天井へ変える。
「ど…どうやったらそんな体勢になるワケだ?」
「そんなの知らないよぉ〜。だって…だって…」
宇佐凪が半泣きでオレにこたえた。
助けてあげたいのはやまやまだが見ることがオレにはできない!
次見たらオレの理性は崩壊するぞ!?
一度見ただけでも崩壊するやつは崩壊するんだから…。
どう助ける?
いや助けない?
助けないのは友達としていかんか…。
「ぅぁぁどうすればいいんだぁぁぁ!!!」
オレは頭をかかえながらしゃがみこんだ。
……………。
「分かったから早く助けてよ!」
今は宇佐凪を助けなければいけないのか…。
「あのさ…その体勢だと…こっちも…やりづらいんだけど…」
「えっ?何?ヤる?」
あわてて宇佐凪を見る。
「えっ!?ち!違うって!」
「じゃぁ…早く助けてよ…。それともこんなあられもない格好させてたいの?」
宇佐凪がいやらしい笑みをうかべた。
「はぁ…。分かったよ…助けますよ、助ければよろしいんでしょう?」
と少し目をそらしながら1つ1つ器具をもとに戻していく。
あれ?そういえば何で手が自由なのに自分でやらなかったんだ?
バーベルはともかく高飛び用の棒くらい自分でどけられると思うんだけど…。
そこまで宇佐凪、体硬くないし…。
う〜ん何でだろぅ……。
…乙女心というのはわからないもんだな……。
と気にしながらオレは宇佐凪を拘束していた悪い器具たちをもどしていくのだった。